ホラー短歌10首
毎晩の
この刻によく
ドアが開く
お邪魔しますと
声が聞こえる
*
新居にて
どなたからなのか
お裾分け
鍵開けた
玄関の三和土に
*
塾帰り
恋しい人と
手を繋ぐ
肩を叩かれ
ごめん遅れた
*
初訪問
夜半人影が
首を絞む
彼は笑って
きっと母だよ
*
君が為
家族も友も
職も失す
されど本望
君もそうでしょ
*
知人宅
留守居に
ついつい声を張る
誰か居ますか
どうか助けて
*
久し振り
元気そうだね
泣かないで
今から行くよ
会うの楽しみ
*
幾連勤
疲れた未明の
帰り道
見上げて焦がる
屋上の影
*
登頂を
諦め急ぎ
山くだる
手を振り迫る
笑顔から逃ぐ
*
渓流の
岸で釣り人に
狙い訊く
答えて言うに
わたくしの足
終.