なんだよ…ここ……
なんだかんだ言いつつも、夏祭りが始まった。
「颯斗、遅い」
「悪ぃ……笑」
「暁菜も来てるのか」
「やっほー!」
「ほらさっさと行くぞ、腹減ってんだよ」
「お前飯食ってないのかよ」
「朝と昼何も食ってない」
「私はちゃんと食べてきたけどね」
「ほら行くぞ」
「神楽も始まる」
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「……暁菜」
「何?」
「ほら、やる」
「お面?」
「颯斗には内緒な、絶対茶化してくるから」
「分かった笑」
「早く颯斗のところに……」
シャンッ……
「あれ、神楽始まった?」
「え?神楽はまだだよ?」
あの音は確かに神楽鈴の音だ。
毎年神楽を見てた俺が間違うはずない。
シャンッ……
(まただ……)
シャンッ……シャンッ……シャンッ……
(境内からと……鳥居からと……あと一つは……)
《此方に来なんせ……》
「……は?」
途端に視界は闇に包まれ、俺はそのまま気を失ってしまった。
気づくとそこは……
俺がいた鬼願神社ではなくなっていた ──。
「なんだ……ここ……」
「おい見ろ、人間がいるぞ」
「なんと!」
(なんだよここ……!!)
(なんだよコイツら……!)
[見世物じゃないぞ、散れ]
(誰だ……?)
「これはこれは科斗様」
「通行の妨げにして申し訳ありません」
[うちのヤツらが失礼した]
[怪我はないか?]
「え?あ……はい」
[主人が其方を招き入れたようだ]
[詫びにしては地味だが、とりあえず屋敷に案内する]
「ありがとう…ございます…」
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[其方、名を何と言う]
「俺は明蘭……」
[明蘭か、よろしく]
「科斗さんでしたっけ?」
[科斗と普通に呼んでくれ]
[敬称を付けられるのは苦手でな]
「分かった」
「科斗、ここはどこなんだ?」
[ここは妖怪の住む街、妖楽街と呼ばれる幽世だ]
「幽世……?」
[妖怪の集まる世界、ここに人間はいない]
[いるのは妖怪のみ]
[なぜ明蘭が主人に呼ばれたのかは謎だが、何かしら理由はあるのだろう]
「その主人って……?」
[……この街を束ねる、言わば王だ]
「え”っ……」
[あの方は御優しい、安心してくれ]
「おう……」