71ー一段落?
その日のうちにディアナが魅了を解呪する解呪薬を作成して、アレイ・モルドレッドに飲ませました。念の為、他のならず者達にも飲ませてあります。
そしてお父様が、王都のお爺様へ早馬でお手紙を出されました。今回のクロノス侯爵とジュノー嬢が狙われた事件を有耶無耶にはできません。それに、まだ魅了されたままの人達がいるのです。
そして翌日、マールス・クロノス侯爵に、事の顛末をお話ししました。
「ジュノーが! 大丈夫なのですか!? ジュード殿、お助け頂き感謝致します。なんとお礼を申し上げれば良いか」
「クロノス侯爵、我が息子達は出来る事をしたまで。それよりも、ジュノー嬢付きの侍女が共犯だった事にジュノー嬢はお心を痛めておいでだ。侍女が何故その様な行動に出たのか心当たりはありませんか?」
「ジュノーが小さい頃から付いていた侍女が、婚姻致しまして辞職したのです。その代わりに3ヶ月程前から雇い入れた侍女です。身元もしっかりしておりましたし、真面目に務めてくれておりました。まさか、こんな事をするとは思いもしませんでした」
「クロノス侯爵様、例のパーティーの前に男爵令嬢からシュークリームをぶつけたと言われた事があったのを覚えておられますか?」
お母様がお話になります。
「ああ、婚約破棄の時に映像を出された件ですな」
「そうです。その時に同行していた侍女だそうです。きっとその時に魅了を受けたのでしょう。その時にも、ジュノー様の不注意だと侍女は言っていたそうですわ」
「しかし、魅了を受けた者は王家が解呪したのでは? そう発表がありましたし、侍女は王家から何も言われておりません」
「完全ではなかった様です。第2王子近辺の者しか解呪されなかった様です」
「そんな! なんと適当な! なんと無責任な!!」
本当にその通りだわ。無責任すぎるわ。
「昨夜のうちに拘束した者全てに解呪薬を飲ませてある。王都の父上にも早馬を出しております。数日中には文を持たせた早馬が到着するでしょう。父上に任せておけば大丈夫かと。きっと、怒り心頭で訴えに行ってくれる事でしょう。今回、拘束した者達も王都へ送ります。ジュノー嬢への脅迫紛いの件もこれで収まるでしょう」
「アーデス・ティシュトリア公爵様、心から感謝致します。何度も我が娘をお助け下さり有難うございます」
まだベッドにおられるクロノス侯爵ですが、深く頭を下げられました。
「いや、クロノス侯爵。あの婚約破棄の一件の後、王家がしっかり調査し解呪をしていれば、この様な事件は起きなかったのだ。私も同じ王族の血を引く者として、謝罪致します。大変な思いをされた事、心より申し訳なく思います」
お父様が頭を下げられました。習って、お母様、ラウ兄様、ジュード兄様そして私も頭を下げます。
「おやめください! 公爵殿には感謝こそすれ、謝罪など! どうか、皆様も頭を下げるなど、おやめください」
「有難う御座います。まだ侯爵のお身体は万全ではない。ジュノー嬢とゆっくり静養さなって下さい」
お父様の執務室です。お父様、お母様、ラウ兄様、ジュード兄様と私です。レオン様は私の部屋でピアとルビを見てくれています。と、言うか、いくら婚約者とはいえ帝国の王子に一緒に頭を下げて頂く訳にはいきませんからね。
「さて、あなた。後始末はどうしますか?」
「そうだな。魅了の解呪をもう王家には任せてはおけない。ルルとレオンは鑑定を持っていたな。鑑定で魅了を受けているか否かは分かるのか?」
「はい、お父様分かります。しかし、王都民全てを鑑定する訳にはいきません」
「分かっておる。そこでだ。ユリウスとディアナ、マーリソン殿と相談したのだがな。王都全域で、貴族にも役人にも平民にも全ての民に魅了を解呪する食べ物を配ろうと思う」
「あなた、全域ですか!?」
「父上、そんなどれ程の数になるか!」
「ああ、ラウ。分かっている。しかし、魅了にかかってるか? と聞いても本人は自覚がないだろう? それに無闇に王都民に不安要素を与えるのも良くない。そこでだ。父上の商会の新製品の試食品だと宣伝して、王都全域に配ろうと思う。魅了を解呪する効果を持たせられる最低限でいいんだ。勿論、その後実際にその商品を父上の商会で販売する。元だけでも回収しないとな。慈善事業をしたい訳ではないんだ。で、ルル」
「はい、お父様」
「お前に何が良いか考えて欲しい。老楽男女、誰でも口にしたいと思わせる様な物をだ」
「お父様、分かりました。ユリウス達と相談致します」
「ああ、頼んだ。それから、ラウアース、ジュード。お前達には今回捕縛した者達の取調べと王都への輸送を頼みたい」
「はい、父上」
「ええ、勿論です」
「しかしその前にだ。まあ、もう大体の内容は想像がつくが、取調べをして事の成り行きを明確にしたい。それにまだサクソン・モルドレッドを捕らえていないからな」
「父上、やはり関わっていると思われますか?」
「ラウ、それをハッキリさせたいのだ」
「私は、マーリソン殿が不憫でなりません」
「ルル、しかし仕方のない事だ」
「はい、お父様」
「国外追放を破っているし、事の内容によっては今度こそ極刑になるやも知れん。それにサクソン・モルドレッドも魅了を受けているのだろう。男爵令嬢は毎日、入り浸っていた様だからな」
「そうでしたわね。せめて魅了に掛かっていたのなら、まだ救われますわね」
「お母様……」
「ラウとジュードが取調べを終え次第、王都に向かう。其れ迄にルル、何にするか決めてくれ」
「分かりました」
「では父上、俺達は取調べに向かいます」
「ああ、皆頼んだ」




