ニューヨーク
いくらアメリカが銃社会だからって。
いくらニューヨークが東京より治安が悪いからって。
まさか、こっちへ来て一時間足らずで、強盗の現場に遭遇するなんて不運あり得る!?
ってあり得るんだよね。今のわたしがそうだもん。
引っ越し作業が疲れたから飲み物でも買おう。そう思ってドラッグストアに入った途端、レジの方が騒がしい。どうしたんだろ? 商品棚の隙間から様子を窺ったら、目出し帽をかぶった身長二メートル近くの大男が、店員に拳銃を突きつけてる。英語がわからないうえに、強盗犯が興奮してて何を言ってるのかチンプンカンプンだけど、「金を出せ! さっさとしろ!」って感じなんだと思う。多分。
やばい、殺される。足が震えておしっこちびっちゃいそう。
「向こうは治安が悪いから気をつけて」
日本を経つ時、友達にそう忠告されて、
「映画の見過ぎ」
笑い飛ばした自分を呪いたくなる。
とにかく、ここは物音を立てず、犯人に見つからないように息を潜めていよう。
そう思って屈もうとした瞬間、缶ジュースの山にお尻が当たって豪快な音を立てちゃった。
……オーマイガッ!
天を仰ぐわたし。きっと神様からはひどく間抜け面に見えてるだろうね。ああ、このままだと、すぐにもそちらへ逝くことになりそうです。どうか、お助けを。
強盗犯がわたしに銃口を向けて、
「F〇〇k!」
映画やドラマでよく聞く、悪い言葉を連発して怒鳴りつけてくる。ひぃぃぃ、怖いよぉ。
「アイ キャント スピーク イングリッシュ」
抑揚のない間抜けなイントネーションで返すと、
「F〇〇k! F〇〇k! F〇〇k!」
きゃあ~~、禁止用語連発で迫って来た!
「ソーリー ソーリー アイム ソーリー」
頭を抱えて丸まりながら謝罪の言葉を連呼するしかない。お願いだから許して。店員からお金をもらって、さっさと逃げた方があなたにとってもベターだって。
後頭部に鉄の感触。
「ひっ……」
恐怖で息が詰まる。絶体絶命。もうダメ、殺される……。
「ちょっと、失礼」
何だろう? ちょっと現実感がないっていうか。そうそう、吹替映画の声優みたいな、少し不自然な感じのおばあさんの声が聞こえてきた。
「何だよ、ババア」
あれ、何でだろ? 強盗犯まで声優みたいな声で日本語を喋ってるんだけど。別人? それとも急に、店内に日本語吹き替えの映画が流れ出した?
後頭部から銃の感触がなくなった。恐る恐る顔を上げると、シスター服を着た背の曲がった皺くちゃ顔のおばあさんが、ニコニコしながら強盗犯のすぐそばに立ってる。
「地球人のカラダを上手く乗っ取ったつもりかもしれませんけど、わたしの目は誤魔化させませんよ」
やっぱり吹き替えっぽい。おばあさんの口の動きと声が微妙にズレてる。それと、言ってる意味もよくわからない。地球人のカラダを乗っ取るってどういうこと?
でも強盗犯には通じたっぽい。
「ババア、何者だ?」
おばあさんに銃口を向けた。ちょっとマズいよ、これ。早く警察を呼んでよ店員。と思ってカウンターを見たら、店員はこっそり逃げようとしてる。ウソでしょ!? おばあさんの後にわたしも殺されるかもしれない。どうしよう!
その心の声が聞こえたワケではないと思うけど、
「心配する必要はないわよ、お嬢ちゃん」
おばあさんは余裕ぶって、わたしに笑顔でウィンクしてきた。……もしかして、ボケちゃってて、このピンチに気づいてないのかな?
