夏休み前
これは
俺がある夏の日に体験した出来事だ。
─────────────────────────
「明蘭ー!」
「颯斗、なんだ?」
「今回の夏祭り、一緒に行かねぇ?」
このお調子者っぽいやつは如月 颯斗。
保育園からの中で、言わば幼なじみだ。
小さい頃からよく周りに人が集る陽キャの塊みたいなやつなんだが根は良い奴で恨めないんだよな。
「おー、いいぞ」
「マジ!?」
「その日ちょうど暇だし」
「良かったぁ~……」
「危うくぼっちで行くとこだったわ」
「お前毎年ぼっちじゃないだろ」
「バレた?笑」
「部活の先輩が毎年自慢してくるからな」
「颯斗と夏祭り行ってきたーって」
「ははっ笑」
「僕人気者じゃん笑」
「どうだか」
「酷っ……笑」
「それじゃあ、絶対その日は空けとけよー!」
「また明日ー!」
「俺も帰るか……」
毎年この季節には、夏祭りが開催される。
子供から大人まで大勢の人で賑わう夏祭りが開催されるのは、鬼神を祀っている鬼願神社だ。
夏祭り以外にも、正月の初詣や七五三などでも賑わう活気溢れる神社だ。
夏祭りの開催が決定すると、参道には屋台が並び始め、参道から神社まで提灯と灯篭が妖美に光る。
俺は夜に家から眺めるその景色が大好きだった。
毎年恒例の神楽や、夏祭りの大目玉である花火大会、他にも色んな行事が催される。
─────────────────────────
「あれ明蘭!」
「元気ないね、夏バテ?」
こいつは俺と同じクラスの東雲 暁菜。
吹奏楽部に所属していて、帰りはまず会うことがないがこうやって部活のない日はいつも俺を待っている。
「部活やっててバテてたらそれこそ問題だろ」
「確かに笑」
「お前はいいよな、屋内で」
「明蘭も屋内じゃん」
「屋内だけど矢を取りに行くの地味に大変なんだぞ?」
小さい頃から弓道を習っていたからか、高校に入ったら弓道部に入ると決めていた。
「ていうか吹奏楽部舐めんなぁ!?」
「はいはい」
「…そっちはどうなの?」
「まぁまぁだな」
「あ、でも今度大会出るよ」
「お!応援行こうかな!」
「お前も練習あるんじゃないのか?」
「……ある」
「まぁ、頑張れ」
「えっ、明蘭が素直に応援してくれた……」
「失礼だな」
─────────────────────────
家へ帰って早々に俺はベッドに横になった。
少し寝ようと思っていたところに
\ブーッ、ブーッ、ブーッ/
「……はぁ」
「あれ、颯斗からだ」
『いきなりなんだよ』
『ごめんて笑』
『今夏祭りの会場にいるんだけど、来ない?』
なぜ俺を誘った……?
あ、もしかして何か貰えるのかな
『行ったところでなにか貰えんのか?』
『特に何も』
いや本当になぜ俺を誘った?
『じゃ行かねぇ』
『付き合い悪いなぁもー……』
『寝るとこだったのによ』
『お前寝過ぎだ』
『うるせぇ』
『さっきから酷すぎ』
『切るぞ』
『はいよ笑』
俺の睡眠を妨げやがって……。
「よし、寝るか」