60ー夕食
日が傾き始めた頃、ラウ兄様とレオン様が帰ってきました。モモも二人の脇を走って来ます。柔かなお顔を見ると、収穫はあった様です。
「ルル! ただいま!」
レオン様、手を振ってます。まだまだ元気ですね。
「ラウ兄様、レオン様、モモ、お帰りなさい。どうでした?」
「ルル、モモは凄いな!」
レオン様、感心してるのかな? いや、感動かな?
「モモ、どうだった?」
「ええ、かなりマップの使い方には慣れたわ」
「そう」
「ルル、ウルフ系の魔物を討伐してきたぞ」
「ラウ兄様、お疲れ様でした」
「ラウ、レオン戻ったか! 疲れているだろうが、執務室まで来てくれ」
お父様のお声がかかりました。
「ルル、また後で!」
「ルル、隊員達が討伐した魔物を裏に出しているから、受け取っておいてくれ」
「ラウ兄様、分かりました。モモ、一緒に裏に行く?」
「ええ、行くわ」
モモと一緒に裏へ回ると、討伐した魔物が小山の様になってました。
「モモ、凄いじゃない。こんなに魔物が出たの?」
「レオン様の練習にね、グリーンウルフの巣を探させたのよ。そしたら偶々丁度良い位の巣があったの。いると分かっていれば、隊員達は強いから楽勝だったわ」
「そうなのね」
「ルル様、お願いします」
ラウ兄様の従者のリルが声を掛けてきました。
「リル、お帰りなさい。大量ね」
「ええ、モモちゃんのおかげですよ。なんせ痺れさせて行動不能にしてくれますから、狩り放題です!」
あー、モモちゃんのアレね。
「わふっ、皆も強いからよ」
「ハハハ、モモちゃんには敵いませんよ」
喋りながら魔物の山に手を翳して、無限収納に入れる。それを見ていたリルが……
「アッと言う間ですね、ルル様は規格外だな」
「あら、レオン様もでしょう?」
「ハハ、そうでした。しかしレオン殿下は帝国の皇子殿下なのに、気さくで偉ぶったところがなくて気持ちの良い方ですね」
「時々、突っ走るけどね」
「ルル様、よく分かってらっしゃる。今日もモモちゃんに指導されながら真っ先に突っ込んでましたよ」
「もう、レオン様は」
「でも、マジックバッグがなければ、こうは行きませんでした。普通はこんなに持ち帰れませんからね」
「そうね。明日にでも解体に持って行っておくわ。リルもお疲れ様」
「はい、お願いします」
さて、夕食です。今日からマールス侯爵とジュノー様もご一緒です。だからモモちゃん達はリアンカ達と別室で食べてます。其々が伝説級なので、出来れば隠したいとの意向です。でもね、きっと無理だと思うのよ。主にピアがね。
「ルル様、先程は有難うごさいました。私、あの様な浴室は初めてです! とっても気持ち良かったですわ!」
「そう? それは良かったです。少しは疲れがとれましたか?」
「ええ! ずっと湯浴み出来なかったのでサッパリしましたし、お湯に浸かると言うのはとても身体が解れますのね。それにルル様に教えて頂いたドライの魔法はとても便利ですね」
話していると、スープが出てきました。
「公爵、これはスープですか?」
マールス侯爵がオレンジ色のスープを見て驚いてます。
「美味いですぞ」
お父様、食べてないで説明しようよ。
「あなた、そうではないでしょう。マールス侯爵、このスープはかぼちゃのポタージュです。かぼちゃの自然な甘味がとても美味しいですわよ」
「かぼちゃですか。王都では見ない食べ方ですな」
「お父様、かぼちゃのスープ! なんて美味しいのでしょう!」
フフフ。そうでしょ、そうでしょ。美味しいでしょ。でもまだまだ食事は始まったばかりですよ。
旬のキノコをソテーしたソースがかかったボアのステーキに、じゃがいものチーズ焼き、パンが出てきました。
「なんて柔らかいパンなのでしょう!」
「このステーキのソースも素晴らしい!」
「この焼いてある物は何でしょう?」
「ジュノー様、それはじゃがいものチーズ焼きですわ。珍しいものではありませんよ」
「ルル様、そうなのですか? 王都では見た事もありません。私、これ大好きです」
そして、デザートです。今日は、アップルプティングですね。紅茶と一緒に頂きます。
「なんて素晴らしいんでしょう!」
ジュノー様はデザートの虜ですね。イワカムやったね!
「マールス侯爵、ジュノー様。サロンに移動しませんか?」
お母様のお声掛けで、サロンへ移動しました。其々、思い思いのソファーに座ります。レオン様が隣にきました。メイドが果物と紅茶を出します。
「ルル、今日はイワカム張り切ってるな」
レオン様が話しかけてきました。
「そうね、私も同じ事を思ったわ」
出された果物は桃のコンポートゼリーでした。しかも桃が薔薇の花びらの様にカットされ飾りつけてあります。
「でもイワカム、腕をあげたわね」
「確かに。美味っ! 俺、これ食べたら一旦ピアにお水出しに行ってくるよ」
「そうね」
「絶対、ピーピー言ってるぞ」
「フフ、そうかも」
「ルル。ジュノー嬢、コンポートゼリーに感動してないか?」
見てみると、ジュノー様の目がウルウルしてます。
「そんなに?」
「そんなにだろ。ちょっと行ってくるわ」
レオン様が席を立ちます。
「申し訳ありません。少し、失礼します」
「レオン、どうした?」
「ラウ、ああ水をな」
「ああ、成る程」
レオン様がサロンを出ようとした時です。廊下からバタバタと音が聞こえ……
「ダメです! 戻りましょう!」
この声は、リアンカが叫んでいるわね。
「なんだ?」
レオン様がドアを開けたと同時にとびついてきました。
「ピピー!!」
そうです。ピアです。後ろにモモに乗ったルビもいます。
「ブホッ!?」
ピアがレオン様の顔面に抱きつきました。
「あー……ハハハ」
「ブハハッ!」
ラウ兄様とジュード兄様笑ってる場合じゃないわ。
「ピア! コラッ! 離れろ!」
「ピー! ピピピュー!!」
もう、なんだかなぁ……。




