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転生公爵令嬢の婚約者は転生皇子様  作者: 撫羽
第ニ章

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56ールルの秘密

 そう、私は自信がなくてひるんでしまったのよ。


「ルル、それは違うな」

「レオン様?」

「普通の令嬢てなんだ? いつも綺麗なドレスを着て、お茶会に夜会。そうしている事が普通と言うなら確かにルルは普通じゃないな」

「ですから……」

「ルル、違うだろ。そこを間違えてはいけない。ルルはこの魔物が多い領地に生まれ育った。そしてルルも領地を守りたいと思っている。その為の力だ。それは自然な事だろう? そして、俺はそんなルルが良いんだ。領地内を行けば、領民達から声が掛かるルルが自慢なんだよ。そんなルルだから婚姻したいと思うんだ。俺もルルの隣で一緒にこの地を守らせてくれないか?」

「レオン様……」

「殿下、有難うございます。殿下のお気持ち、心より有り難く思いますわ。そう思って下さるのなら、ルルと一緒になって突っ走ってはいけませんわね」

「ハイ、気をつけます……」

「ルル、あなたが帝国へ嫁ぐのではないのですよ。ティシュトリア家に殿下が来て下さるのです。その殿下がいいと言って下さってるのです」


 ――ガチャ……

 静かに部屋のドアが開いてモモが入ってきました。


「わふっ」


 モモ……。モモが私の足元まで来てくれます。


『ルル、大丈夫よ。気後れしてしまったのね。勇気を出して素直になりなさい。今は独りぼっちだった前世ではないのよ。今の自分を信じなさい』

「わふ……」

「モモ、有難う」


 モモを撫でます。


「レオン殿下、宜しくお願い致します」

「ルル!」

「でも私は変わりませんよ。レオン様より強いですよ。構いませんか?」

「ああ、ああ! 頼んないかも知れないが、俺はルルの側を死ぬまで離れないよ。モモと一緒にズッとルルの側にいるよ」

「まあ、殿下。母親の希望としては、殿下にルルの抑止力になって頂きたいわ」

「あー、努力します」

「良かったわ。実はね、第1王子のディーユ殿下からもお話が来ていたのよ。まだ殿下との婚約を発表していなかったからでしょうけど。もし、レオン殿下との婚約が正式なものでないのなら、ディーユ殿下にもチャンスが欲しいと言ってこられたのよ。それもあって、再度確認したのよ」

「まさか、お母様本当ですか?」

「そうなのよ。本当にどの面下げて言ってるんだか」


 お母様、怖い……!


「では、レオン殿下。早急に殿下のお父上に連絡を取りますので、正式な婚約発表を致しましょう。構いませんね?」

「勿論です。私も第1王子に渡す気はありません」

「まあ、レオン殿下。頼もしいですわ。ホホホ」


 やだわ、お母様の目が怖い……!

 お母様がサロンを出て行かれました。レオン様とモモだけです。


「ルル、少しお話しておく方がいいわ」

「モモ、何だ? ルルの事か?」

「ええ。ルルの部屋に行きましょう」


 モモちゃん……。


『ルル、大丈夫よ』


 ラビとピアも大人しく座ってこちらを見つめています。この子達、何か感じるのかしら?


「モモ、話せる事だけでいい。無理はしないでくれ。俺はとっくに覚悟は出来ているからな」


 そう言うレオン様にモモが尋ねます。


「そうね、レオン様は前世の事をどれ位覚えているのかしら?」

「前世か? 俺は……自分が死ぬ直前まで、意識が途切れるまで覚えている。鮮明にではないが、自分の名前、家族や友人、どんな風に生活していたか、だいたい覚えてる」

「レオン様の前世の最後はどうだったのかしら?」

「俺は……ごく普通のサラリーマンの家で両親と姉と兄の5人家族だった。俺は大学生で、その日はバイト先の飲み会があって帰りが遅くなったんだ。コンビニに寄りたかったからいつもとは違う道で帰ったんだ。幹線道路沿いのコンビニに入る直前で、凄い勢いで突っ込んできた車に轢かれた。アッと言う間だったよ。前にも言ったけど、5歳の時に前世を思い出したんだ。前世の姉がハマっていた乙女ゲームを良く見せられていたんだ。そのゲームに出てくる悪役令嬢がルルだ。そして2週目に出てくる、ヒロインを王国の王子から略奪する隠しキャラが俺だ。何で俺が隠しキャラなんだ? て、思ったよ。略奪なんてできるかよ、てな。それで冒険者になると言って廃嫡を希望したんだ」

「ルルはね、そう言う前世の事を全く覚えてないのよ」

「それは、ルルのお母上から聞いた事がある。モモと離れるのが死ぬほど嫌だった事だけハッキリ覚えていると」

「今から話す事は、ルルの今の家族も知らない事なの」

「分かった」

「モモ、私が話すわ」

「ルル、大丈夫?」

「ええ、私自身の事だから」


 そして私は、前世地球に生まれるハズではなかった事。魂が地球に合わなかったせいで、病気がちで10代で孤独死した事。前世でもモモが一緒だった事以外は、家族の事も何も覚えていない事を話した。


「ルルが、同じ転生者でもレオン様と違う所は、前世を思い出した時にこの世界の神に呼ばれて会っているのよ。その時に神から直接状況を聞いているの」

「神と……!? 神て、いるんだ」

「いらっしゃるわよ。ルル、ステータスを見て」

「ステータス? 私の?」

「ええ、ここからはルルにも話してなかった事なの」

「ステータス。モモ、この称号……」

「ルルの記憶と気持ちが落ち着くまで、神が隠蔽していた称号よ。【神の愛し子】」

「神の愛し子……」

「ルル、そうなのよ。レオン様の転生は、前世の死の時点で何故か此方の世界と繋がってしまって、魂が此方の世界に渡ってきた事による転生ね。そこに神の意思はないの。でも以前話した様に、界を渡る事で一度魂が魔素に変換されるの。その時に、特別な力やスキルを得るわ。同じ転生でもルルは最初から違うのよ。この世界の神によって呼び戻され、この世界に生まれ直した魂なの。前世では地球に生まれるハズのなかった魂だったから、何もかも恵まれなかった。健康にも身体能力にも、両親や周りの人からの愛情にもね。こちらの神の眷属の私が、ルルのそばに送られたのもそうしないとルルの心が壊れてしまいそうだったから。そんな恵まれない生を生きてきた魂への神の慈愛、それが【神の愛し子】なのよ」


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