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転生公爵令嬢の婚約者は転生皇子様  作者: 撫羽
第ニ章

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90/137

90ー元男爵領

 はい、翌日です。そろそろ次の街が見えてきます。シャーロットの父親だったペイドン・プロセル元男爵の領地です。

 男爵はもう鉱山に送られたので、今は領主が不在の状態です。どうするんだろ?

 先行していたリルやノトス、ケイとこの街で落ち合う予定です。もう解呪が済んでる様な報告だったけど。大丈夫かしら?

 静かです……馬車の中が。ピーピー相槌もありません。何故かというと皆さん揃ってお休み中です。静かで平和がいいわ。


「ピーヒュルヒュル……ピーヒュルヒュル……」


 あぁ一人寝息の大きい子がいたわね。え? これは寝息?

 ピアはレオン様の膝の上で横になって、両手をお腹に添えて寝ています。いつも両手はお腹の上ね。

 あ、街が見えてきた。入口に誰か立ってるわ。

 入口に向かって馬車は進みます。あ、リルとノトス、それにケイもいるわ。3人仲良くなったみたいね。それにしても、3人一緒にいると何かオーラ? が違うわね。只者じゃない感がスッゴイあるわ。

 ケイなんてホントに訳分かんないわね。一人で街の人達を解呪しちゃうし。まぁ3人共、従者なんだけど。

 あ、先頭のお父様の馬車が止まってリル達と話してるわ。馬車がまた動き出しました。街の中へと入って行きます。


 何? この街……何なの……!?

 お父様が治める辺境の地ティシュトリア領は、辺境だから魔物の脅威はあるものの綺麗な街並みで街の周りに畑が並んでて街の中を風が抜けていく、何よりも領民が活き活きとしていて……。

 お父様がしっかり領民を保護したり仕事を与えたりしてるから、所謂スラムがないのよ。家がなくて道で寝ている人なんて一人もいないのよ。孤児はいるわよ。いるけども! でもそんな時は直ぐに領主邸に保護される。何があったのかしっかり確認され、子供は領主邸で教育を施されながら働いてたりするのよ。だから身汚くて食べられない人なんていないのよ! それが凄い事なのは分かってた。

 だって、王都の学園へ通っている時に領地と王都は全然違うと思ったもの。だから分かっていたけども!

 今迄の街でも思ったけど、此処までじゃないわ! 何この街! 街の人達大丈夫なの? どうなってるの!?


「ルル、ティシュトリアが凄いんだよ」

「レオン様。起きてらしたの?」

「ああ」

「ティシュトリアが凄いのは分かっていたけど、それにしてもこの街は酷すぎるわ」

「ケイが街で肉まんを呆気なく配った時点で予想はつくだろ? 普通は他所者がそんなに簡単に食べ物を配れる訳ないからな。普通は警戒するだろ? この街の人達は、それ以上に飢えてるんだよ。領主が馬鹿だと領民は災難だよな。何もあの男爵だからじゃないんだ。真面目に領地経営をしている貴族でも、下手な奴はいるんだ。領地経営が上手くいかないと領民が飢える。ルルのお父上は凄い人なんだよ。凄い人なんだと街を見れば分かるよ」

「レオン様……」


 レオン様て普段軽いのに、しっかり見てるわね。皇族だから? それともレオン様だから?


「ルル、帝国では当たり前だ。この国が、王国が甘いんだ」


 よく言ってるわね、帝国では当たり前だ。て……。


「前に話したろ?『皇族たる者国民の手本であれ!』だ。皇族じゃなくても、民の上に立つ者はそれだけの責任を負うんだ。真面目だから、技とじゃないからじゃあダメなんだ。どんなに一生懸命でも領地経営が出来ないやつはしちゃいけないんだ。領民の将来や命に関わるからな。帝国だと領地を召し上げられて当然だ。しかもこの国は頂点である王家があれだ。その下にいる貴族はもっとだろ。今回の事だってそうだ。公爵夫人じゃないけど、俺も怒ってるんだぞ」

「レオン様」

「王家に生まれたから当たり前じゃないんだ。王家に生まれても、上に立つべきではない者もいるんだ」


 ――コンコン


 いつの間にか馬車は止まり、馬車の扉を誰かがノックしています。


「リアンカ」

「はい、ルル様」


 リアンカがドアを開けてくれます。


「レオン殿下、お待ちしておりました」


 ケイだわ。


「ケイ、ご苦労だったな」

「ケイ、有難う。早急に解呪できたんですって?」


 レオン様に手を取られながら馬車を降ります。モモちゃん達は暫く馬車でお留守番ね。リアンカが馬車にいてくれます。


「ルルーシュア様、とんでも御座いません。殿下」

「ああ、分かってる。領民の状態だな」

「はい、此処は異常です」

「ルル、レオン、ケイもだ。詳細を聞こう」


 お父様が呼びにきました。


 私達は領主邸だった邸にいます。領主だったシャーロットの父親、ペイドン・プロセル男爵はもういません。家族はいなかったのかしら? 使用人は? 誰も残ってないの?

 そこに、身綺麗な初老の執事らしき男性が入ってきました。


「ティシュトリア公爵様、此度は助けて頂き誠にありがとうございます。なんと感謝を申し上げていいのか」

「いや、構わん。其方が領主の執事か?」

「はい。この邸には、元々私と数人の使用人しかおりません」

「詳しく話してくれるか?」

「はい、勿論で御座います」


 執事の話によると……

 元々、ペイドン・プロセルは領地経営が上手くなかった。しかし、夫人がご存命の間は、夫人がなんとかやり繰りしフォローし成り立っていた。

 ペイドン・プロセルは、亡くなった夫人の家系の力で男爵位を手に入れたものの、女癖が悪く借金も作り領地は奥方の努力の甲斐なくどんどん貧乏になっていった。

 その苦労が祟ったのか、子供は出来ず夫人は亡くなってしまった。そこにペイドン・プロセルが外に作った愛人の子、シャーロットを引き取った。

 夫人が亡くなったのと同時期にその愛人はシャーロットを置いて何処かに行ってしまったのがきっかけだったらしい。

 それで金持ち貴族の愛人にでもと引き取った。それから悪夢が始まった。執事は領地の仕事が忙しかった事もあり、シャーロットとは接点も少なく適度な距離を取っていた為か魅了からは逃れられていた。が、気がつけば邸にいる殆どの者が魅了に掛かり異様な状態になっていった。お金もないのにドレスを作り食事には文句をつけ、しかも邸内にいる殆どの者がシャーロットの言い成りだったと言う。

 シャーロットが王都の学園へ編入し寮に入ってからは多少落ち着いたものの、シャーロットが邸へ帰ってくると直ぐに元通りになってしまう。

 その内、領地でも異変が起こり出す。シャーロットの浪費を止めさせようとした者達が不審死をしたり、シャーロットを貶していた女達が行方不明になったり。そんな所に王都からの知らせが届いた。

 シャーロットは修道院へ、領主は鉱山へとの沙汰が下ったと。


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