取引
2018年 リトルローマ
イタリアンマフィアの組織「プルアーノファミリー」の本部は豪勢だ。リトルローマの半分を支配する巨大マフィア組織「マッサーヌファミリー」の下部組織の中で最も大きい組織であるから当然かもしれない。
ボスのプルアーノが住む豪邸が組織の本部ともなっている。二つの巨大プール、広い庭園に大きな噴水。八階建ての中世ヨーロッパの城を模した建物。寝室や食堂、書斎、浴場の他に会議室や娯楽室、小さな映画館までついている。
そして重厚な門。電気柵で構成され、常に電流が流れている。また上に乗っているガーゴイル彫刻の目にか監視カメラがついている。
この門が今開いた。
「アンダーボスがお帰りです!」開く門とそこから入ってくる銀色のリムジンを執務室の窓から眺めながら相談役のガルディが報告する。「そうか!遂に帰って来たか!」自分の椅子にふんぞり返っていたボスのミッキー・プルアーノは嬉しそうに叫んだ。「派手な歓迎会をできんのが残念だな。まあいい。執務室に通すよう執事に伝えてくれ。」「はい、承知しました。」ガルディは言い、内線電話を取る。
「よお!元気だったか、マッキー!」プルアーノファミリーのアンダーボスで脱獄犯コルレッリは玄関先に迎えに出てきた弟に挨拶する。「お帰り、兄貴!」と少し間抜けそうな筋肉質の禿げた大男が出迎える。「玄関先でお前に会えるとはな!」コルレッリは叫ぶ。するとなぜか気まずそうなマッキー。「ああ・・・実は今はソルジャー級の下級構成員なんだよ。俺が荷物持ちさ。」「ああ・・・そうか・・・ムショからそのまま来たから荷物はねえよ。」少し戸惑っている様子のコルレッリ。
「おかえりなさいませ、コルレッリ様。旦那様がお待ちですのでご案内いたします。」執事が現れてコルレッリを大きな螺旋階段のほうに導く。
プルアーノは入って来たコルレッリを出迎える。「やあ!全く・・・大胆だな君は!」「ハハハハ、なにね、アイルランド野郎との取引には正直応じたくなかったんですがね、ファミリーに復帰できるとは予想外でしたよ!」「だろう?実はな・・・私の優秀な相談役だったアントニオが黒人野郎に襲われて撃たれたんだよ。多分ダスケファミリーの刺客だろうな。」だが意外にもコルレッリは真顔だ。「で、彼の様子は・・・」「亡くなったよ・・・」コルレッリは一瞬だけ笑顔をのぞかせるが、その後驚いた顔になる「そんな・・・ダスケにはどう落とし前をつけ・・・」「奴は必要悪だ。奴がいなくなると私たちの世界の秩序は破綻する。だから襲った奴らをやった。郊外にあるとあるアパートの奴らさ。全員殺して首を切っておいた。ダスケへの警告にもなる筈だ。」「で、今はこのガキ・・・彼の優秀な息子さんが相談役を?」コルレッリは軽蔑の色を顔に浮かべながらガルディを指さす。「ああ。若いが流石アントニオの息子とだけあって組織をまとめるスキルがある。」「そうですね・・・ところでボス?」「ん?何だね?」「アントニオは組織をまとめ上げるために私をサツに突き出す提案をボスにしたってことですな?」「ん?ああ・・・君を犠牲にしたことはすまなかったよ。だけどサツの野郎ども焦りきってたんだ。あらゆる手段を使ってマフィアを一人でも多くムショにぶち込もうとしていた。我々の側には犠牲が必要だったんだよ。君には理解してもらえたと思っていたがね?」と少し不機嫌そうにプルアーノ。「まあ分かりますよ。ボスとしては最善の決断をなさったんでしょう。だけどそれは・・・アントニオの策略ですぜ。」そう言うと何とコルレッリは拳銃を取り出してプルアーノに向けた。「おい!何をするんだ!」ガルディが叫んでコルレッリに拳銃を突き付ける。「おいおい、あんたが俺を撃てば俺はあんたのボスを撃つぜ。」とコルレッリ。だがガルディは手を震わせたまま拳銃を向け続ける。「おい、下ろせ!」とのプルアーノの指示でようやく拳銃を下ろした。
