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傭兵隊

2018年 アメリカ共和国 ハラス

 ハラスは山だらけで民家さえ存在しない場所であり、また車もほとんど通らない。

 というのもこの地域を走る道路は一本のみで、それはこの地域の唯一の建物であるハラス更生収容所に通じているからだ。道路を走る車は囚人移送車や物品配達、刑務官送迎バスのみだ。

 しかし今日は刑務官送迎バスに先導される形で迷彩柄の装甲車が入ってくる。装甲車には大きな文字で「バーナードシールドコープ」と書かれている。アメリカ共和国の有名な民間軍事会社だ。


 ライリー刑務所長は独房に入る手前で曲がり、台所に向かった。バーナードは不思議そうに後をついていく。まさか集団脱獄事件の対応を食堂で話し合うというのだろうか。

 台所に到着したライリーは囚人のための食事をつくり個室に繋がるパイプに投げ込む職員を尻目に台所の奥にある業務用冷蔵庫の一つに近づき、冷蔵庫の取っ手の上についているパッドに指を押し付ける。すると冷蔵庫が開いた。

 「これは・・・!」バーナードは驚く。刑務所長の指紋でしか開かないようになっている冷蔵庫の内部は、実際には冷蔵庫ではなかった。内部には地下に続く階段があるのだ。

 「足元が暗いから気を付けてくれ。」と言いながらライリーは慎重に階段を下りていく。階段を下りた先には薄暗い廊下があり、突き当りに木製のドアがあった。「所長室だよ。これからのことを話し合おう。」とライリー。


 「報酬ははずんでくれるんだよな?」「ああ。もちろんだ。ただ、君のビジネスパートナー達には今回の話に関与させないでくれ。ペンタゴンを巻き込んで大事にしたくないんでね。」「ああ。分かってる。」とバーナード。「ビジネスパートナー」とはアメリカ共和国軍のことだ。今回バーナードに脱獄藩抹殺の依頼を出した司法省はこの件を勝手に省内で解決しようと目論んでいた。つまりは隠蔽だ。だから軍を通じてペンタゴンに脱獄事件がバレてはまずいということだろう。

 「ああ。リスクを伴う依頼だからな。それなりの報酬をもらうぞ。」「いいとも。さて、まず脱獄事件の詳細について話そう。この情報はお前が暗殺用に選ぶ社員にも伏せておけ。今回の依頼の真相を知るのは司法省とお前だけだ。お前の部下には軍のためのスパイ抹殺任務だと説明しておけ。」「分かった。極秘情報だな。」「ああ。」と言いながらライリーはデスクの上のパソコンを起動し、ライリーに見せる。そこには複数のフォルダがあった。「ここにあるフォルダはどれも脱獄事件に関するものだ。まずは映像を見よう。」と言ってライリーは「監視カメラ映像」のフォルダを開く。複数のビデオファイルが出てきた。「さてと・・・再生しよう。これをみてもらえば脱獄事件について知ることが出来るだろう。まずは一般独房からだ。」

 再生された映像にはいきなり警報が鳴り響き、各独房前の警備員が拳銃を抜く様子と複数の刑務官が走り回る様子、そして謎の白覆面集団が刑務官や警備員に向けてライフルを撃つ様子が記録されている。白覆面集団は躊躇なく警備員・刑務官を殺す。さらには独房がいきなり開き、収容されていた凶悪犯の一部が飛び出して覆面集団の殺戮に加担する。血しぶきを上げて倒れる警備員・刑務官。狂ったように笑う凶悪犯。そして数名の囚人が外に駆け出す。

