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2-2

 対象スキャン開始。形状解析中……完了

 全長:約12メートル

 体表:硬質化した鱗に覆われている。金属の様な光沢を持つ為、強度が非常に高い可能性がある。

 特殊部位:翼は翼手目に類似した構造だが、別途で胴体に腕を持つ。四本の角を有し、内2本は特に大きく後方に伸びている。

 飛行能力:翼による揚力だけでなく、体表を覆う微細な魔力により飛行を補助している兆候あり。

 脅威度:A+


「さて、倒せばしばらくこの辺りにはアレより弱い魔物が来なくなるんだ。ここが踏ん張りどころってやつだね」


 前方8メートル程の近い位置に着地したドラゴン。

 ミシェリアが裏技というのも納得できる。そもそもこれを倒せなければ成立しない手法なのだから。

 

「ミシェリア、援護します」


 今回は簡単に撃破とはいかないと判断した僕がそう申告すれば、ミシェリアは目を一瞬だけ丸くすると、フッと笑った。


「私一人で倒す予定だったけど、そうか。確かまだサポート用の魔法があるんだったね?」


「物理的弱所のマーキングを行い、ミシェリアに僕の視界を同期します」


 言いながら魔力を励起させ魔法の縁を意識する。


「意味は分かるが、どうなるのか想像つかなくてちょっとワクワクするじゃない」


 僕の左目のインターフェースに新たな情報が追加される。一瞬魔力が放出され、ドラゴンを含むこの付近全体を包み込む。すると視界内にいる指定した対象――今回はドラゴン――の物理的弱所に赤い光点が表示された。更に――


「今同期します」


「これは、シュニと同じ物か……」


 ミシェリアの左目周囲にも魔力で構成されたインターフェースが出現――同期完了を確認。


「あの赤い点が弱点ってことか? いや、赤い点が移動したな⋯⋯どういうことだ?」


 翼竜が此方を睨みながら一歩前へ進むことで光点は複雑な動きで移動。また時に2点、3点と赤い点が増える瞬間も存在することに対する質問。


「現在対象の構造は外見から得られる情報のみ知り得ている状態です。なので生物的弱点は不明の為、そこを攻撃すれば体勢を崩すという物理的弱所のみが表示されているはずです」


 彼女は光るインターフェースから与えられる情報をを興味深げに眺める。


「なるほど⋯⋯重心的な弱点ってことか。それでも凄まじい魔法だよ、これは。そこを付けば倒れ込むってことじゃない?」


「光点はその瞬間における対象の体勢によって常に移動する為、タイミングは難しいとは思いますが、お役に立ちますか?」


「十分過ぎるほどね!」


 ミシェリア3メートル程まで巨大化させた炎のメスを3本周囲に生成し、ドラゴンに向けてまず一本を射出した。弱所を狙っていないことから牽制であると思われる。

 改めて対象に意識を向ければ、ここまでの会話中攻撃を仕掛けてこない冷静さがあり、今までに襲いかかってきた魔物とは知能から異なることが伺える。

 ドラゴンは翼で難なく炎のメスを弾き、その肥大化した角に紫電を走らせながら大きく息を吸い込んだ。


 注意:対象の周囲の魔力が過剰に反応、また体表から判断できる程首の中心部が高温に変化していることを確認。


「おっと、それをさせるわけにはいかないんだなーこれが!」


 直後に対象が口を開いた瞬間、ミシェリアがドラゴンの口に向けて炎のメスを2本とも射出しつつ、僕を後ろから抱えて走り出す。

 燃え盛るメスのうち一本は顔の鱗に弾かれたが、残りの一本はドラゴンの角に命中。大きくのけぞった対象の首の温度は急低下、攻撃行動を中断したことを確認。


「危なかった。一応範囲外まで逃げたけど、止められなかったら電撃入りの火炎ブレスが飛んできてるとこだった」


 攻撃対象を電流で麻痺させ、さらに高熱のブレスで焼き尽くす。時間経過による継続ダメージすら狙う極めて凶悪な攻撃。――改めて危険性の高い魔物であると再認識。


「あれでブレスを中断したということはミシェリアが攻撃した角は弱点だったということですか?」


「ブレス中だけね。とまぁそんな訳で、生物的弱点は私が知っているから問題ない」


「頼もしい言葉です」


「とりあえずシュニはブレスの兆候があったらあいつの正面から避難して。あと尻尾もかなり長いから、そもそも離れてた方が良いかもしれん」


 対象の全長の内約半分は尻尾であることを考えれば妥当な判断。


「DEMIAの腕を出しますか?」


 攻撃が炎と電撃なら、宇宙線や恒星からの電磁波等が当たり前に対策してあるDEMIAの腕ならほぼダメージを受けないと思われる。


「いや、それは本当に困った時の切り札にしておく。それに、物理的弱所までご丁寧に表示してもらって勝てないなんて、この森に住む資格が無くなってしまう」


 そう言って笑うミシェリアは、再びドラゴンと向かい合う。

 攻撃を強制的に中断されたドラゴンは、その眼に怒りの感情を明確に宿し、地面を強く踏み鳴らし翼を大きく広げて威嚇行動をとる。たったそれだけでこちらのいる位置まで強風が届いた。


「さて、続きといこうか」


 ミシェリアは新たに5本の炎のメスを展開しながら走り出す。彼女の魔法の自由度の高さには感心させられる。――大きさ、数、威力。それぞれをかなり自在に操っていることはこれまでの戦闘から判明している。


「健闘を祈ります」


 僕はそう言って対象の尾が絶対に届かない位置に移動する。かと言って離れ過ぎるとブレスを回避出来なくなる可能性がある為、ギリギリの位置ではあるが。


「さぁこれはどうする?」


 言いながら2本のメスを射出。巨大な燃え盛るメスがドラゴンに襲いかかるが、一度鱗でも弾けたことで驚異は無いと判断したのか、角を狙う物だけ翼で弾こうとする。しかし――


「悪いね、さっきのは威力を下げすぎていた」


 先程とは異なり命中した瞬間爆発を起こし、ドラゴンは弾こうとした翼ごと大きくのけぞった。


「あぁ、これは良い」


 インターフェースを確認したミシェリアがそうこぼす。僕と同じ情報を見ているなら、次は――


「今この瞬間、その右足を攻撃されたらどうなる?」


 のけぞった瞬間、物理的弱所を示す赤い光点が対象の右足に集中。姿勢を立て直す前に更に2本のメスが首と、その右足へと飛来する。首は体勢を立て直させない為、右足へは勿論、体勢を崩させる為だ。

 ミシェリアの魔法による攻撃はその目論見通り首と右足に命中し、ドラゴンは大きく転倒した。しかし――


「おっと!?」


 ドラゴンは倒れ込みながら長い尻尾をミシェリアのいる方面へ向けて薙ぎ払った。先端にいくほど細く鋭くなっているその尻尾は、凄まじい速度でもって彼女の回避先すら潰すように襲いかかる。


「上しか避けようがないじゃないっ!」


 通常なら必中といえる攻撃をミシェリアは、予想外にも上へ飛んで回避した。回避手段としては合理的だが、本来あまりにもリスクが高い方法だ。ミシェリアの跳躍力が一般的な物であれば、だが。


「⋯⋯研究者というにはフィジカルが強すぎるのでは?」


 飛び上がったミシェリアは少なく見積っても3メートルは跳躍している。それによりこの星の人類種の身体能力がかなり高水準である可能性が出てきた。

 回避には成功したミシェリアだが、依然危機は去っていない。尻尾を振り回す遠心力を利用して対象は既に体勢を立て直しつつあるのだから。

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