二人の彼女
放課後の人気のない中庭で由紀と祥子は向かい合い、範経は池の縁に腰をかけていた。
「抜け駆けするつもりじゃなかったのよ」と由紀。
「わかってる。だけどビンタはかわいそうだよ」と祥子。
「ついかっとなってしまったの。範経は川田先生のこと隠してたのよ」と由紀。
「そうだね。あたしも気がつかなかった」と祥子。「範経にはあたしたちをだます気がなかったようだけど。」
「それは分かってる。あんなことは初めてだったみたいだし」と由紀。「範経を問い詰めたけど、本当に突然のことだったみたいよ。キスされたのは。」
「そうね」と祥子。「直接、川田先生と話すしかないわね。」
範経は呆然と二人の会話を聞いていた。どうしてこんなことになってしまったのかと。
確かに範経は子供のころ、この二人の女の子の世話を焼いたことがある。それは魔が差したというか、何かの気まぐれだった。ちょっとした同情心だったに過ぎない。二人から好意を向けられたが、面倒くさいので極力知らない顔をしていた。だが、いつのまにか範経がどちらかを選ぶまで、二人とも彼女ということになっていた。
それでも、なんとなく心地がよかったのでずるずると時が過ぎてしまった。だが昨日と今朝の出来事は成り行きだからと言って済まされることではない。その上、行為の事実を二人の母親が知っている。もう戻れないところまで来てしまった。
「範経、いくわよ」と由紀。
「川田先生と話をしに行くのよ。聞いてたでしょ?」と祥子。
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