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お城で呼び止められた

 ほんの半日の間にいろんな事があったものだけど、あれから数日が経ったわりに特に変わったことはなく、公爵家でレジーナお嬢様にお仕えしていた。


 アレクセイ様の心配も、今のところは空振りに終わり、私に接触してくる怪しげな人もいない。


 公爵家にこもっていれば、変な人に声をかけられないのは当たり前だけど。


 それで、いよいよ今日は妃教育の一環でレジーナお嬢様が登城する日だ。


 侍女は三名の同行が許されていたから、シンシアさんとサラさんと一緒に、緊張した面持ちのお嬢様に付き添った。


 その緊張感が逆に良かったのか、お城でのお嬢様は堂々とした振る舞いで、子の巣立ちが近い親の心境で感動していたものだ。


 そんな一連の習い事も無事に終わり、安堵で笑顔を浮かべるレジーナ様と談笑しながら通路を歩いていた。


「リリアーヌ・ロウ夫人。ちょっといいかな?」


 突然名前を呼ばれて、誰がと振り返れば、ニコラス王太子殿下がそこに立っていた。


「レジーナ。僕は彼女に聞かなければならない事がある。彼女の時間をもらってもいいかい?」


 ニコラス王太子殿下は、今日は蜂蜜色の髪だった。


 きっとこちらが本物なのだろう。


「リルが同意して、ちゃんと最後まで送ってくださるのなら」


 毅然とした態度で答えたレジーナ様は、


「リル、どうする?断れないって考えなくていいよ」


 私に気遣うように尋ねてきた。


 アレクセイ様からは侯爵家に気をつけてほしいと言われたけど、王太子殿下と一緒にいるアレクシス・ハーデン様はどうしたらいいんだろう。


 あの時はアレクセイ様も、アレクシス様が敵か無害か分からないから、警戒していたのかな。


 失礼ながら、殿下とアレクシス様の顔を交互に見つめても、何が狙いなのかわからない。


 公爵家に勤めている私がこのままついて行って何かあれば、さすがに騒ぎになるから、仰った通りにただ話をするだけなのだと思う。


「あの、では、話を聞くだけなら」


 私の返事を聞いたレジーナ様は、キッと音がしそうなほど殿下を強く見つめて、


「私の大切な人を危険な目に遭わせましたら、殿下と言えど、許しませんよ」


 殿下を脅すように仰ったから、逞しくなったなぁって、成長をしみじみと喜んでいた。


「心得ておくよ、婚約者殿。では、リリアーヌさんは、こっちへ」


「リル。時間は気にしなくていいからね」


「はい。お気遣い、ありがとうございます」


 レジーナお嬢様に見送られ、殿下自らの案内で、別室へと移動した。


 客間の一つなのか、広々としたお部屋のソファーに腰をおろす。


 さすがお城の調度品。


 どこを見ても品のあるものばかりだった。


「先日のスカウトの件は聞かなかったことにして。君がリリアーヌ嬢なら、それよりも大事なことがあるから。政略結婚の騎士団長とお互いに無関心なのかと心配したけど、そうでもないみたいだから、話をしようと思ったんだ」


 目の前に座った殿下が、早速話し出す。


「君達の手紙の事と無関係ではないのだけど」


 それに、ドキリとした。


 殿下もご存知なのかと。


「何か、君の御父上や団長から聞いている?」


 アレクシス様をついチラリと見てしまったけど、


「いえ、特には」


 そう答えるしかない。


 迂闊には何も言えない。


「あの補給の()()とも関係はあるかな」


 ()()……





 そもそも殿下は(当時はニックさんだと思っていたけど)私がちょうど店番をしていた商会に現れて、少ない資金でどうにか食料を調達できないかと相談されたのだ。


 援助したくとも、ロウ伯爵家はすでに初期の段階で資金も物資も食料も、膨大な量を騎士団に寄付している。


 これ以上は領民に負担を強いてしまう。


 他の領地などは、もっと出し渋っている状況だった。


 なので、中立の立場を示している、北西方面で隣接する公国から調達すべく、商会に大量に保管されていた在庫品のテンサイの種を物々交換できないかと提案した。


『公国は宗教国家だ。他教徒に施しを求めるのはさすがに困るし、あの国はよく通貨価値が暴落するから迂闊に取り引きもできない。そもそも国交も希薄だ』


『そこで、物々交換なのですよ。希薄と言えど、商人間の取引が全くないわけではありません。それに、施しなどではなく、正当な取引ならいいかと。あの国は重要な祭事で砂糖を使った貢物を用意しますが、最近は輸入に頼っています。でも寒冷地で昼夜の気温差も大きいから、テンサイの栽培には適していると思うのです。テンサイは食材としても食べられますよ!』


 公国は、ロウ伯爵家の領地と近いから、気候が似ている所がある。


 今まで、異なる宗教を信仰をする国と積極的な交流はなかったけど、今はそうは言っていられない。


『ロウ伯爵家の領地からならスムーズに通せると思いますし、その方面の領地はロウ家に友好的な家ばかりです。あとは商人さん達に、ニックさんの資金をそのまま手数料としてお渡しすれば』


『有益な情報をありがとう、すぐに手配に取り掛かるよ』





 

 それで、数日のうちに食料が手配できたわけなのだけど。


 あの時の話を簡単にまとめるとこんな感じだ。


 あの話はまだ終わっていなかった……?













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