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4話 授業の始まり

「それでは授業をはじめます」


 入学式の日は、その日は貴族や資産家が参加できるパーティーがあったため、アオやコウのような平民は寮に帰って休みだったが、次の日からは朝から夕方までの講義を受ける日々が始まった。


 大きな講堂に集まった生徒たち。講義を受ける日々が続き、早1か月。入学当初は緊張で張りつめていたが、緊張が続くわけもなく、中にはあくびを漏らすものも見られる。


「えー。このように対侵略者との武器は、剣やナイフ、杖や重火器など各々合った武器ものを使う時代から現代の画一的な武器もの・杖を使う時代に移り変わっていきました」


 黒板の前で少しずれた眼鏡を直しながら、講師は目の前のレジュメを読み上げる。


「えー。ここで問題です。なぜ画一された武器を使うようになったのでしょう。わかる人はいますか。わかる人は手を上げてください」


 講師はそう言って周りを見渡すが、だれも手を上げる気配はない。しかしそれを気にする様子もなく、黒板に向かう。


「理由は様々ありますが、最大の理由は安全性の確保です。まず杖による攻撃は射程が長いため、剣やナイフによる攻撃よりはるかに安全に攻撃を与えることができます。そして、全員が同じ武器を持つことによって、味方同士の同士討ちもありません」


 講師はそう言って『安全な位置から攻撃が可能になる射程の長さ』『味方同士の同士討ちの防止』と黒板に書く。しかしそれを紙に写す生徒は少ない。


「現代の戦術はシンプルです。魔物が近づく前に、隊列を作り杖による高威力の魔法を一斉に放つ。これが最も安全で過去10年一人も犠牲が出ていない、現代戦術です」


 講師はそう言ったあとに時計に目をやる。講義が終わる時刻の3分前だ。


「えー。それでは少し早いですが、区切りがいいのでこれで講義を終わります。それではお疲れさまでした」



 講師の終了の合図に講堂は騒がしくなる。


「一応命かける職業に就こうとしているのに、こんなんでいいのかしら」


 その様子を見てアオはため息をつく。


「ムニャムニャ・・・あーそこ痛いよアオ・・・」

「・・・こっちが偉そうに言える立場ではなかったわ。おーい起きなさい。コウ」


 アオはコウの肩をさする。


「うん・・?もう授業終わったの?」


 コウは目をこすり、よだれを拭きながらあくびを漏らす。


「そうよ。これから初めての実技でしょ。更衣室向かいましょ」

「うん!!この一か月講義しか受けてこなかったから、体動かしたい!!」


 そういって、講堂を二人は少しだけ速足で後にした。


「それでは講義を始める。シュラハト・Aエース・エーデルだ。実技は主に私が勤める」


 Aエースという単語を耳にした途端、訓練場がざわつく。


「四大貴族様だよ・・・」

「しかもAエースって。バリバリの武闘派じゃないか」

「でもすごいきれいな人・・・」




「私語は慎め。お前たち」


 特に口調もきつくない、なんてことない注意言葉だが場に緊張が走る。


「お前たちは三年後。魔物から国を守る、国の対魔物対策課、いわゆる『清掃隊』に配属される」

「いいか三年だ。しかも実技は週5時間。約800時間しかお前たちは与えられていない。その時間を無駄にするんじゃないぞ」


 そしてエーデルは指を三本たてて生徒たちに説明を続ける


「この学園の講義で取り扱うのは野営・体力づくり・魔法訓練の三つだ」


 3つの実技訓練。かなりシンプルだった。


「それだけ・・・?」


 エーデルの凛とした声が響き渡っていただけの訓練場に明るいほんわかした声が混じる。声の発信元を見るとコウだった。


「ほう・・・それだけとはなんだ。話してみろ」

「いや・・・魔法を射撃するのはいいんですけど、例えば魔物に近づかれたらとか、そんなときに遠距離こそ強い、杖による魔法って発動まで時間がかかるし、役に立ちにくい気がするんですけど。

 実質、この学校で教えてできるようになることって、杖による魔法を早く、そして正確に、そして一定の威力で放つことができるようになることだけということですよね」


 コウの鋭い視線がエーデルを貫く。その言葉にエーデルは表情を崩さない。


「たしかにその生徒が言っていることは正しい。この学園のカリキュラムで身に着けることができることは、杖による魔術、いわゆる魔法だけだ。いわゆる近接武器や銃火器などの旧式の魔術戦闘や格闘技などは教えるカリキュラムはない」


 エーデルはそう言うと、生徒に動揺が走る。近接攻撃手段がない。それは魔物に近づかれたら死に直結するということだ。それなのにそれをこの学園では教えないというのは一体どういうことなのだろうか。


「そしてその理由は簡単だ。お前たちは馬車に乗ったことがあるか?無いものは手を上げてみろ」


 手を上げるものはいない。


「馬車に乗って、命を落とす確率よりも魔物に接近される確率のほうがはるかに低い。旧式の魔術戦闘術や格闘技を学ぶというのは馬車に乗ったときに命を落とさない方法を学ぶのと同じだ。つまり学んでも生かす機会はほとんどないと言ってもいい」


 エーデルはそのあとに「まあ、あっても困るものではないが」と付け加える。


「そして私は旧式の魔術戦闘術を一通り扱えるが、使い物になるまで2000時間以上かかった。馬車の自己よりも起こる可能性が低い事象に対応する技術で2000時間だ。」


 そして一呼吸おいてエーデルは話す


「それでもやりたいというものが・・・そうだな」


 エーデルは少し考えて言った。


「5人いたら旧式の魔術戦闘や格闘技を教える講義を放課後開こう。もちろん無償だ。希望する者は1週間以内に私に申し出るように。これでいいかな?」


 そう言ってエーデルはコウのほうを見る。コウは頷いて頭を下げる。



 1週間経って、その講義を希望する者はコウ以外誰もいなかった。

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