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「む⋯⋯何やら家の前が騒がしいな」


 森を歩き、魔法を披露された地点からミシェリアの家の付近まで戻って来たあたりで、自身の聴覚器官をピクリと動かした彼女が呟く。視線を向ければ、確かに家の門の前に複数の人影が確認出来た。


 対象確認:8体の人類種と、4つの未確認駆動体(二足歩行)

 特徴として、人類種は全員同じ意匠の黒いフード付きの外套を装備。同じ組織であるという繋がりを印象付ける為の物と推測。

 未確認駆動体について、現状確証は無いが材質から鉄機ではないか考えられる。ただしミシェリア宅で触れた物と比較すると圧倒的に大きく形状も異なり、全長2メートル程で武装らしき所持物も確認出来る為、戦闘が可能な固体と見られる。


「招かれざる客、と言ったところか⋯⋯」


 足を止めたミシェリアは深くため息を吐いた。


「違うとは思いますが、ミシェリアのお知り合いですか?」


「⋯⋯何者かは分かるが知り合いではない」


 恐らくあの外套を装備する組織に心当たりがあるのだと推測。


「では、何者ですか?」


「それは――」


「その質問には私が答えますよ、少年」


 ミシェリアが問いに答えようとした時、対象の中心に立つ人物から声が届いた。音域は男性特有の低音域。


「お二方とは始めましてですな。我々はアルビエロの国教である機神教の勧誘部隊。そして私はありがたくも技術司祭の地位を賜る、ゴード・ナルダイトと申す者。以後、お見知り置きを」


 フードを下ろし慇懃な態度で子供に見えるはずの僕にまで大仰な挨拶をするゴードと名乗る人類種の男性。


 年齢:推定35〜40歳

 身体的特徴:中肉中背。短く切り揃えられた頭髪の色は茶。瞳の色は群青。


「で、何の用だ、ナルダイトとやら。勧誘部隊と言ったな? 以前別の者らが来た時にその話は断ったはずだが」


 異常に礼儀正しいゴードとは対象的に、ミシェリアは不機嫌そうな態度を隠す気もない。


「ええ、ええ、存じておりますとも。しかしながら一度断られた程度で諦めるには、貴女の技術はあまりに惜しい。鉄機を研究するその能力は、アルビエロにこそ相応しい。ここで穏便に済ます為にもどうか考え直してはくれませんか?」


 そう言いながら腕に装着された装飾品をさするゴード。鉄機と同様の素材で作られているが、用途不明。なんらかのスイッチである可能性有り。


「ふん⋯⋯戦闘鉄機をそんなに並べておいて、それで説得のつもりか? 勧誘を一から教わり直してきたらどうだ」


「これは手厳しい。しかしながら我々は機神教。鉄機と共にあり、使用してこそですので。他意はございませんよ」


「ふざけた奴だな――帰れ。答えは変わらん。⋯⋯あぁ、その戦闘鉄機は置いて帰ってもいいぞ。動く 戦闘鉄機はこの国では貴重なんだ」


 状況としては脅迫を受けているに等しいにも関わらず、ミシェリアは不遜な態度を崩さない。


「フフフ、我が国へ来て頂ければ幾らでもお見せ出来るのですがねぇ」


「くどいぞ。私は鉄機の構造には興味があるが、崇めるつもりは全く無くてね。信仰心などカケラも無い。むしろ研究の結果危険だと判断したら躊躇なく破壊するつもりでいる」


 ゴードの態度に若干の硬化を確認。

 破壊という単語は流石に機神教として不敬に感じたと推測。


「そうですか⋯⋯残念です。そこの少年はどうです?」


 ⋯⋯AIに信仰心は、説明出来ても理解は出来ないのだが。


「いや見境が無いな!? 勧誘部隊の名に恥じなさすぎるだろう!」


 僕にまで勧誘を行うと思っていなかったのかミシェリアも思わず余裕の態度を崩してしまった。


「我が機神教はどんな時でも新規入信者を受け入れておりますので」


 どこまでも仕事に従事するタイプの人間、ということだろう。しかしながら僕も、情報の入力が不十分な国に行くつもりは無い。


「申し訳ありませんが、僕はミシェリアの庇護下にある現状が都合が良い為お断りさせていただきます」


 そうゴードに対し断りの言葉を発すると、彼の瞳孔が一瞬開く。驚き、または興味の兆候。僕の言語処理能力が外見から見て取れる想定と乖離があったものと推測。


「断り方が正直すぎるだろう⋯⋯」


 断り方に思う所があったのかミシェリアから呆れた声があがる。


「嘘を付けるほど僕はここの情勢を知らないので」


「それもそうか⋯⋯」


「随分と聡い子供ですねぇ。貴女が教育したのですか?」


 ミシェリアは無言で肩をすくめただけだった。否定も肯定もしないその態度が、ゴードに対する返答となった。


「まぁ良いでしょう。ミシェリア・セルノートの勧誘は失敗したことですし、当初の予定通り――」


 ゴードが言葉を区切ったことでミシェリアの警戒が1段階上がる。


「攫ってしまうとしましょう。なぁに我が国に来てしまえば、機神教の良さを嫌でも知ることができるのですから」

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