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9ー領地案内中

 お邸を出て、ユックリ領地内を進みます。モモも私の直ぐ横を並走しています。

 街を出て、今は小麦畑や野菜等が植えられている畑の間の道を進みます。畑の間を農水路が流れていて、長閑です。


「領都は活気もあって、整然としていて明るいし綺麗な街並みですね。異臭も全くない。畑も豊作だ。素晴らしい」


 レオン様が褒めてくれました。そうでしょ、そうでしょ! もっと褒めて!


「あぁ、ルルが小さい頃にな、色々改革したんだ。ルル発案でな」


 ん………?


「あー、またやらかして……」

「全く記憶にございません」

「ハハハー! まだルルは小さかったからなー! 覚えてないんだろ!」


 でもね、私は本当に普通の子だったのよ。勿論、前世でもね。一般庶民よ。


「今日は街を出て畑の方を廻ってきたが、明日は反対側だ。取り敢えずザッと一回りするので、もう少し行くと領都から出て街道を回り込んでまた領都に戻る。街道に出たら魔物に注意だ」

「「はい」」


 私の産まれた街。大好きな街。私を自由にさせてくれる街。王都の学園に通っていた頃は、なかなか帰ってこれなかった。

 やっぱり私はこの街がいい。海から吹いてくる風も、畑を通り抜ける風の匂いも、息が楽になる気がする。

 王都にいる時はズッと息苦しかった。いくら都会が便利で魔物も出なくても、あの澱んだ空気がとても苦手だった。


「わふっ?」

「ルル、どうした?」

「お父様、私はやはりこの領地が好きです。王都にいた頃よりズッと自然な自分でいられる気がします。気持ちが自由になります」

「魔物が出てもか? 王都だと魔物は出ないし、安全で便利だろ?」

「お父様、そんな事関係ないですわ。私が産まれ育った街です。何もかも王都とは比べ物になりませんわ」

「そうか、そうか! ルルはこの領地が好きか!」

「はいっ、お父様!」

「ハッハッハ!」

「ルル嬢、学園は王都の?」


 レオン様が聞いてきました。


「ええ、王都の学園に通っていました。全寮制だったので、長いお休み位にしか帰って来れなくて」


 声を潜めてレオン様が続けられます。


「ルル嬢、乙ゲーだと王都にヒロインがいるんだ。で、調べたところ実際に王都にヒロインらしき令嬢がいるんだよ」

「ヒロインですか?」

「ああ。乙ゲーだとルル嬢はこの国の第2王子と婚約していて、学園の卒業パーティーの時に第2王子とヒロインから婚約破棄されざまぁされるんだ。その後、国外追放される。そして、王子とヒロインが婚姻してハッピーエンドだ」

「国外追放ですか。でも私、第2王子殿下とは接点がないわ」


 同じ学園だったから、見た事はあるけれど。それに私、悪役令嬢じゃないしね。大人しく勉学に励んでましたよ。ホントよ。


「それでな、ハッピーエンドで1周クリアした後に出る隠しキャラが俺だな」

「じゃあ、レオン様が登場したら2周目はどうなるの?」


 レアキャラってやつなのかな? 1周クリアした人だけ使える2周目の攻略キャラかしら?


「まぁ、略奪系だな。婚約発表パーティーの時に、俺が第2王子から男爵令嬢を略奪してハッピーエンドだ」


 略奪て……流石、乙ゲーね。なんでもアリだわ。どこがハッピーエンドなのかしら。普通に浮気じゃん。国外追放されてるじゃん、てね。


「じゃあ、レオン様もヒロインに興味あるのかしら?」

「乙ゲーのままの良い子だったらな。だが、そうでもないらしい。いや、いくら良い子だったとしても、ざまあしたりする常識のない子はゴメンだな。それに現実、奪い取るなんて有り得ないだろう?」

「そうですね。相手はこの国の第2王子ですし、レオン様は帝国の第3王子。それこそ戦の火種になりかねないわ」

「だろ? 所詮乙ゲーだ。現実はそうはいかない。まぁ、ぶっちゃけ気にはなったからうちの影に探らせたんだが」


 探らせたのね。めちゃくちゃ興味あるじゃない。これだからリア充は……!


