まだ見ぬ君へ
遥か昔、過酷な環境を儚んだ祖先は理想郷を追い求め、別の宙域まで届くように自らの魂を空に放った。何億年もの過酷な旅に耐えられるよう耐久性を究極に高める必要があった。知能の搭載を諦め、極小サイズに生命をパッケージ化した。それは原核生物と呼ばれる細菌のような形態に似ていた。
やがてたどり着いたそこは、回転の緩やかな恒星系であり、中心天体である恒星からは程よい距離を保っていた。彼らはそれを地球と名づけ、理想郷の発見を祝福した。故郷で見た永年の悪夢は終わりを告げ、新しい春がここから始まるのだと、名もなき細胞たちは心を躍らせていた。