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7話 アリスちゃんによる完璧旧式魔術教室

「一度使わせていただいたあの杖による魔術ですが、たしかにとても便利なものでした。しかし確かにあれでは魔力を動かす必要がないので、魔術、いわゆる『旧式』を扱うことはできません」


 アリスによる旧式魔術教室始まった。


「まず魔力というのは本来消費するものではありません」


 そう言って、アリスは立てかけてある、模擬刀を握る。


「え・・・うそ。刀身が」


 アオが驚きの声を漏らす。アリスが模擬刀を握った次の瞬間、刀身が輝きだしたのだ。その輝きは杖による魔法と比べるとかなり小さいが、それと同じような輝きだった。


「杖による魔術は例外ですが、基本的に魔術のイメージは込めるというより、回す・循環させるというイメージが適切です。そしてあまり消費されません」


 そして、アリスは振りかぶる。

 そして軽く模擬刀で藁の的に当てて見せる。

 すると刃のないはずの模擬刀がまるで研ぎ澄まされた刃を持ったかのような切れ味で藁を一刀両断してみせた。


「自分の魔力の回路と武器の魔力の回路をつなげるイメージです。繋げたら魔術を使うことができます。まぁ、繋げただけでは威力が上がるだけですが」


 アリスはそう言って模擬刀を置いた。すると模擬刀はまもなく光が収まっていく。


「武器にも魔力があるんですか」


 そのアオの疑問にアリスは笑顔でうなずく。


「模擬刀だけではありません。森羅万象、あらゆるものに魔力はあります」


 そういってアリスは何の変哲のない革製の鞄を持つ。どうやらデモンストレーションは続くようだ。


「ちょっとまってくださいね・・・むずかしいですね」


 そう言ったアリスだったが10秒後には「あーあったあった」とつぶやいた。

 そしてカバンがわずかに輝きだす。


「いきますね!!」


 アリスはカバンを両手で持ち、体をぐるりと一回転したのちに、藁の的の横からぶつける。

 軽く当たったはずの藁の的は吹き飛んた。そしてその藁は池にボチャンとダイブした。


「これでわかるように万物に魔力は存在します」


 鞄の藁を払いながら「魔力を通すのに向いていないものがほとんどですけどね」補足するアリス。


「「・・・」」


 授業では習わなかった事実に言葉を失う二人。


「道具とか武器の魔力の回路どころか、自分の魔力の回路もわからないよー」


 コウが泣き言をいう。

 するとアリスは少し思案顔になる。


「そうですね。この模擬刀は魔力の回路が細くそして本数も多くありませんから、感覚をつかむのには向いていませんね・・・あっそうだ!!!」


 アリスは何かひらめいたのか、カバンの中をガサゴソと探り出し、取り出したのは二本のペンだった。そのペンはガラスでできていて、ガラスには文字が刻まれている。


「これは、インクがなくても魔力で書くことができる特殊なペンです。扱える人がかなり少なくて販売はされていないんですけど」


 アリスは紙に魔術ペンを滑らせる。するとインクのペンで書いた線と、何ら変わらない線がその紙には描かれていた。


「すごい・・・インクを使っていないのに文字が書けてる」

「使ってみますか?」


 アリスはそう言ってペンをアオに渡す。アオはおそるおそるペンを受け取り、アリスと同じように紙にペンを滑らせる。しかし白紙のままであった。。


「駄目だわ。使えない」


 アオはため息をついてペンを置く。


「実はこのペン、魔力の回路が無数に張り巡らせていて、しかもかなり太いです。なので、字が書ける=魔力が通る経験を積み重ねていけば、自分の魔力の回路の把握をすることができると思います」


 そういってアリスはコウにもペンを渡す。


「これいいんですか?めっちゃ高そうだけど」


 コウはペンをまじまじと見つめながら、慣れない敬語でアリスに聞く。よく見るとペンには複雑は魔法文字ルーンが刻まれているほか、軸は美しいスパイラルの流線形、そして天ビスには天を駆けるユニコーンをモチーフのガラスの彫刻が施されていた。


「別に大丈夫ですよ。金貨一枚くらいなので。壊れたら言ってください」

「金貨一枚って・・・」

「アルバイトでは返せそうにないね・・・」


 アリスは何でもないように言っているが、アオとコウは今日何度目かわからない絶句である。

金貨1枚。庶民の平均月収の3ヶ月分である。


「魔力の回路をつなげるようになったら次のステップに進みましょう」

「なんか申し訳ありません。こんな平民に良くしてもらって」


 アオはそう言って「ありがとうございます」と頭を下げる。


「大丈夫ですよ。アオさんとコウさんは数少ない知り合いですから」


 アリスはそう言って笑みを絶やさない。


「え、アリス様って知り合い少ないんですか?」


 コウのギリギリアウトな質問にアオは顔を真っ青にする。しかし、おそるおそるアリスのほうを見る。幸いアリスは気にしている様子はなく、ほっと胸をなでおろす。


「この学年ではアオさんとコウさんだけですね」


 アリスは上を見上げ人差し指を顎につけながら、コウの質問に返答する。

 ちなみに一か月でアオとコウがアリスと話したのは入学式の一回だけである。


「「・・・・」」


 思わぬボッチ宣言に二人とも言葉を詰まらせる。


「ほら私、腫物ですから。平民の皆さんはもちろん、貴族の皆様も商会生まれの方も誰も近づこうとはしないので」


 そう言ってアリスは踵を返し「それではごきげんよう。何か御用があればいつでもおっしゃってください」と手を振って去っていった。



「なんか私たち、やばい人と知り合っちゃったんじゃない?」

「奇遇ね。コウ。ちょうど私もそう思っていたところよ」


 そう言った二人は何とも言えない表情で見合って、苦笑した。

 悪い人ではない。しかしどこか頭のねじが何本か抜けている。

 それが彼女らのドール・J・アリスの人物評であった。

 こうして四大貴族のお嬢様と平民の二人の奇妙な『旧式魔術』についての講義が始まったのである。


「でも、なんでアリス様ってあんなに魔力を使うのがうまいんだろうね。なんかルーンも読めてたし」

 コウはアリスからもらったペンを片手に、ふと疑問に思ったことをアオに聞いてみた。

「さぁー?なんでだろうね」


 アリスが魔力に精通している理由

 この理由は最後まで分かることはなかった。


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