 「見ろよ!こいつがコーネリーだよ!」「ああ。新聞や手配書で顔みたことあるぜ。アイルランドギャングのボスだろ。」無精ひげを生やしたその男が逃げ出す様子が映っている。「ここにいるのはスネイクマンか?」バーナードは別の囚人を指さした。その囚人は自分の服を割き、沢山の蛇の入れ墨を見せびらかしている。入れ墨は顔から足まで体中に入れてある。彼は倒れた刑務官から銃を奪い、逃げ出す別の刑務官の足に撃ってから駆け出した。「何たるざまだ!」バーナードは想像をこえる惨状に眉をひそめた。「他にもいるぞ・・・こいつは爆弾魔ファーブだな。」「ああ。こいつもニュースにのっていたからな・・・確か捕まった時も狂ったように笑ってやがったよな。」爆弾魔として知られるファーブは独房が解放されるなり刑務官たちの間をすり抜けて逃げていった。「そしてこいつはあの凶悪なマフィア野郎だ。」と言ってライリーが指さした囚人は目の前で死んだ自分の独房の警備員二人の腰から一丁ずつピストルを抜き取ると入って来た刑務官四人に対して一瞬でヘッドショットをきめて殺した。「こいつも脱獄者の中に入っていたよな。マフィア幹部コルレッリだろ?」「ああ。頭も切れるし殺しの腕もいい危険人物だ。」「なるほどな・・・お、ホベットもいやがるな!」そう言ってバーナードが指さした先には目が血走った老人が映る。彼はその老体にも関わらず俊敏に動き、何と自分を独房に押し戻そうとした警備員の首を噛み切って殺している。もう一人の警備員が覆面に殺されたため彼は自由の身になって逃げて行った。他にも出た囚人はいたものの、重武装の警備員が応援で駆け付け、どうにか独房に戻すか無力化したようである。「覆面集団の奴らは何が目的か分からんなあ。」とライリー。確かに彼らは逃げ出す囚人たちには目をくれずに刑務官・警備員の無力化に専念していた。「テロリストの類か?」「分からん。とにかく、精神病棟のカメラ映像を見てみてくれ。」

 精神病棟のほうには覆面集団はいない。だが唐突にアラームが鳴り響き、囚人たちが外に出てきた。とある囚人は目の前を巡回していた刑務官にいきなり掴みかかり、彼女の目を潰して警棒を奪い、彼女の体を複数回殴って喜んでいる。「いかれてやがるな・・・」「ああ、こいつはあんたのターゲットの一人、ベンジャミンだ。」「ああ。ベンジャミンな。連続殺人鬼だろう。硫酸と手斧が好きないかれ野郎だったな。」「その通りだ。」「ここにいる奴は誰だ?」「ああ。そいつはフーバー。死体処理の仕事をしているいかれギャングだよ!」そのギャングは病棟からふらふらと出てくると手に持ったフォークでいきなり警備員の首を刺す。痛がる警備員の腰からピストルを奪った彼はもう一人の警備員を射殺し、けらけら笑いながら走っていった。精神病棟にもまもなく重武装の警備員が到着し、残りの囚人は射殺されるか独房に戻された。「どうやら独房の扉の開閉を制御するシステムに侵入されたようだな。」とライリー。「黒幕は大物のようだな。」「ああ。」

 続いて独房の入り口を移した監視カメラ映像が再生された。「入り口に異常は無いように見えるが・・」「まあ見てろ。」そうライリーが言った直後収容所周辺の木がざわざわと揺れだし、いきなり二機のヘリコプターが降り立った。入り口の警備員が呆気にとられている間にヘリの間からライフルを突き出した腕が複数現れ、警備員は抵抗する間もなく殺された。ヘリコプターから次々と覆面集団が降り立った。彼らは洞窟の中に入った。直後銃声が響く。また周辺の森の中からも複数人覆面集団が現れた。「奴ら・・・どこから現れやがったんだ!?」と驚くバーナード。「ああ。実はな、周山林警備隊に司法省から遭難者がいる可能性があると連絡して探らせたところかなり下にある廃道路にもヘリコプターが止められていたことが分かったんだよ。山林警備隊には刑務所関連の作業員のものだと言ってごまかしたが。」「なるほどな・・・ハッキングも出来てヘリコプターで登場か・・・かなり大規模な集団だな。テロ組織の類か?」「分からん。だがその可能性が高いな。司法省に保管されているテロ組織一覧の動向について探っているがどこの組織も脱獄事件以前に確認されている動き以上の動きもないし、インターネット上の声明発表もない。まあだからこそ隠ぺいできているんだが・・・」「なるほどな。脱獄犯たちはどうやって逃げた?」「実はな・・・監視カメラがハッキングされちまってな。確認できていない。」「監視カメラがハッキングだと!?」「ああ。全てのカメラが破損しちまってな。だが精神病棟管理人をしている精神科医レイラの話なら参考になるかもしれん。彼女は去っていく凶悪犯を何人も見ているんだ。」