「おとなしく宿主から出て行くか、わたしに始末されるか、どちらがいいかしらね」
おばあさんの意味不明な質問には答えず、
「死ね、ババア!」
強盗犯は拳銃の引き金を引こうとした。
その瞬間、おばあさんの目が赤く光った。と同時に、
「うぉっ!?」
強盗犯のカラダが硬直。呻き声を漏らしながらどうにか動こうとするけど、全然ダメみたい。何これ? どうなってるの?
「一種の催眠術みたいなものよ」
おばあさんは答える。あれ? やっぱりわたしの心の声が聞こえてる?
「ええ、しっかりと。わたしの名前はマザー・テレーズ。よろしくね」
わたしに微笑んで頷くテレーズおばあさん。やっぱり、聞こえてたの!?
「ついでに言うと、あなたの脳の言語中枢もいじらせてもらってるわ」
「どういうこと?」
つい声に出すと、
「お待たせ、テレーズ」
テンガロンハットをかぶったカウガール姿の女の子が店の中に入って来た。金髪に緑色の瞳。笑うとニカっと大きく開く口からは、キレイに並んだ真っ白な歯がのぞく。これぞアメリカン・ビューティーって感じで、ショートパンツから伸びる脚は見惚れるぐらい長い。立ち姿がとにかくカッコいい。
「時間は厳守してもらいたいものね」
テレーズから小言を言われたカウガールは、
「ソーリー」
悪びれた様子もなくウィンクすると、背中に手を回して、
「で、獲物はどっち?」
勢いよく二丁拳銃を抜いたかと思うと、わたしと強盗犯に銃口を向けてきた!
「ひぃぃぃ!」
ワケがわかんなくて、わたしは悲鳴を上げた。
「見ればわかるでしょ。お嬢ちゃんは人質」
テレーズがそう言ってくれなきゃ、カウガールに撃たれてたかもしれない。
「冗談よ」
カウガールが笑いながらふたつの銃口を向けると、強盗犯の様子がおかしくなった。テレーズの催眠術で硬直してたはずが、首だけが不自然に曲がって……
うそぉぉぉぉ! 黒いゼリーみたいな物体を吐き出した! ちょ、ちょ、ちょっと、何、これ!? めちゃくちゃ気持ち悪い!
「大丈夫、わたしに任せて」
カウガールはわたしに微笑む。テレーズといい、どうして、そんなに平然としてられるの?
強盗犯の口からは、黒いゼリー状の物体が流れ続けてる。ちょっと、ホントに何なのこれ!?
「簡単に言うと、地球外生命体ね」
テレーズが朗らかに言う。
「地球外生命体?」
「そう。バークランド星人。こいつらは、人間に乗り移って悪さをするの。だからね、こうやって」
床の上に落ちて、プクプクと泡立つ黒い物体。カウガールはそれに銃口を向けて……撃った!
鼓膜を破るような銃声音が鳴るのかと思ったけど、意外にもパンッというクラッカーを鳴らしたような音だった。
と同時に、黒い物体がピカッと青白く光ったかと思うと、次の瞬間には蒸発するように消えた。
「な、何、今の?」
「バークランド星人を消滅させる特殊な成分がコーティングされた銃を撃ち込んだの」
別に煙がたちのぼってるわけじゃないのに、カウガールは銃口にフッと息を吹きかけてカッコつける。
「その、バークランド星人って何なの?」
わたしの質問に、
「地球からうーんと離れた星に住む宇宙人だよ」
カウガールがバカっぽく答えたのと同時、突然、大型トラックが窓ガラスを割って店の中に突っ込んできた。
「危ない!」
咄嗟にカウガールが店の奥の壁に引っ張ってくれなかったら、わたしもテレーズもトラックに突き飛ばされてたかもしれない。
商品棚をなぎ倒して店の真ん中で停車したトラックの運転席から、黒人の女のひとが飛び降りてきた。女子プロレスラーみたいにガタイがよくて、
「いつも我々のじゃまばかりしやがって!」
嚙みつきそうな顔をしながら、わたしに殴りかかってきた!
