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14話 一年後期 現場実習 5

「よく持ちこたえましたね。コウさん」


 アリスは片手でクルガーの一撃を受け止めながらコウに笑いかける。


『何者だ。私の一撃を受け止めるとは』


 クルガーは更に力を込める。しかし1ミリも動く気配はない。


「しかし、コウさんわかったでしょう?魔力を込めるというのは呼吸をすることより自然にできるようにならないといけないのです。もっと練習しましょうね。」

「アリスちゃん?なんでここに?」


 コウの疑問にアリスは笑顔で答える。その笑顔はとても華やかで、とてもこの状況に合っていない。


「アオさんが、私のところに駆けつけてくれたのです。友達が戦っているとわかったので、一目散に駆けつけました」

『無視するな!!私を!!』


 クルガーは激昂し、振りかぶり、拳を振り下ろす。その一撃は速さを意識した先ほどまでの攻撃とは一線を画す全力の一撃である。



 しかし、それは防がれる。


『な、なに?』


 クルガーは目を疑う。

 防がれたのが、武器だったらまだわかる。それは何度も経験してきた。

 しかし彼女が使っていたのはただの変哲のない筆だった。しかも筆先のフサフサとした柔らかい部分である。


『ふざけるなよ!!』

「このように、魔力さえ循環させさえすれば、こんなものでも敵の攻撃を防ぐことができるんです」

『無視をするな!!』


 コウにレクチャーしながらアリスはひらりとクルガーの攻撃を躱す。


「さて、どれで行こうか・・・」


 アリスは周りを見渡す。そんな中でもクルガーの攻撃はかすりもしなかった


(なんなんだ!!こいつ!!)


 クルガーは距離をとる。


「あらら、逃げられちゃいますね」

『誰が逃げるか!!』


 クルガーは魔法を連打する。アリスはその魔法をひらりひらりと躱す。そしてアオに被害が及びそうな攻撃は筆で弾き飛ばした。


「じゃあ、あれでいいか」


 そう言って、アリスは一気にクルガーに詰め寄る。空気に魔力で固め、軽々とステップを踏むかのようだ。


『くるなー!!!』


 クルガーは遠距離魔法を放つ。しかし、アリスはそれを気にもせず、突っ込んでいく。あたっても傷一つつかない。そして鼻と鼻が触れ合うところまで接近した。すると口元を緩めたのはクルガーだった。


『そのまま対策しないと思ったのか!!』 

「何あれ・・・」


 アオは呆然とする。

 クルガーの腕は変化していた。先ほどは人間と変わらない腕だったが、更に細く、指先は鋭く、そして血管は浮き出て、紫色に光っていた。


『しね!!』


 クルガーの攻撃は先ほどよりはやく鋭くなっていた。心臓を狙っていた攻撃は、アリスの手のひらを貫く。クルガーは自分の攻撃が通用したことに口元が緩む。


「アリスちゃん!!」

『俺が本気出せばこんなもんだ!!次は胸を貫ぬ・・・』


 クルガーは腕を引き抜こうとする。


「知ってます?蚊を殺そうと思うとき、ブンブン飛んでいるのは難しいんですよ」

『お前早く離せー!!!』


 クルガは引き抜けないのなら割けばいいと力をこめるが、まったく動かない。

 アリスはにやりと笑った。


「でも・・・」


 そう言ってゆったり地面に降りていく。クルガーは抵抗するが全く意味がない。アリスは鉄の棒を手に持つ。そしてその鉄の棒は姿を変え、鋭い槍に変化していく。


「血を吸っている蚊だったら簡単に殺せるんですよね」

『お、お前俺を虫みたいに!!』

「虫みたいなもんでしょ」

『俺たちをそんな扱い・・・』


 そう言った瞬間クルガーの表情が豹変する


『お前まさか、あの悪魔じゃないか!!死んだはずじゃ!?俺たちは死んだのを確認して10年以上待ったんだぞ!!』

「あーなるほど、正解は死んだあとにすぐに攻めるべきでしたね。残念不正解です。」


 アリスは槍を振りかぶる。


『くそがー!!誰かたすけろー!!』

「無駄ですよ。賢い魔人はすぐに逃げ帰ってしまいましたから。そして立ち向かってきた魔人は」


 アリスの槍はクルガーの胸を貫く。


「全員殺しました」


 アリスはその後首を切り裂いた。


「コウさん魔族の弱点は人間と同じで首と胸です」

「う、うん。わかった・・・」


 アリスの言葉にアオは頷くことしかできない。クルガーは地面に墜落する。砂ぼこりが晴れるとクルガーの亡骸は泥のように溶けていった。

 それをみてコウは呆然としていた。


「て、てか!手のひらは大丈夫なの!?」

「大丈夫です。貫かれたのは、わざとですから。もう止血も終わっています」


 そう言ってアリスは制服についた、土埃をパンパンと落とす。そう言ってアリスは手のひらを見せる。既に傷すら見えなかった。それを見たコウはホッと一息をついた。


「アリスちゃん危ないところをありがとう」

「どういたしまして。私も友達を助けることができてよかったです」


 そう言ってアリスは笑みを浮かべる。その笑みに緊張が解けたのかコウは尻もちをつく。


「いやー力抜けちゃった」


 そう言ってコウは恥ずかしそうに後ろ髪をかく。


「いや、生きて帰ってこれただけで100点満点ですよ」


 そう言ってアリスはコウと負傷した隊員を背負って街へ歩き出した。


「他のところは大丈夫なの?」

「はい、私のところはすぐに殺しましたし、この魔族を殺したら、ほかの魔族の気配はなくなりました」

「こっからどうなるんだろ」


 コウはそう言って空を見上げた。魔族が現れた空はもう何も変哲もない青い空が広がっていた。


「さぁ・・・どうなるんですしょうね。」


ーーーーーーーーーーーーー


「アリス様による撃退が報告されました」

「まさか・・・アリスがそんなに強いなんて」

「言っただろう?心配する必要はないと。それよりここから忙しくなるぞ」

「戦後処理ですか?」

「もちろんそれもあるが、魔法お掃除隊の給料を2倍以上には上げないと人員が不足する。安心安全の高収入の人気職だったのが、こんなことになったんだ。早く動き出さないとこの国は立ち行かなくなる。そして攻撃魔法が効かないとなるとカリキュラムの変更も必要になる。問題は山積みだぞ。」


 戦後、国が大きく変革を求められることになる。それをシュティレは見抜き、早くも動き出した。

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