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 あくる日、カンナは普段通り支度を整え、学校へと向かった。この日は道中ではキセキやコンとは出会わず、教室に到着してからの再会となった。


「おっは~カンナさん。今日はお先ね」

「おはようございますコンさん。今日はお早いですね」


 コンはカンナの姿を確認すると、手を振って挨拶を交わした。今日の彼女は、どこか上機嫌だった。


「えへへ、今日は金曜日だからね。今日頑張れば明日は天国だと思ったら、張り切っちゃった」

「単純だな。まぁその気持ちはわかるが」


 皮肉をこめて口を挟んだキセキだったが、コンは特に意に介した様子はなかった。それも上機嫌であるがゆえだろう。


「カンナさん、明日何か予定ある?」

「いえ、特には」

「そうなんだ。あたしもない」

「ないのかよ」


 あたかも、自分は予定があるから楽しみというかのような口ぶりだったため、キセキは即座に突っ込んだ。


「ただ学校がないだけでもいいもんでしょ。予定がないから、今日一日考えるんだ。何しよっかな〜」

「おいおい、ちゃんと授業は受けろよな。またノート貸すのは嫌なんだから」


 キセキは苦い顔をしたが、コンはほとんど聞いていなかった。


 一限目は移動教室だった。カンナたちは廊下を歩きながら会話を交わしたが、周囲には注意を払っていた。


「ケンイチ君は? 明日何か予定ある?」


 コンは移動の際に一緒になったケンイチにも尋ねた。


「特にないかな。強いていえば、家でのんびりしていたいけど」


 インドア派らしいケンイチの答えだった。コンは少し残念そうな表情を浮かべていた。


「そっか。あたしも無理は言わないし」

「小早川さんは、休みの予定はあるの?」

「いやー、それが決まってないんだよね」

「そ、そうなんだ」


 ケンイチもまた、コンが予定もなしに休日を楽しみにしていたことに戸惑ったようだった。


「驚いたろ? コンの計画性の無さは昔からなんだ」

「悪い? あたしは今を一生懸命に生きてんのよ」

「屁理屈」

「なんですってー!?」


 いつものやり取りを繰り広げるキセキとコン。その様子をケンイチは苦笑して遠巻きに眺めていた。


 パシャッ。


 その時、カンナの耳に聞き慣れない音が飛び込む。辺りをキョロキョロと探るカンナだが、音の出所は見当たらなかった。


「どうかした? 神崎さん」


 ケンイチは優しく声をかける。彼は謎の音に気づかなかったらしい。


「いえ、何か音がしたような気がしまして。気づきませんでしたか?」

「うーん、僕には何も。気のせいじゃないかな?」

「そうですか……?」


 その他に特に異変は感じられなかったため、カンナだけは違和感を覚えつつも授業へと向かった。


 それから午後になり、あっという間に放課後。カンナたちが帰宅しようと廊下を歩くと、彼女の耳にまたあの音が響き、今度は謎の光まで確認できたのだ。


「キセキさん。ちょっとお聞きしてよろしいですか?」

「どうした急に?」

「今日はいいお天気ですけど、雷って鳴るものなんでしょうか?」


 カンナは真剣な表情で尋ねる。キセキは一瞬不思議そうな顔を浮かべたが、少し考えた後に答えた。


「まあ、『青天の霹靂』って言葉もあるけどな。よく晴れた空に、雷が鳴るっていうほど驚くって意味で」

「なるほど、私が聞いたのはその、セイテンノヘキレキというものなんですか。世の中には珍しいこともあるのですね」


 カンナは納得したように頷いたが、キセキはすぐに付け加えた。


「あの、故事成語だし諺みたいなもんだから、実際にあることはそうそうないと思うぞ?」

「違うのですか? でも先ほど、光が見えましたよ。あちらに……」


 カンナが光の見えた方向を指さしたその時、廊下の曲がり角から覗いた顔とカンナたちの目が合った。その顔の前にはカメラが構えられ、あのパシャッという音と共に、フラッシュが焚かれてキセキたちは思わず顔を腕で隠した。


「あっ……」


 カメラを持った人物はサッと顔を引っ込め、曲がり角の奥へと姿を消した。


「い、今のって、カメラ……よね?」


 突然の出来事に混乱がおさまらない様子のコンは、キセキたちひとりひとりに視線を向けながら言った。


「そうだな。カメラだ。……撮られたのか、俺たち?」

「多分そうだろうね。慌てて逃げたみたいだし、もしかして、盗撮……?」


 ケンイチの言葉を聞いたキセキとコンは、間を置いた後駆け出した。ケンイチと、状況がよくわかっていないカンナもその後ろに続く。


「あの、なぜ走っているのですか?」


 カンナはキセキの背後から尋ねる。


「俺たち、きっと盗撮されたんだよ。隠れて写真撮られたってわけ」

「それは、問題なのですか?」


 カンナは未だに、事の重大さを理解できていなかった。


「大問題。何か法に触れるわよ。その、なんとか権に」

「肖像権、だと思う。勝手に人の顔を撮って公開しちゃいけないっていう」

「そうそうそれそれ。どこの誰だか知らないけど、絶対とっちめてやるんだから……」

「だけど撒かれないか? あそこからけっこう距離あるし、見失う可能性もあるぞ?」


 カメラを持った人物がいた曲がり角を曲がり、更に続く廊下を進むと、廊下の中ほどで一人の女子生徒が四つん這いで息を切らしていた。首には、カメラが下がっている。想定よりも早く、犯人は見つかった。


「あ、いた」

「マジか。こんなに早く捕まるとは」


 女子生徒は逃げも隠れもしなかったが、カメラを胸に抱いて渡すものかという姿勢を取った。


「ねぇ、ちょっとあなた。あたしたちの写真さ……」

「ご、ご勘弁を……! ほんの出来心で……!」


 女子生徒はくるりとコンたちに向き直り、土下座をした。

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