 「レイラ、彼は今回の件について処理してもらう男だ。バーナードっていう元軍人さ。」「ええ。分かったわ。何についてお話すればいいかしら?」「何人か逃げていく凶悪犯を見たそうだが?その話について知りたい。」「ええ、いいわ。」そういって彼女は話し始めた。


 警報がなったとき、私はこの管理人室で書類の整理をしていたわ。そこにある監視カメラ映像パソコンを見た時、驚いたわ。私の管理する精神病棟の映像も映っていたけど戦慄したわね。扉が全部空いているんですもの!精神病棟の扉の開閉は私の部屋と総制御室でしかできないはずよ。総制御室では誰も怪しい操作はしていなかったことがライリー所長の証言で分かっている。扉を閉める作業が出来ないと分かった時私は戦慄したわ。しばらくするとそこの窓から見えたの。下の廊下が見えるでしょ。そこから囚人服を着た奴らが逃げているのが見えたの。奴らは覆面集団に守られていたのよ。奴らは周囲の警備員たちに向かって銃を乱射していたわ。多分その後は緊急脱出扉から逃げたのね。


 「緊急脱出扉?」「ああ。災害用の秘密の扉があるんだ。脱出トンネルに繋がっている。」とライリー。「監視カメラ映像はないのか?」「実は丁度そこはカメラの死角なのよ。」「ああ。生憎な。だが扉は壊されていた。爆弾のようなものでな。」「トンネルはどこに繋がってるんだ?」「脱出用道路だ。かなりふもとにある。山林警備隊の発見したヘリがあった廃道路からも行けるところだ。脱獄犯達はヘリにうつって逃げたようだぜ。」「なるほどな。ところで山林警備隊の映像は見れるのか?」「ああ。だが彼らが渡してくれた映像がある。」「怪しまれなかったのかしら?」「山林警備隊にか?」「ええ。何か不自然とは思われなかったの?」「大丈夫だ。行方不明者が収容所に侵入しているかもしれんから一応映像を確認したいといって請求したさ。見るか?」「ああ。」


 所長室に戻ったバーナードとライリーはライリーの業務用のタブレットに送られてきた映像を確認する。そこには確かに廃道路に停められたヘリコプターが映っていた。ヘリコプターの周りは重装備の集団が守っているようだ。それを見たバーナードは慌ててライリーを制止した。「映像をとめてくれ!」「おう?どうしたんだ。」「ヘリの周りにいる奴らを拡大してくれ。「ああ、分かった。」そう言ってライリーは映像を拡大する。「何か分かったか。」「ああ。よく見てくれ!」そう言ってバーナードは映像を指さす。「うん・・・あ、これは!」ライリーは叫ぶ。「分かったろう?覆面集団の正体。」「ああ。分かった。こいつらはアロウの奴らだ。」ライリーはこわばった声で言う。彼の視線はヘリの周りの警備兵が着ている弓と銃が交差したジャケットに注がれていた。「奴らは黒幕に雇われたようだな。」「ああ。雇った奴は相当財力があるみてえだな。とにかくアロウに探りを入れてみよう。」「そうだな。行ってみてくれ。」


四日後 ジェファソンシティ

 指定されたスーパーマーケットの駐車場でバーナードはタクシーを降り、スーパーマーケットの中に入った。

 「全く面倒くさいことしやがる・・・」とつぶやきながらバーナードは携帯に送信されて来た文章を確認する。「なるほどな・・・精肉コーナーか・・・」といいながら彼は精肉コーナーに向かい、肉を見ているふりをしながら当たりを見回す。「ああ・・いたな。」彼は目当ての人物を見つけた。赤いコートに白い帽子の金髪ポニーテール女。彼女は一瞬だけバーナードを見ると商品棚の隅に紙を落とした。バーナードは肉を眺めながらゆっくりと近づき、紙を拾った。紙の中にはGPSが入っていた。彼はそのタグを腕時計に付けると煙草を買い、スーパーを出た。


 30分後

 時計を見るバーナード。指示された通り歩いているが一向に迎えの車が来ない。カフェにでも入ろうか・・・丁度そこに「ブロットコーヒー」がるじゃないか!