「どうもその第2王子は婚約者がいるのにヒロインとくっついているらしいんだが、ヒロインの良い噂はないんだ」

「悪い噂ばかりと言う事かしら?」

「ああ、そうだ。公爵ならご存知なんじゃないか?」


 お父様そんな事なんにも言ってなかったわ。どんなヒロインなのかしら? ちょっと興味あるわね。


「お父様!」

「ん? どうしたルル」

「お父様は我が国の第2王子殿下の事をご存知なのですか?」

「第2王子の事とは、王子と婚約者の事か?」

「ええ。第2王子の婚約者は、私のクラスメイトだったジュノー・クロノス侯爵令嬢ですよね?」

「ああ、一応な。王都の隣に領地を持つ領主の令嬢だ。しかしな……」

「お父様?」

「ルル、その話は戻ってからだ。もう街道に出るぞ」

「はい、分かりました」


 お父様、何をご存知なんだろう。気になるわ。


 パカパカ速歩程度で街道を行きます。

 街道を森に向かって進み、また領地へ戻ります。


『ルル、前方左側。まだ見えないけど、マップを展開して』


 ズッと私の横を走っていたモモが、念話で話してきました。


『モモ、マップって? どうするの?』

『ステータス画面の右上にボタンがあるわ』

『ステータス……あ、コレかな?』


 あ、出た。この赤いポイント……


『モモ、赤いポイントが魔物なの?』

『そうよ。赤が魔物。ルルは下三角の白いポイントで表示されているでしょう』


 このマップて凄い便利じゃない? まだ、魔物は見えないわね。


「お父様、前方左側です。魔物がいます!」

「何!? 全員気を引き締めろ!!」

「ルル嬢、どうして分かった!?」

「マップで確認できるのよ。ステータス画面の右上にありませんか?」

「ステータス……あ、あった。あー……けど、俺はまだレベルが足りないって……」


 ガンバ、皇子様!


「お父様、サーベルウルフです!!」


 グリーンウルフの下位種です。


「サーベルウルフ! 帝国からこっちに来る時も良く出ました。数頭で群れて突進してくるんですよね!?」

「ああ……ルル! 頭数も分かるか!?」

「待って下さい……10頭います!!」


 魔物の種類も頭数まで分かるじゃない! 超便利!


「サーベルウルフにしては多いな。大抵5〜6頭位だ。レオンは大丈夫か?」

「はい! もちろん私も参加しますよ!!」

「よしっ!! セイバー3名はこの場で馬を守れ! 後は下馬して迎え撃つぞ!」

「「「「「はっ!!」」」」」

「お父様!! 見えました! 来ます!!」

「ルル、皆に強化と防御魔法を!!」

「はいっ!! ブースト! プロテクト!」

「スゲー!! マジ万能だな」

「レオン様! 来ますよ!!」

「おうっ!! レベル上げだ!!」


 この人前世はゲーマーかしら? 一狩りやってたわね。


「セイバー展開!!」

「「「はっ!!」」」


 お父様の指示が飛んだ瞬間、セイバー達はサーベルウルフを迎え撃つ為に展開しました。

 来ました、サーベルウルフ。こっちに焦点合わせてますね。

 私もレベル上げ、やりますよー!


 セイバー達がサーベルウルフ目掛けて突進して行きます。私はその間を抜けてきたサーベルウルフ目掛けて双剣を抜きます!

 首を狙って一振り! ジャンプして横に外れながら、もう一度首に斬り込みます!まず一頭! 一頭のサーベルウルフが私を目掛けて突進して来たので、高くジャンプして真上から双剣を振り下ろし、首の後ろに突き立てて仕留めます! 二頭目!

 気付けばアッと言う間に討伐完了です。


「ルル嬢!スゲーよ!!」


 レオン様が走ってきました。


「レオン様、お怪我はありませんか?」

「あぁ! ルル嬢こそ!」

「ルル! 怪我はないか!?」

「お父様、大丈夫です。サーベルウルフの素材取れますね。無限収納に収納します」

「ああ、頼む。レオンは大丈夫か?」

「はい! 流石です! アッと言う間でしたね!」

「ハハ! サーベルウルフごときで手間取っていたら、セイバーにはなれんさ!」


 この日の討伐はサーベルウルフのみで、領都の北側を一周して帰ってきました。


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