94ー伯母様登場
「ルル、ルル」
まただわ。この声。
「レオン様、どうされました?」
一応聞いてみる。
「先にさ、甘いの出して」
やっぱり……
「ルル、お母様も欲しいわ」
はいはい。
「お待ち下さい」
また、部屋の隅で控えているメイドに近づきます。
「ルル様、お皿ですか?」
もう読まれてるじゃない。
「ええ、大きいのをお願い」
ドンと、1ホールのチーズケーキを出します。レアじゃない方ね。底にレーズンが入っているのよ。
「切り分けて出してくれるかしら? もう4枚お皿下さる?」
「はい、ルル様」
ドドンと、もう4ホール出します。
「一緒に来た皆にも出して下さる? 貴方達も皆で食べてね。しっとりふわふわで美味しいわよ」
「有難う御座います!」
メイドさん達、ニッコニコね。喜んでもらえて良かったわ。
「ルル、これチーズケーキ!」
「そうよ、出発前にイワカムに作ってもらったの。美味しいわよ。ノトスが合格点を出してたわ」
「ルル、しっとりしていて美味しいわ! お母様、これも好き」
お母様にも喜んでもらえて、良かった良かった。
お父様が王都迄の街の状況をお祖父様に報告されました。
「アーデス、明日共に登城しよう」
「はい、父上」
「私は前回釘を刺した。次はないと。なのに何だ、この怠慢は! 奴しか兄上の子がいなかったとは言え、やはり彼奴を王にすべきではなかった。上に立つ器ではない! アーデスの婚姻の時の馬鹿な行動といい、今回といい。私はもう我慢はせんぞ!」
「父上、どうなさるおつもりですか?」
「最悪、私もティシュトリアに退く」
ええーー!! お祖父様、何を言ってるの!! 意味が分からないわ!
レオン様が小さい声で教えて下さいます。
「ルル、分かるか? もしモーガン殿がティシュトリア領に退かれたら、モーガン前王弟殿下がこの王国の王を見限ったと言う事になるんだぞ」
「レオン様……」
「でもそれはな、無用な争いを避ける為でもあるんだ。モーガン前王弟殿下を王にと押す貴族を出さない為だ」
そうなのね。
「しかしな、モーガン前王弟殿下が王都から出たら、王都は終わるかも知れないぞ」
「どうしてですか?」
「モーガン殿お一人ならまだ良い。今、この王都の商いの中心はモーガン殿の商会だ。その商会も、もし一緒にティシュトリア領に退くとなったら、態々遠い王都にまでやって来る商人がいなくなる。ティシュトリア領で用は済むんだ。逆にティシュトリア領から王都に物資を流す事になるんだ。どっちが王都だ、て話だよ」
「そんな…… 王都から物が無くなる? 流通しなくなるって事ですか?」
「そうだ」
王都は終わるじゃない……!
「現王はよっぽど馬鹿なんだな。甘いなんてもんじゃないな。俺ならとっくに王都を出てるさ」
そんな……お祖父様の大きな声が響きます。
「王都よりティシュトリアの方が住みやすいではないか! 食べ物も美味い! それに、可愛い孫達もいるんだぞ! あの馬鹿王のお守りは御免だ! もう私はこんな王都は嫌だ!!」
ええ……! 今レオン様に真面目なウンチク聞いていたとこなんだけど。お祖父様、王都は嫌だと言っちゃったわよ。
「父上。明日、捕縛した者達も連行してきています。兎に角、先にその者達を引き渡し処分を決めて頂かないと」
「ああ、分かっている」
「それに、優先すべきは王都民の解呪です。放ってはおけません」
「ああ、それも分かっている! だから私はアーデスから連絡を貰って直ぐに解呪の追加を願い出た。しかし、あの馬鹿は何と言ったと思う!? あの馬鹿王は、解呪は既に終わっていると言ったんだぞ!!」
なんですと!? 王て馬鹿? 大馬鹿なの!?
「ルル、お顔……」
あら、お母様ごめんなさい。
「レオン様」
コッソリ話します。
「ん?」
「一度、王様を鑑定してみたいわ」
「魅了されてるとか?」
「違うわよ。大馬鹿者とかの称号があるんじゃないかと思って」
「ブフッ、笑かすなよ」
いや、マジよ。大マジよ。
「そうよ、ルル。鑑定してきなさい」
「お母様、聞いてらしたんですか?」
「普通に聞こえるわよ」
「すみません」
「本当に、大馬鹿者て称号があるかも知れないわ。お母様もルルの意見に大賛成だわ」
お母様、怒ってるー。
「あの悲惨な現状を、実際に見てみれば良いのよ」
その時、ドアが開いて……
「皆様、お久しぶりですわね!」
あ、伯母様だ。めっちゃ久しぶりじゃない。帝国に行ってるんだと思ってたわ。
伯父様の奥様です。ソアレ・オーベロン公爵夫人です。私が王都の学園にいる時はよくお買い物に連れ出されました。
「義姉上、お久しぶりです。戻って来られていたのですか」
「アーデス様、久しぶりですわね。そうなのよ、いい加減帰って来いって言われちゃって」
「お義姉様、ご無沙汰してます」
「まあ、テレス。変わりありませんか?」
「伯母上、お久しぶりです」
「ご無沙汰しています」
「まあ、ラウにジュード、相変わらずカッコいいわねー!」
「伯母様、ご無沙汰してます」
「ルル! あなたいつ以来かしら? あなたの卒業パーティー出ようと思ってたのに、早くに帰っちゃうんだもの。で、そちらの方は?」
「帝国第3皇子のレオン・ド・ペンドラゴンと申します。お初にお目に掛かります」
「まあ! あなたが! ルルの婚約者様ね?」
「はい。お見知り置き下さい」
「私、息子二人が帝国に留学中だからよく帝国に行きますのよ。第3皇子殿下のお噂は聞いた事がありますわ」
「どんな噂か怖いですね」
「えっと、8歳の頃に廃嫡してくれと願い出た変わり者だったかしら?」
「ハハハ、その通りです。今はルルと縁を頂いて感謝していますよ」
「まあまあ! そうなの! ルル、素敵じゃない! 早く婚姻してしまいなさいな!」
「義姉上、その変で」
良かった、お父様が止めて下さったわ。
「あら、ごめんなさい。ルル、それよりモモちゃんは?」
きた、きましたよ。
「伯母様、部屋に」
「聞いてるわよ。モモちゃんだけじゃないんでしょ?」
「あー……先に紹介しておくか。ルル」
お父様に言われました。
「はい、リアンカにみんなを連れて来る様に言って下さる?」
近くのメイドさんにお願いします。