 その時、カフェの駐車場に青いピックアップトラックが停まる。メール文で通知された通り芝刈り機を積んでいる。バーナードは近づき、助手席に乗り込む。

 スキンヘッドで少し太った運転手はトランシーバーに向かって「対象を回収しました。」と言うと無言で車を発進させた。


 車は公共の立体駐車場に入る。入る際運転手は係員に支払い料金と共にピンク色の紙を渡した。係員は小さく頷き、通信機に向かって「社員だ。」と一言いう。

 運転手は車を空いている駐車スペースに停めると近くの喫煙室に入った。そこには一人の老人がおり、「やあ。」と運転手とあいさつを交わした。老人は当たりを見渡すと腰かけについている肘掛を回す。するとなんと壁が回転し、喫煙スペースごと壁の向こう側に回る。回転した壁の裏側にそっくりな喫煙スペースが取り付けられ、中年の女が煙草を吸っている。彼女もまた老人と同じ役割を持つのだろう。

 老人は喫煙室の扉を開け、手元のボタンを押す。するとなんとそこにエレベーターが下りてきた!「すごいな・・・」バーナードはおもわずつぶやく。老人と運転手は無言だ。運転手はバーナードの肩を叩き、二人はエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターが開くと、「うおっ!」とバーナードは声を上げてしまった。かなり広いオフィスが広がっていた。そこには50程度のデスクがあり、全て社員が埋めていた。全員何かしらの作業をしている。ある者はパソコンで衛星画像の分析をしており、またある者は書類を作成し、別の者は3Dプリンターでミサイルの模型を作成してなにかを検証していた。

 運転手の男は始終無言であり、作業している者達も顔を上げない。その重苦しいまでの無言の中を運転手は通り抜け、オフィスの奥にある木の扉をノックした。「入れ!」という野太い男の声。バーナードは足を踏み入れる。

 大きな木のデスクの上に筋肉質の男。三角にそられた髭と首元の「アロウ」の入れ墨。男は立ち上がり、運転手と無言で出て行く。すると部屋の中央に座った女が立ち上がる。銀髪でブロンドの中年女だ。「あなたがバーナードさんですね?」「そうです。あなたがスワン?」「ええ。すみませんねえ。お手数おかけして。でも客人さん以外の一般人に我々の居場所を知られては困りますからね。メールでもお送りしました通りこの場所のことは・・・」「ええ、誰にも言いませんよ。私も仕事柄守らなければいけない極秘情報に慣れていますのでね。」するとスワンは微笑んで言う。「で、お話というのは添付の動画のことでしょうか?」「ええ。詳細は言えませんが、とある事件にあなた方『アロウ』の傭兵が関与した可能性があります。」「なるほど。しかし詳細を伏せられるとこちらとしてもどうしようも・・・」「では言いましょう。実はハラス更生収容所で白い覆面を被った集団による脱獄事件が発生したのです。」「何と!あの収容所が!」「スワンさん、とぼけないでいただきたい。」「はい?」「あなた方は何者かの依頼で脱獄事件を起こしたんじゃないですか?収容所の敷地内に侵入して。」「はあ・・・言いがかりは困ります。だいたい添付の動画は我々が山にヘリコプターをとめているというだけでしょう?恐らくハラスの山でしょうが、脱獄事件に関与している証拠がないじゃないですか!」優し気だったスワンの態度は今や豹変していた。「まあ落ち着いて下さい。」バーナードは冷静に言う。こういった人間には慣れている。「実は覆面集団が脱獄犯を連れて脱出した非常トンネルはこのヘリコプターが停められたスペースに通じているのです。撮られた時間も一緒です。」スワンは黙る。「スワンさん?」「知りません。本当ですよ。」と硬直した顔で言う。「本当ですか?」するとスワンは短い溜息をついた後、「本当です。関与していたとしても知りません。」と言う。「それはどういう意味です?」「この会社は複雑よ。」と突然スワン。「複雑?」「ええ。私は副社長と言う立場にいるけれど、実際誰がこの会社を動かしているか分からないのよ。」「はい?」「私は副社長と言う立場にいて社長を補佐しているけれどそれ以外にもこの会社には指揮命令系統が複数存在するの。例えば正体不明の理事長が統括する理事会や株主と理事会執行部による選考で選ばれたメンバー数名からなる評議会、それに形の上では私の部下にあたる執行部長は実際には社長の指揮系統には属しておらず独立しているわ。」「なるほど・・・噂には聞いていましたがそれほど複雑だったとは・・・」「そう、分かっていただけたようね。」「ええ。」「だから私に知らないところで誰かが依頼を受けた可能性はあるわね。理事会が評議会、執行部長、はたまた株主の誰かか・・・」「なるほど。お話ありがとうございました。」そう言って立ち上がったバーナードにスワンは言う。「待って。」バーナードは腰を下ろした。「依頼を受けた幹部は分からないけれど実行犯たちは知っているわ。殺し屋あがりの精鋭部隊よ。『メガウルフ』という部隊よ。機密情報だけれどね、特別に拠点の場所をメールで送るわ。」「ありがとう。助かります。」そう言ってバーナードは「アロウ」の本社を辞した。


