プロローグ
短編ではないですがそんなに長い作品にはならない予定です。
何のために祈るのだろうか。黒い聖女は自問する。
ここは帝都アルビエロ。古代文明の遺跡から出土する鉄機と呼ばれるオートマタを使い、鉄機と共に過ごす国。その首都リグメニアにある機械神を祀る大聖堂にて多くの信者に囲まれながら、黒い聖女はただ祈る。
再度、聖女は思う――何の為に祈るのだろうか。
そもそも彼女が“聖女”と呼ばれるようになったのは、幼い頃大聖堂でただ祈っただけで、傍らに飾られていた壊れた鉄機が動き出したからだ。壊れた鉄機は治せない。出土した時に稼働出来る状態の物を利用しているだけで治し方などわからないのが現状で――それを動くように治した。聖女と祭り上げられるには十分で、それ以来特定の曜日に祈りを捧げる日々。祈りに応えるかのように鉄機が動くこともあれば、何も起きないことも珍しくはなかった。
聖女は、この国にどこか歪さを感じていた。治し方もわからない機械を、何の疑問も抱かずに使い続けることに。鉄機信仰と謳いながら攻撃性の高い鉄機ばかりを集める国の権力者に。そして何よりこのまま鉄機を使い続ければ、途方もない間違いを犯してしまうのではという確信めいた予感に。
考えてしまう。最近出土する鉄機が、大きく、禍々しく、そして危険な能力を備えた物が増えてきている。本当に頼って良い物なのだろうかと。それこそ国だけでなく、そのうち人類にとって取り返しがつかない何かを呼び覚ましてしまうような恐怖がついて離れなくなっている。
しかし聖女には力が無かった。出来ることは祈ることだけ。偶像崇拝を避ける為あえて曖昧な人型のみを模った像の下で、黒い聖女はだからこそ祈る。
この予感を、払拭してくれる何かを期待するように。
――そしてその祈りは届く。
過去の歴史すら変えながら聖女の祈りは叶うのだ。祈った聖女すら認識出来ないままに。
この作品はSFではありません。エセFです。ぽいだけです。よろしくお願いします。
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