その右の拳が顔面にヒットするまで一秒もかからない。
その短い時間にわたし、御門さくらの自己紹介をサラッとさせてもらうと、かの有名な伊賀流忍者の末裔で、その血筋のためかスポーツ万能。子どもの頃からパパの影響で空手を習い、世界ジュニア大会で優勝した経験もある。
はっきり言って、そんじょそこらの男には負けない。けど、こっちに引っ越してきたのをきっかけに、強いってことは秘密にすることに決めた。なぜって? 強い女はモテないから。
「さくらはひとりでも生きていけると思う」
決まって最後はそう言われてさよなら。そんな不遇から脱したい。
でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない。顔面を殴られて鼻でも曲がったりしたら、それこそ恋愛どころじゃなくなっちゃうよ。
ってわけで、わたしは黒人女性の渾身の右ストレートをかわして、右のハイキックをカウンターで鮮やかに決めた。空手の練習からは遠ざかってるけど、カラダがしっかり覚えてる。足の甲が顎に入った。失神KOは必至。黒人女性の頭がストンと落ちて……落ちない!?
一瞬、動きが止まったけど、黒人女性はガラ空きになったわたしの右腹に左フックを叩き込もうとしてきた。完全に油断した。あばら骨を折られるかもしれない。
「しまっ――」
た、と言い終わる前にすぐ横から、
パンッ。
クラッカー音が鳴って、黒人女性の右耳、続いて左耳がピカッと青白く光った。まるで光の弾丸が頭を貫いたように。
と思ったら黒人女性は白目を剥いて、電池切れを起こしたようにバタッと倒れた。
「ふう~、危なかったね」
カウガールがはしゃぎ声を出して銃口に息を吹きかける。わたしはこのひとにまた助けられたらしい。
「今の身のこなし、とても素晴らしかったわね」
テレーズに褒められてうれしくはあったけど、
「でも、仕留め損ねました」
高校に入学したら空手はきっぱり辞める。オシャレなJKになる。そう宣言してから半年足らずで、ここまで衰えてるとは思わなかった。ショックだし、ショックと思うのが意外だった。
「それはきっと、自分で思ってる以上に、お嬢ちゃんは空手が好きなのよ」
わたしの頭の中を読んでテレーズは優しく微笑む。
「それに、落ち込む必要はないのよ。バークランド星人に乗っ取られた人間の攻撃をかわすだけでもたいしたもの。それをあなたは攻撃を返して、一瞬とはいえ動きを止めたんだもの。凄いことだわ」
テレーズはわたしの右手を両手で包み込むと、
「ねえ?」
カウガールに同意を求めた。
「めちゃ凄い」
銃をクルクルと回してからホルダーに収めると、カウガールは派手な笑顔を見せながら、わたしにサムズアップしてきた。
「お嬢ちゃん、あなた、地球の平和を守る活動に興味はない?」
テレーズに真面目な顔でそんなことを言われたわたしは、
「え?」
と困惑。いや、大分前からワケのわからないことが起こり過ぎてる。これ、いくら何でも、「アメリカだから」のひと言では済まされないよ。人種のるつぼって言われるぐらいだから、色んな国のひとを見かけるけど、まさか宇宙人に遭遇するとは思わなかった。
どこかからパトカーのサイレン音が響いてきた。
「あら、今日は珍しく早いわね」
その音に反応したテレーズは、
「一度、セント・デシャン教会へ来て頂戴」
窓の外、道路を挟んで向かいにある小さく古びた教会を指差した。
「バークランド星人やわたしたちのこと、詳しく話してあげるわ。それと、エルゴが適応するか試してみましょう。きっと、お嬢ちゃんなら大丈夫だと思う」
エルゴ? 何を言ってるんだろう。
「教会へ来たら教えてあげるわ」
わたしの頭の中の声に反応するテレーズ。
「警察はわたしが対応するから、お嬢ちゃん……名前は?」
