7
よし。
あの太陽がある方角へと向かおう。
俺は早速歩き出した。
先ほどのこともあり、闇雲に動くことは躊躇われたが、それでも俺は動き出した。
脳裡には女神さまからの言葉があった。
さあ旅立ちの刻です。
そう。
つまり、今、この瞬間こそが、動くタイミングなのだ。
こういう時は躊躇ってはいけない。
とにかく足を動かすべきだ。
俺は勇気を出して出発した。
荒れ果てた草原を進む。
幸いにもモンスターには出会わなかったが、歩けども歩けども似たような景色が続いた。
しかし、沼を抜け、小高い丘を越えると、森のようなものが見えた。
その入り口まで近づいてみると、森にはどうやら人工的な道が設えてあるようだった。
獣道に毛が生えた程度の粗末な道だったが、明らかに舗装がしてあるのが伺えた。
人の気配を感じて、俺は一気にテンションが上がった。
森の中は薄暗く不気味だったが、俺は構わずに進んだ。
そしてしばらく歩いたところで道が二手に別れた。
いや、正確に言うと、大きな道から脇へと伸びる細い路が現れたのだ。
そしてその先に目をやると、何やら看板のようなものが見えた。
来た。
完全に人工物だ。
俺は喜び勇んで脇道へと入って行った。
看板には文字が書かれていたが、ところどころペンキが剥がれていてよく読めなかった。
そしてそこからさらに先へと進むと――
なんと、立派な屋敷が現れた。
俺は嬉しくて飛び跳ねた。
助かった。
これでなんとかなる。
俺は駆け足で門扉へと向かった。
▼
玄関までやってくると、俺は改めて屋敷を仰ぎ見た。
洋館はこんな人里離れたところにあるのは似つかわしくないほど立派だった。
思わず尻込みしてしまいそうになるが、そんなことは言っていられない。
「すいませーん! 誰かいますかー!」
躊躇なく大きな声で言った。
しばらく待ってみたが返事はなかった。
「すいませーん! 誰かいますかー! すいませーん!」
俺は諦めずに繰り返し声をかけた。
その時、ふと気付いた。
室内に灯が見えない。
これだけ暗いのに、部屋の中が真っ暗なのだ。
まずい。
空き家なのか。
しかし――と俺は立派な門扉や前庭に目をやった。
明らかに手入れが行き届いている。
庭の端にはささやかな畑のようなものさえ見受けられる。
となると、運悪く留守中なのか。
絶望的な気分になった、その時。
ギィイ、という大袈裟な軋み音を立てながら、玄関が開いた。
「どなた様でしょうか?」
現れた女の人を見て、俺は目を丸くした。
彼女は――今まで見たこともないほどの美女だったのだ。
透き通るような白磁のような肌。
整った眉に美しいシンメトリーの瞳。
秀でた額。
高い鼻梁に綺麗な唇。
ゾッとするほど美しい。
身なりから察するに使用人などではない。
豪華なドレスに身を纏った身分のありそうな御令嬢だ。
驚くと同時に疑心が湧いた。
こんな人気のない森の奥深くにある豪邸に、謎の令嬢がお出迎え。
妖精に化けていた魔物のこともあり、むくむくと猜疑心が膨れあがってきた。
そして、その彼女に向けて俺は――
A すいません、一晩泊めてくれませんか、と言った。
B あの、食べ物を分けてくれませんか、と言った。
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