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称号付き小説

よくできすぎた女は、隣国の王子と結婚してお姫様になった:来

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私はもうすぐ、生まれ故郷の隣の国でお姫様になる。

 だから手紙を書くことにしたのだ。


 私との婚約を破棄した愚かな王子に向けて。


 どうして彼は私と言う「優秀」な人間を手放してしまったのだろうか。


 色々と助言をしてあげたし、至らぬ所はかわりにやってあげた。


「俺よりも優秀な人間は妻にはいらない」だなんて身勝手よね、本当に。


 あなたが困っているから、私は手を貸してあげたと言うのに。


 最初の頃は「優秀な婚約者を持つ事ができて幸せだ」とあんなにも言っていたじゃない。


 けれど、自分より「優秀」な私が目障りになったあなたは、私を切り捨てた。


 だから、やりなおすの。


 隣の国の王子様と結婚して、お姫様になるわ!


 この王子様もあなたに似てちょっと抜けている所があるから、間違いを全部正してあげてるの。


 みんな喜んでるわよ。


 私が国の王になれたらいいのに、っていう人も言うぐらい。


 だから、もしかしたら次に手紙を書く時は、お姫様としてじゃなくて王様になってるかもしれないわね。


 あら、物思いが長くなってしまったわ。


 途中で何をどう書こうか悩んでいたら、つい時間がすぎちゃって。


 でも、大体今考えてた通りでいいわよね。


 そろそろ書き上げなくちゃ。


 あら、鳩が来たわ。


 ちょうどいい所に来てくれたわね。


 今すぐ手紙を書きあげるから待っていてね。


 手紙を出す前に、王子の許可はいいのかって?


 その国のお姫様になる人間が勝手にそんなものを書いてだしていいのか、ですって?


 いいに決まってるじゃない。


 必要ないわ。そんなもの。


 だって、私のやる事は絶対にすべて正しいんですもの。









 愚かな王子へ。


 そんな始まりで綴られた文章をすべて読み終えた。


 やはりだ。

 

 間違いない。


 あの女からの手紙だろう。


 名前を見て分かっていたが、文面を見て確信した。


 ああ、本当に婚約破棄して、国を追放していてよかった。


 なぜなら奴は、国を乗っ取る悪女だったのだ。


 奴は初めは良い妻だった。


 だが、やりすぎたのだ。


 王子を支える出来の良い妻といっても限度がある。


 王より目立っては、国の威信が揺らいでしまうだろう。


「俺よりも優秀なところを、そう堂々と見せるのはいかがなものか」

「あら、ひどいわね。あなたより優秀じゃいけないの?」

「そういう意味ではないのだ。ただ」


 だから、このようなやりとりを交わしたのだが、聞き入れてはくれなかった。


 あの女はそんな事を気にせずに、俺よりも仕事をこなし、俺よりも優秀な部分を見せびらかしていた。


 時には俺が許可を出していない事まで勝手にやっていた。


「皆が幸せになれるんだから、いいでしょ」


 とあの女は言っていたが。


 王子より目立つ女を傍に置いておくわけにはいかない。


 それぞれみなには、ふさわしい立場と言う者があるのだ。


 それを無視した行いをしては、和が乱れてしまう。


 俺は、その手紙を受け取ったあと、隣国の王子に向けて手紙を書いた。


 ちょうどいい。


 鳩が来たな。


 とりあえず、管理している者に体調のチェックをさせてから、手紙を出す事を伝えておこう。


 見た限りは鳩は元気そうに見えるが、人間には分からない異変もあるだろうしな。


 手紙の内容はどうしたものか。


 やはり率直に書くしかない。


 その女は危険だから、結婚するな。早く婚約破棄しろ、と。


 こちらの内心も知らずに、やって来た鳩はくるっぽーと平和な鳴き声をあげていた。






 けれども、結局その後隣国は悪女に乗っ取られ、王族は忽然と姿を消した。


 何代も続いていた王族の血は途絶える事になった。






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