「さくらです。御門さくら」
「さくら。素敵な名前ね。さくらはもう行きなさい」
テレーズはわたしの手を離す。こんな事件に巻き込まれて、本当に立ち去っちゃっていいのかな? 後で警察が来て厄介事になったら困る。
「大丈夫。署長はわたしたちのことを知ってるから」
「そうなんですか」
よくわからないけど、それならさっさと逃げよう。
「じゃ、じゃあ、よろしくお願いします」
入り口の方へ足を向けたわたしに、
「いつでも構わないから、必ず顔を見せて頂戴ね」
テレーズは念を押すと、
「強い女性は美しいものよ」
微笑んだ。
「わたしの名前はアンナ・ケリー。さくら、待ってるからね」
カウガールのアンナが陽気に手を振る。
「は、はい。ハッ、アハハハッ、さようなら」
思いっきり愛想笑いをして店の外に出たわたしは、野次馬たちの視線から逃れるように猛ダッシュ。けたたましいサイレン音が響かせて走るパトカーとすれ違う時には、別に悪いことしてないのに顔を隠した。本当に厄介事に巻き込まれるのはごめんだよ。
マンションのドアマンに挨拶して、
「ただいま」
呼吸を整えてから部屋へ入る。
「遅かったな、さくら」
ひとりで軽々と大型テレビを運ぶ筋肉バカのパパ。日本企業の商社で働いてて、こっちに引っ越して来たのはパパの都合。会社でのあだ名は『アイアンマン』。誰がつけたのか知らないけど、言い得て妙だと思う。パパが弱ってるところを一度も見たことがない。
「ちょっと、道に迷っちゃって」
笑ってごまかす。どうせ話しても信じてもらえないに決まってる。宇宙人退治を目撃しただなんて。
「さっきからずっとパトカーのサイレンが鳴ってるから、心配しちゃった」
って言う割におっとりした口調なのはママ。マイペースな性格だけど、伊賀流忍者の血を引くからスポーツ神経は抜群。若い時は体操の選手として活躍してた。
身のこなしだけじゃなくてノリも軽い。四十歳超えて、ギャルっぽい派手な服を着るのは、恥ずかしいからちょっとやめてほしいんだけどね。
「さくらも自分の部屋を早く整理しちゃいなさい」
「はーい」
自分の部屋に入って、マットレスだけが置かれたベッドの上に仰向けになる。
「フゥ……」
お腹の底からため息が出た。
引っ越して早々、強盗事件に遭遇して、いきなり銃社会の現実に直面したかと思えば、その犯人が宇宙人にカラダを乗っ取られてて、それを退治する謎のふたり組が登場。
何それ? 冷静に振り返ると、夢でも見たとしか思えない。いや、絶対そうに決まってる。じゃなきゃ、おかしいでしょ。
あるいは、日本から来た右も左もわからないピュアな少女を、この街のひとたちが揃ってドッキリ企画にはめて、楽しんでるだけなのかもしれない。……何のために?
多分、理由なんてないんだ。ここはエンターテイメントの街だから。歩いてすぐにブロードウェイだってある。楽しければそれでいい。だから、こっちも楽しめばいいんだ。
でも、教会になんて絶対に行かない。もしかしたら、本当に危ない組織のひとたちかもしれないもん。
それにしても、あれが全部演技だったとしたら、バークランド星人だっけ? あの黒いドロリとした物体が、強盗犯の口から溢れ出た時の感じ、あれはリアルだったな。映像だったら上手く処理できるだろうけど、目の前で起こったからね。かなり大量に吐き出してたけど、どこに隠してたんだろ?
それに、カウガールのアンナが銃で撃ったら一瞬でパッと消えた。あのマジックも凄い。どうやったんだろ。化学反応か何かを利用したのかな?
それと、わたしはどうしてテレーズたちの言葉を日本語に変換して理解できたんだろ? そういえば、テレーズはわたしが考えてることを見抜いてた。あれって、どんな技術を使ってるの?
