75ー事実発覚
「ケイ殿、義母が何かに関わっているのですか?」
「マーリソン様、順を追って話ます」
あー、ケイったら焦ったい!
「では、続けます。後妻のマリー・モルドレッドですが実は平民の出でした」
「まさか! いや、たしか伯爵家の出だと」
「はい、養女に入られています。サクソン・モルドレッドと婚姻する為にです。どうやって出会ったのか迄は追えませんでしたが、サクソンが婚姻する為にダスピルク伯爵家に養女に入られております。マーリソン様の母上が亡くなられて直ぐの事です。其れ迄は何年も街に家を与え、マーリソン様の義弟であるリングソンにも教育を施しながらサクソンが面倒を見ていた様です。そして、その街にある家ですが、シャーロット・プロセルが母親と住んでいた家の近くでした。マリー・モルドレッドが後妻に入る前から見識はあった様です。そして、マーリソン様の母上様が亡くなられた事故の際に御者をしていた者もシャーロットと関わりがありました」
「一体どう言う事だ?」
「はい、公爵様。シャーロットは住んでいた地域では有名だった様です。シャーロットは悪魔の子だと」
なんですって!? 悪魔の子!?
「シャーロットは子供の頃から、私はヒロインだ、私の為にこの世界はあるのよ等と言う発言で有名だった様で、シャーロットを叱ったり虐めたりした者は必ず事故や自害で亡くなったり行方不明になったそうです。そんな事が重なり、シャーロットの住む地域では悪魔の子と言われていたそうです。御者も事故を起こす前日にシャーロットを平手打ちしていた事が目撃されておりました。それがシャーロットの逆鱗に触れて亡くなったのだろうとその地域の者は噂しておりました。ですので、一緒に事故で亡くなった夫人は巻き込まれたのだろうと。あくまで噂ですが」
「まさか……そんな人を操る様な事を……!?」
「マーリソン様、無いと言い切れますか?」
「いえ……ケイ殿続けて下さい」
「此処までの状況と、サクソンとシャーロットが毎晩同じ寝室で休んでいるのに何も言わなかったと言う証言から、マリーもシャーロットの魅了に掛かっていたのは確実ではないかと思われます。そして1年程前に、サクソンにシャーロットを引き合わせたのがマリーであると、メイドの証言がとれております。そのメイド達は、シャーロットが邸に来る様になってからどんどんサクソンがおかしくなっていったと」
「では、ケイ。今回の事件を引き起こしたのはサクソン・モルドレッドではなく、操っていたのはシャーロット・プロセルだと」
「そう導き出せるかと」
なんて事なの……!
「ケイ、しかしサクソンの後妻は、今は別邸で次男のリングソンと大人しく暮らしていると言っていなかったか?」
「はい。息子のリングソンが第2王子の側近候補だった事とシャーロットがサクソン邸に通っていた事実から、マリーも解呪薬を飲んでおります」
「マリー・モルドレッドの話を聞く必要があるな」
「王家が一応調書を残しておりました。それによると、何故シャーロットを邸に入れたのか、よく分からないと言っていた様です。兎に角あの時はシャーロットを庇わなければならないと思ったと」
「魅了されていたか」
「恐らくそうではないかと」
「そんな! 何の為に!」
「ルルーシュア様、シャーロットが王妃になる為です。若しくは、レオン殿下の妃になる為かと」
「俺!? 俺なのか!?」
「はい。取調べの際に、バッカス王子がダメでも、レオン殿下が必ず迎えに来てくれると言っていたそうです」
「やめてくれよ!」
やっぱり隠しキャラ狙いだった。
「シャーロットが王妃になるには、第1王子のディーユ殿下が邪魔になります。その為にサクソン・モルドレッドを利用したのではないかと」
「じゃあ、何故最初からディーユ殿下を狙わなかったのかしら?」
「ルルーシュア様、シナリオなのだそうです。シャーロットはヒロインだからシナリオ通り第2王子のバッカス殿下と結ばれなければならないそうです」
「頭がおかしいわね」
「公爵夫人、この話をしてくれた王都民も、同じ事を言っておりました」
お母様の仰る通りだわ。頭がおかしいとしか言い様がないわ。
「もう1点。マーリソン様のお母上が何故馬車で街に向かっておられたかです」
「母上が……何か用事でもあったのでは?」
「モルドレッド様、その通りです。お母上は毎月一度は必ず街を訪れていらしたそうです。馬車止めの者と街の者が覚えておりました。向かっていただろう場所が判明致しました」
「ケイ殿、それはどこですか!?」
「マーリソン様、お母上が毎月一度欠かさず訪れていらしたところは、マリーとリングソンが住んでいた家でした」
「……!?」
どう言う事なの!? 意味が分からないわ。
「マーリソン様の義弟リングソンが3、4歳の頃からずっと毎月欠かさず訪問されていたそうです。しかし、その理由迄は掴めませんでした。私の報告は以上で御座います」
「ケイ、ご苦労であった。しっかり食事をしてゆっくりと休んでくれ」
「公爵様、有難うございます」
ケイは一礼すると、レオン様の後ろに付きました。全然訳が分からなくなってきたわ。
「どうして母上があの女の所になど……」
「マーリソン様、考えても分かりませんわ。やはり本人に直接お話を聞いてみないと」
お母様、そうだけど……マーリソン様にとっては複雑よね。
「私は母が事故で亡くなって、義母はそう間を開けずに後妻に入ってきたので……その上私と4歳しか変わらない義弟も一緒だった事もあり、父の事が嫌になり早々に家を出ました。父は母を裏切っていたのだと。ですので、事情は把握しておりません。義弟を連れて義母が家に来たと言う事実が許せなかったのです。その義母の元に母が通っていたなど……知りませんでした。一緒に暮らしていたのに、全く気付きませんでした。母は一体何の為に……」
「マーリソン様、それを確かめに参りましょう」
お母様……。
「マーリソン様が知り得なかった事実があるのでしょう。知らなければ良かったと思う事かも知れませんが、お母様のなさっていた事を知りたいでしょう?」
「公爵夫人、そうですね。母の事が知りたいです」
「ケイ、その滞在されている別邸は何処か分かるのか?」
「はい、一度調べに行っておりますので。ダスピルク伯爵領の別邸に滞在しております」
「とにかく魅了の解呪が最優先だ。少し周り道になるが、王都の帰りに立ち寄ろうか。しかし、サクソン・モルドレッドと婚姻する為にダスピルク伯爵家に養女になったのだろう? 何故その様な者に別邸を使わせているのか?」
「そこまでは調べられておりません。申し訳ありません」
「いや、ケイ。充分だ。しかし引き続きその辺のところを調べてもらえるか?」
「ケイ、頼む」
「公爵様、殿下、畏まりました。では私は先にダスピルク領へ向かいます」
「ああ、頼む」
「ケイ、厨房に寄って食料をしっかりもらって行ってね」
「ルルーシュア様! 有難う御座います。お言葉に甘えさせて頂きます」
と、言ってケイは退室しました。
「あー、あれはかなりティシュトリアの食事を気に入ってるな」
レオン様、それ位は私にも分かるわ。