「何をするつもりだ君は?」と冷や汗をかきながらもかろうじて威厳を保つプルアーノ。「はっきり言うぜ。先代の相談役アントニオは俺を嫌ってた。俺がアンダーボスの座にいることが気に入らなかった。それで奴はあんたとリトルローマ警察署長・リトルローマ検事との間の取引を仲介した。マフィアのアンダーボスを逮捕すればサツは手柄をたてたことになり、アントニオはライバルが一人消えたことになる。そしてあんたにとっては・・・自分の地位を脅かす存在がいなくなる。」「で、どうする?」というプルアーノの問いに対してにやり、と笑ったコルレッリは何とプルアーノの頭を銃で吹き飛ばした。「くそ!」ガウディが叫んで扉の方に走るが、コルレッリは「やっぱ親父の七光にすぎねえなお前は!アントニオの息子だから次期相談役になったんだろ?」と言って彼も撃ち殺した。
「どうかされましたか?」と言って室内にかけこんできた執事と護衛の構成員は悲鳴を上げる。「まあ少し黙れや。今日からコルレッリファミリーだぞ。代理ボス兼相談役はマッキーだ。アンダーボスは・・・ロニー、お前だ。」と言ってコルレッリは何と執事を指さす。「え?」「さんざんプルアーノ爺さんにこき使われてきたろ?でも今日からお前は・・・こき使う側だぞ。ああ、それからな・・・実質的なボスは俺だ。俺がコルレッリファミリーを仕切るぜ。」
二週間後
バーナードが率いるコルレッリ殺害部隊はバスを降りた。
「ジョルジョーニの従兄弟はあそこで待ってる。」と言い、バーナードはバス停の近くの路地に足を踏み入れた。
「暗いところですね。」と部下のエレーナ。「ああ、じめじめしてやがる。リトルローマはマフィアの街だからな。ここもいかがわしい連中の縄張りなんだろうぜ。」と答えたのはリーストン。
「ここだ。」バーナードは路地の途中にある錆びた鉄製のドアの前で立ち止まる。ドアの上には薄汚れたネオンサインで「薔薇屋敷」と書かれている。そのドアを三回ノックするバーナード。ドアの上の覗き窓からもじゃもじゃとした眉と大きな目が覗き、野太い声がする。「誰だ!?この時間帯はまだ予約客がいない筈だぞ!」「ああ。あんたの店の客じゃない。だけどこの店でリッチョさんが待ってると聞いた。」「そこで待ってろよ!今確認する。」
「何の店です?」とチョク。バーナードは「ジョルジョーニからは何も聞いていないが・・・このピンク色のネオンサインを見るに恐らく風俗店だな。」と答えるバーナード。
しばらくしてどしどしと足音が聞こえると扉が開く。筋骨隆々とした大男が現れた。無精ひげを伸ばしたイタリア人で先ほど覗き窓から見えたもじゃもじゃの眉と大きな目がついている。大男は一言「二階だ。」とだけ言うと薄暗い廊下の奥を指さした。そこに急な木製の階段がある。
廊下の両側には同じような木製の扉がいくつもならんでおり、扉の表面に打ち付けられた真鍮板に「チェリー」、「ハンナ」、「バネッサ」などと書かれている。どうやらこの風俗店の従業員の個室であるようだ。いくつかの部屋の中からは喘ぎ声が聞こえた。四人は顔を見合わせて歩き出した。
一階とは異なり日が当たり、清潔感のある執務室。コンクリート製の壁と木製の扉に囲まれた部屋。天井にはシャンデリア。その真下に重厚な机と肘掛椅子。後ろの壁際には本棚があり、本が沢山。そして手前のソファに整った口ひげと固めてなでつけたあざやかな白髪を持つ初老の男。
彼は四人が室内に入ってくるとゆっくり立ち上がり、「待っていたぞ。座ってくれ。」と言ってソファを示すと肘掛椅子の腰を下ろす。
