月今宵のカンパネラと、十七夜の星
夕風の姿を大地に
象りゆくように
黄金に煌めく
穂をなびかせながら
芒の波は幾重にも
立待の月が
やがて銀世界へと
いざなうとき
さわやいでいく
律の風が頬を流れて
窓辺にさしこむ
ひとすじの光は
月へと続く
階段のように
その光の軌跡を
駆け上がる
まなざしの先に
黄金の鐘のような
十七夜の月
月今宵のカンパネラ
空に鳴り響く
鐘の音のように
夜を奏でる光の
音色は風にのって
月の女神が浮かべた
微笑みがそっと
街並みへとやわらかに
ふりそそぐように
うつし花の葉の上に
映し出される
光を瞳に宿しながら
月今宵のカンパネラ
空に瞬き始める
十七夜の星々
夏風の中に残した
想いを空へと
ちりばめるように
彩雲の彼方から
この世界を照らす
十七夜月
満ちては欠けて
欠けては満ちてゆく
月は心を映す
鏡のように
月の光はなぜ
やさしくて
月草の花はなぜ
こんなにも
青い色をして
月と星と
風の清けさの中で
問いかけながら
北の空に輝く
秋北斗の七つ星が
心の水面を
汲み上げるように
宙を上りゆくとき
そこに映る
月と星をみつめて
いくども満ち欠けを
繰り返しながら
時に雲の向こうに
あるとしても
月はきっと
月のままで
いつもこの惑星の
そばにいるから
言の葉もきっと
心の月から
溢れくる光のしずく
互いの心を
照らし合いながら
響き合う
鐘の音のように
十七夜月のカンパネラ
祈りと願いを
宙と心の、月にこめて
「月今宵」は、中秋の名月(十五夜の満月)のことで、その二日後の月(十七夜月)に願い事をすると叶う、といういわれがあります。十七夜の月は、立って待つ間に空に上る意味から「立待月」と呼ばれます。
ひしゃくの形をした北斗七星は、秋には北の水平線から水をすくい上げるように空に上がり、「秋北斗」と呼ばれます。
うつし花は月草の別名で、朝に青い花が咲きます。芒は赤茶色の花が咲き、花言葉は「心が通じる」です。「律の風」は、秋めく風のことです。
「カンパネラ」は、イタリア語で「鐘」の意味です。鐘楼などの大きな鐘は「カンパーナ」と呼ばれ、本作では心の中の鐘も表す意味で「カンパネラ」としています。
季節の星や花、そして月をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。