5日後 アメリカ共和国 ジェファソンシティ郊外 ブルービーチ地区

 バーナードは信頼できる部下二人を見やる。ラキア人傭兵上がりのボリスとかつて米軍にいた時自身の部下だったリーストンだ。彼らには目的及び潜入場所の詳細を伏せて「メガウルフ」の本部に連れてきていた。「ここが目的地ですか?」とリーストン。「ああ。詳細は伏せるが、とある武装組織の拠点だという内部情報がある。」そう言って見やった先にあるのは廃業したホテルだ。窓は割れ、ツタが覆い、床からは木々が生えている。かつては駐車場だったであろう場所にはでこぼこした水たまりが多く見えた。

 「すげえところですな・・・まあ確かに隠れ蓑にはなるが。」とボリス。

 「よし、慎重に行くぞ。どこに隠しカメラや警備兵がいるか分からんからな。」米軍支給の高性能のライフルを抱えて窓の一つから中に入る三人。

 「誰もいねえな。」「物音ひとつしねえ。」三人は周囲にライフルを向けながら前進する。「ボス、入り口はどこですかね?」とボリス。「内部情報によると・・・そこのカウンターの奥の事務室に地下への入り口があるらしい。」と言いながらバーナードは二人を引き連れて進む。

 取れかけた事務室の扉をまたいだ三人は驚愕した。「なんだ!これは・・・・」今までとは違う綺麗なコンクリート張りの部屋。何もない部屋だ。奥に扉があった。「ここが地下への・・・」と言ってリーストンが駆け寄る。だがバーナードは「待て!」と制止した。スワンの情報によるとこの場所の警備は厳重なはずだ。部屋の天井の四隅にある監視カメラが常に照らしており、扉の前には四人の警備兵がいる。警備兵を倒せたとしても鋼鉄製の扉にはロックがかかっている筈だ。メガウルフ最上級幹部の指紋にしか反応しないようになっている。今回はハッキングツールで突破するつもりであったが・・・ロックの機会は壊れていた。それに扉は・・・変形して開いている。少し焦げているようだ。「何か・・・焦げ臭いぞ。」嫌な予感がする。

 リーストンは「誰もいねえように・・・」と言いかけた。その時、すごい揺れが走る。「何だ?」「地震か?」と叫ぶボリス。ものすごい衝撃が足の下から襲ってきて、三人は一気に地面に叩きつけられた。「くそ!」と土煙の中せき込むバーナード。「くそ!」がれきの下から二人の部下も這い出してきた。

 土煙が収まったところ、地震のような揺れの正体が分かった。「なんてこった・・・」地面に大きな穴が開き、下からけたたましい笑い声がした。「どっかーん!へっへっへ、俺様が娑婆に戻ったぜ!」そう叫ぶ男の顔は狂気めいている。その狂気を増幅させるのは周囲に転がる血まみれの死体。皆メガウルフの傭兵たちだ。

 「あいつ・・・ニュースでみたことがあるよな?」とボリス。「ああ。奴は確か・・・爆殺魔・・・」とリーストン。「ああ。爆弾魔ファーブだ。」と絶望感を感じながらバーナードは言う。

 



 



 

 

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