「あんたがジョルジョーニの従兄弟のマフィア関係者か?」とバーナード。男は作り笑いを浮かべ、ゆっくりとした口調で言う。「そうとも。私は君達の力になれると思うよ。」「そうか・・・で、この街にコルレッリがいるのは確かか?」「ああ。プルアーノファミリーのボスと相談役の死体が廃墟になった教会の敷地内で見つかった。通りから見える場所に堂々と捨てられてたよ。二人とも頭に銃弾を撃ち込まれているが殺された後全裸にされ、腹に傷が刻まれている。アルファベットのTだ。さらにファントン煙草社の煙草が三ケース分口に突っ込まれていたんだ。」「ほう・・・それは何を意味する?」「まず一般的な解釈だ。奴らはタルコーゼファミリーの構成員によって殺された。腹に刻まれた頭文字T。それからファウントン煙草社は20年前からタルコーゼファミリーが経営するタバコ製造・販売店だ。」「なるほどな。じゃあ一般的でない解釈は?」「これは私の解釈になるがボスのプルアーノとアンダーボスのガウディはどちらもコルレッリに殺された。」「なんだと!?」「私はマッサーヌファミリーの一員だからわかる。下部組織プルアーノファミリー内部にある権力争いの構造をな。ガウディの父アントニオはコルレッリと同期だ。そして二人はライバルだった。二人とも出世欲が強く互いに空いたが自分よりも上の立場になるのを阻止しようと躍起だった。結論から言うと二人の権力争いは一応引き分けの形となった。コルレッリは組織のアンダーボス、プルアーノは組織の相談役となって両側からボスのプルアーノを支える形になったのさ。」「血なまぐさい抗争が起こらなくてなによりだな。」「ああ。だけどアントニオはまだコルレッリを蹴落とすことを諦めていなかったんだ。奴はボスとサツの仲介をし、ある取引を成立させた。」「取引?」「ああ。当時のサツは警察庁から圧力をかけられていた。犯罪組織撲滅キャンペーンを行っていた警察庁は全国の警察に犯罪組織の大物を挙げるように要求していたのさ。アントニオはそこに目を付けたんだ。」「というと?」「この街のはずれにある貧民街で虐殺が起こった。イタリアンマフィアのシマであるこの街でヤクを売っていたアイルランド野郎どもがいたんだ。そいつらが全員爆殺された。無関係な一般市民7人が巻き込まれて死んだ。二人は子供、一人は赤ん坊が含まれていたらしい。この事件で黒幕のマフィア幹部を挙げればサツの評価は高くなる。」「つまりアントニオとプルアーノはこの事件の黒幕としてコルレッリを差し出したんだな?」「その通りさ!察しが良くて助かるよ。アントニオはライバルを無事にムショ送りに出来て満足だ。だが不幸にも彼はプルアーノの後を継ぐ前に黒人の殺し屋数名に襲われて死んでしまった。当時ダスケファミリーとの公共事業の参入による利権をめぐって対立が先鋭化していたからな。コルレッリはムショの中で報復として黒人囚人を一人殺したがそいつは黒人囚人集団の中では嫌われ者だったみたいだな。特にダスケファミリー構成員の囚人の中ではな。詳しいことは分らん。とにかく、コルレッリが内心ダスケに感謝しているのは確かだろうぜ。」「そして今回の脱獄か・・・」「そうだ。ムショ内の殺人やそのほか警察庁の捜査による余罪が発覚し、全て有罪となったコルレッリはハラスに収容された。だが奴は脱獄し・・・新しい相談役兼暫定的なアンダーボスがアントニオの息子の無能なボンボンガウディであること、そして弟のマッキーが下っ端になっていることを知ったんだろう。」「で、奴は切れて最高幹部二名を殺したと。」「その通りだ。さてと、ここからは確かな情報源に基づく情報だ。誰がとはいえんがね。コルレッリは今プルアーノの屋敷内に潜伏している。そして表向きの代理ボスがマッキーだ。あの脳筋にファミリーを統治できるとは思えんから多分兄が裏で糸を引いているんだろう。奴はアイルランド人ギャング、そしてその裏にいるアイルランド系の犯罪シンジケートとの和解を勧めるつもりのようだ。」「シンジケートを率いるのは誰です?」とエレーナ。「イーライ・ジョンソンだ。あの凶悪マフィアのコーネリーの弟子だ。新世代のアイルランド系組織の登場で組織が弱体化している奴の方もイタリア系との争いは終わりにしたいんだろうな。」
四人は顔を見合わせた。コルレッリは別の脱獄犯コーネリーと取引しているのか?