大体、わたしを驚かすのに凄い予算を使ってるよね。最後にトラックがお店に突っ込んできたし。テレビ局の企画かな?
だとしたらそのうち、スタッフがネタ明かしをしに来るはず。とりあえずそれを待とう。それまでは、テレーズが言ったことは全部ウソなんだと思うことにした。
ただ、黒人女性に襲いかかられて、カウンターで右ハイキックを当てた時は気持ちよかったな。KOできなかったのはきっと、あのひとプロレスラーか何かなんだ。
『自分で思ってる以上に、お嬢ちゃんは空手が好きなのよ』
テレーズの言葉。そうなのかな?
『強い女性は美しいものよ』
そうも言ってた。あの時はスルーしちゃったけど、思い返してみると、自分の人生を肯定してもらえたみたいでうれしい。
『地球の平和を守る活動に興味はない?』
わたしが? そんなことできるのかな。それからテレーズはエルゴがどうたらこうたらとか言ってたけど、あれは何だったの? ドッキリにしては妙な設定を用意してるもんだな。
『教会へ来たら教えてあげるわ』
あれってもしかして、教会でネタ明かしをするってこと? あるいはのこのこ姿を現わすか検証する企画なのかもしれない。
あるいは、いやこんなこと絶対にありえないけど、もしも本当にバークランド星人が存在するとしたら? 地球が侵略されちゃう、なんてことにはならないよね?
ネットで検索しても、バークランド星人の情報なんてどこにもなかった。
セント・デシャン教会に関しては、観光スポットを紹介するサイトに『穴場』的な感じで掲載されてるけど、いかがわしいウワサは見当たらない。
ニューヨークでの宇宙人目撃情報も、信憑性がありそうなのは特になかった。
ピザをデリバリーした夕食の時間、
「ねえ、宇宙人て本当にいると思う?」
パパとママに訊いてみた。
「いるも何も、パパはUFOを見たことがあるよ」
「ウソ、いつ?」
「あれは、北海道のウルトラマラソンに参加した時だったかな」
フルマラソンが42.195km走るのに対して、ウルトラマラソンは100kmや丸一日耐久で走ったりする過酷なレース。パパはその大会に挑戦するのを趣味にしてて、ニューヨーク転勤が決定すると、「アメリカ横断マラソンに挑戦する!」ってうれしそうに宣言してた。
「夜中に森の中で休んでたら、空に緑色の光が突然現れて、真横に飛んでると思ったら急にパッと消えたんだ。あれは怖かったな。周りに他に誰もいなかったし」
「飛行機じゃなくて?」
「飛行機だったら点滅して飛ぶだろ。急に消えることもないだろうし」
UFO説をパパは力説する。うーん、どうなんだろ。誰かと一緒にいて、そのひとも目撃したっていうなら信用できるんだけどね。野球場の外野席からバッターの顔が見えるってぐらい、パパの視力がいいってことだけは確かなんだけど。
「ママはどう?」
「そうねぇ、わたしはUFOなんて見たことないけど」
ママは手を軽く叩いて、パンくずを払いながら少し考える。
「体操をやってた時、オリンピックに出場する選手たちを見てたら、同じ人間とは思えなかった」
そう言うと、
「それなら俺だって、空手でとんでもない選手を見てきた」
パパが鼻息を荒くさせる。それだったら、わたしから見たらふたりだって十分、超人に思えるけどね。でも、知りたいのはそういうことじゃない。
「ところで、何でそんなことを訊くんだ?」
ふと冷静になったパパにそう訊かれて、
「ううん。何となく」
わたしは誤魔化した。
その夜は不安で眠れなかった。ただでさえ、昼間にあんなことがあったから、また変なのに襲われるんじゃないかって怖いうえに、ひと晩中ひっきりなしにパトカーや消防車のサイレンが鳴り止まないんだもん。ニューヨークの夜っていつもこんななの? それともたまたま? やっぱり日本とは違うんだ。英語だってできないし、これからわたし、平和に暮らしていけるのかな?