二日後
コルレッリはボスの執務室にふんぞりかえり、何者かと電話していた。「ああ。奴らは被検体を求めてるんだな。こっちでも手配してみるよ。イーライを通じて連絡する。その代わりといっちゃなんだがね・・・あんたらがカルテルから貰ったブツを半分ばかり寄越してもらえないかね?何だって・・・ハハハ、我々高潔なイタリア人はヤクには手を出さんと思ってくれるのはありがたいがね・・・そりゃあ古臭いよ。確かに我々は高潔だ。だけど高潔であるためには金が必要だ。そして・・・そうそう、その通りだ。ヤクは金になる。あん?マッサーヌファミリー?心配するな。奴らにはバレないそうにやるさ.
マフィアに所属していないチンピラどもを集めて俺直属の組織を作った。だから安心しろ。じゃあな。」
直後アンダーボスとなった執事が入室する。「よお、どうした?」「マッサーヌ様の使者がマッキー様にボス就任祝いの挨拶に来ました。」「おいおいまじかよ・・・畜生!この盗聴器と耳に隠す小型通信機をマッキーに渡して応接室に行かせろ。盗聴器の内容を元に俺が通信機から指示を出す。奴にはそう伝えろ。あのバカは幹部連中との話し方もしらねえにちがいねえからな。」
応接室には何とコルレッリの情報を渡した幹部、そして黒スーツに身を固めたバーナード、リーストンがいる。二人の元軍人は幹部を守るように彼の後ろに直立している。マフィアの警備員に変装したのだ。
作戦はエレーナが考えた。まず白人であるバーナード、リーストンはマフィア警備員のふりをして幹部と共にコルレッリファミリー本部に潜入する。
幹部は自分の所有するビルの一階にある風俗店からお気に入りの女を連れてきたと言って応対するコルレッリファミリー幹部のエレーナを引き合わせる。エレーナは彼らを酔わせた後に気絶させる。
その間チョクは監視カメラハッキングツールを使って屋敷内を見張り、幹部と共に去ったとみせかけたバーナード、リーストン、そしてエレーナがコルレッリを葬るという作戦だ。
しばらくするとある人物が入室する。間抜け面をした大男だ。威厳のかけらもない。
「わざわざすみませんな。だがマッサーヌ様から早速プルアーノファミリーへの指示を預かっていますので・・・」と言って幹部はボスから実際に命じられた命令をそのまま伝える。「ジェファソンシティの新設予定のショッピングモールの工事敷地内にデッドボーイズとブラックスネイク構成員のチンピラどもが入って作業員を虐殺しました。ショッピングモールについてはうちが出資している建設会社が主導して工事している。報復としてリトルローマ郊外にある黒人ギャング地帯を爆破してくれ、とのことです。」「なるほど。お安い御用だ。爆薬なら買収した軍関係者から横流しされる高品質のものがある。やりましょう。」と棒読み口調で答えるマッキー。(兄に言わされてやがるな。こいつには盗聴器と通信機が仕込まれてる。厄介だな。)とバーナードは思った。
「まあ要件はこれだけですが・・・少し楽しみませんか?」「はい?」と間抜け顔でマッキー。「あなたもご存じの通り私は不動産を担当していましてね、ある建物を所有して二階部分を自分の部屋にしているんですが・・・一階に風俗店があるんです。むろん私が部屋を貸しています。まあ店主は後ろ暗いやり方をしている奴ですからね。私の言いなりで、実質的に私が風俗店を経営しているようなものですよ。」「で、今からそこへ?」と少し身を乗り出すマッキー。単純な男だ。「実はですね・・・車にいい女を待たせてるんです。店主に用意させましたよ。」「何ですと!」
「おいマッキー、やめておけ!奴は信用できねえ。」とコルレッリは言うが何とマッキーは大声で返したのだ。「なあに大丈夫さ兄貴!ボスには休養が必要だ。楽しませてくれよな!あ、まずい・・・」「この大バカ者!」コルレッリは机を蹴り倒して立ち上がると部屋の外の護衛を中に引きずり込んだ。「おいお前!この服貸せ!」「へ?」「いいから脱げ!お前にはこの高級スーツをやる!」
「くそ!計画変更だ!」バーナードはピストルを取り出すマッキーに飛び掛かり、腕をへし折ると頭を床に叩きつけて気絶させる。その間にリーストンが幹部を護衛しながら先に進む。
「大変!」通信機で様子を聞いていたエレーナは車から飛び出す。その手にはライフルが握られていた。
「こちらチョク!監視カメラを調べていますが目立った動きはありません。コルレッリの居場所はおそらく二階最西端です!使用人に扮したマフィア護衛が多くいるように見えます!おっと・・・ああ、少し警戒した方がいいかもしれません。護衛が執務室に入り、今出てきました!なんらかの対策を講じたかもしれません。周囲の動きに警戒して下さい。」
「了解!」そう言うと何事もなかったかのようにバーナードは歩き出す。マフィア護衛の服を着ているのでバレない。だが応接室内で起こったことが屋敷中に知れ渡るのは時間の問題だ。
「ここね・・・」エレーナはゆっくりとかがんで窓の中を見る。「おっと・・・」丁度窓の前を護衛を引き連れた執事らしき人物が通るところだ。「コルレッリ様は裏に行った。こっそりと回って護衛して来い。」「了解ですアンダーボス!」
「あの爺さんがアンダーボス!?なるほどね・・・全く、商売女はこんな動きにくいドレスを着るものなのかしらね?」ぼやきながらライフルを握り直したエレーナは裏口に急ぎながら連絡する。
「何!?嘘だろ・・・じゃあチョクが言ってた護衛ってのは・・・」「ええ、恐らくコルレッリでしょう。私が今向かっています。」「気を付けろ!今から行く!」そう言ったバーナードは引き返そうとするが、銃弾が飛んでくる。「マッサーヌの刺客だな!」執務室前の護衛達だ。「くそ!」かがみながら階段を降りるバーナード。
「全く・・・プルアーノファミリー、いやコルレッリファミリーと戦うことになるとはな。君達はとんだトラブルメーカーだ!」と憤る幹部をなだめながら玄関を通り過ぎようとしたリーストン。しかしその前に玄関前の護衛2名が立ちふさがる。「お前たちをマッサーヌのところに生きて帰すことは出来ねえ。」「ったく・・・」そうつぶやくとリーストンは拳を固めて丸腰で飛び込み、一人の腹にパンチを食らわせて腰のライフルを奪い、もう一人の頭にぶつけて気絶させた。「行ってください!」「ああ、帰らせてもらうよ!全く・・・ジョルジョーニの野郎め・・・」怒りながら車に乗った幹部は運転手を怒鳴りつける。「マッサーヌ様のところへ!飛ばせ!」
リーストンは起き上がりかけた護衛にキックを食らわせると裏口に急いだ。
「裏口に車が停まりました!コルレッリが逃げるつもりです!急いでください!」と言いながらチョクも裏口に走る。
「車を見つけたわ。」建物の角から小声で報告したエレーナは影から飛び出し、車のタイヤを撃つ。車の中から護衛が飛び出てくる。エレーナはライフルを構えた。
「あいつだ!リーストン、追ってくれ!」バーナードが叫びながら後ろのシャンデリアを撃つ。バーナードを追いかけていた護衛達がシャンデリアの下敷きになる。
リーストンが逃げるコルレッリに向けてピストルを撃つが、次の瞬間横の部屋から飛び出てきた護衛達が覆いかぶさる。「くそ!」護衛たちに押させつけられるリーストン。
「くそ!」バーナードは拳を固めると護衛の中に突っ込み、リーストンを解放する。
「ありがとうございます。そして・・・君達もありがとう。」そう言うとリーストンは護衛達の真ん中に手りゅう弾を投げ入れてバーナードと共に裏口に走る。
エレーナは血まみれで横たわる護衛達の返り血で汚れたドレスを眺めやり、溜息をつくとライフルを構えた。
「よし、てめえらともおさらば・・・」そう言いながら外に飛び出したコルレッリはすぐにエレーナの突き出すライフルに直面することになる。「あんたの護衛達は死んだわ。」後ろからはバーナードとリーストン。そしてエレーナの後ろからチョクも入ってくる。「後ろの護衛連中は爆散した。」「魔、待ってくれ・・・マッサーヌ様には新しいビジネスを提案したいんだ・・・脱獄を単独で行ったのは悪かったが・・・仕方なかった!アイルランド野郎どもとの取引に応じたんだ!」「コーネリーか?」「そうだ・・・奴は調達係だ。で、俺もそれを手伝うことになった・・・」「調達?何の?」エレーナがそう聞いた時、いきなりコルレッリの頭が吹き飛ぶ。
「じゃじゃーん!」草むらから何と死体処理業者フーバーが飛び出てくる!そして彼はけらけら笑いながらコルレッリの頭を吹き飛ばしたピストルを拾い、自分の口に突っ込むと引き金を引いた。