51ー鬼強い
「バロール、実は色々鉱石を採取してきているんだ。先ずは家族と俺のセイバーの分を作ってもらいたいんだ」
「鉱石ですか? 見せてもらえますか?」
「ああ、ルル少し出してくれ。少しずつ全種類だ」
「はい、ジュード兄様」
私は少しずつ、鉄鉱石、銀鉱石、ミスリル鉱石、そして魔鉱石を出した。
「ちょっ! コレ! ジュード坊ちゃん銀鉱石、ミスリル!」
「どうだ? 作りがいがあるだろう?」
「いや、なんて言うか。凄いですね。こっちの見た事ない鉱石はなんです?」
「ああ、それな。魔鉱石だ」
「……ッ! 坊ちゃん!」
「バロールどうだ? 先ずは家族の武器から頼めるか?」
「ジュード坊ちゃん!……なんと!! 生きててよかった……!」
バロールがおかしい……うちはおかしいのが多いわね。いつも淡々と武器を作ってるのに。この反応は珍しいわ。
「折角なんですが、ジュード坊ちゃん、ルル嬢様。私に魔鉱石は扱えないです」
あら、シュンとしてしまったわ。
「あー、それは分かっている。いいんだ。ミスリルで作ってほしい」
「そうですか、ミスリルならなんとか。しかし、ミスリルでも滅多にお目に掛からない鉱石なんで時間を貰いますが、構いませんか?」
「ああ、急いでないから構わないぞ」
「ご家族の分は分かりました。セイバーの分もミスリルですか?」
「ああ、もちろんだ」
「ジュード坊ちゃん、それではミスリルが足りませんよ」
「ああ、どれ位必要かな? ルル、頼む」
「はい、ジュード兄様」
私はミスリルをドカンと出した。
「嬢ちゃん! なんですかこの量は!? て言うか、今どこから出しました!?」
あら、バロールは無限収納の話を知らなかったかしら。
「はぁー、嬢様は本当に規格外でらっしゃる」
バロールに無限収納を説明した感想です。
「バロール、まだ驚くのは早いな」
「ジュード坊ちゃん何ですか? これ以上まだあるんですか?」
「ルルの婚約者も持ってるんだよ」
「何がです?」
「無限収納を持ってるんだよ。レオン」
「ああ、ルルの婚約者で帝国第3皇子のレオンだ」
「帝国……の、皇子……! 持ってる!?」
あー、フリーズしちゃった。
「許容範囲超えましたかね?」
ノトスが変に冷静に分析してるわ。
「もう……ルル嬢様ですからね……そうだ、ルル嬢様だし……」
あれ? 私だからって無理矢理納得しようとしてない?
「まぁ、私は武器を作るだけなんで。そう、作ればいいんで……」
「バロール、大丈夫か?」
ジュード兄様が声をかけます。
「ええ、まあなんとか」
「バロール、このレオンの武器も頼みたいんだ」
「はい、レオン殿下はどの様な武器をお使いで? いや、帝国皇子殿下の武器を私が作ってもいいのか?」
まだ、少し混乱してるかな?
「俺は片手剣なんだ。でも予備の剣も欲しい」
「レオン様、予備って?」
なんでレオン様は予備の剣まで作ろうとしてるの? しかもミスリルで。
「ああ、主に片手剣を使うが腰に双剣も差していたい」
「レオン様、双剣も使うんですか?」
「いや、使った事ないな」
「……ん?」
「ルルが双剣で戦ってるのを見て俺も欲しくなったんだよ! カッコいいだろ!」
「「…………」」
思わずジュード兄様と呆れてしまったわ。
「レオン。使った事がないなら、使えるか確認してからでもいいと思うぞ」
「そうか?」
「ああ、双剣は利き手じゃない方の手が使い物にならないと無駄なんだよ。ルルは器用に使っているがな。そう簡単でもないんだ。怪我するぞ」
「じゃあ、ルル。手合わせしてくれ」
はぁ!? いいけど……いきなり? ジュード兄様お願い。
「いきなり手合わせより、一度双剣を振ってみたらどうだ? 邸にあるからさ」
「そうか、じゃあそうする」
「それからまたお知らせ下さい。取り敢えず、ご家族の武器から作り初めますよ」
「ああ、そうしてくれ。何かあったらノトスに言ってくれ」
「分かりました」
ねえ、モモちゃん。
「わふっ?」
『バロールは鍛治のスキルは持ってないのかしら?』
「わう『まだ無理ね、ミスリルにも慣れてないから』」
『そっかぁ……』
「わふ『でも今回の依頼でミスリルを扱える様になったら、もしかするかもね』」
うーん、成る程……。
「なぁルル。双剣て、そんな難しいのか?」
バロールの作業場を出て、お邸に向かってます。
「レオン様、難しいというか……私は小さい頃に教えてもらったから。どうだろ?」
「誰に教わったんだ?」
「双剣は、お母様とラウ兄様ジュード兄様ね」
「公爵夫人が!?」
「ええ、お母様鬼強いわよ」
「マジかぁー! 帝国の公爵夫人の家族もマジ強いんだよ。宰相なんて俺は未だに勝った事ないからな」
「お母様のお父上?」
「そうだな。宰相歳はいったいいくつなんだ? て話だよ」
「じゃあ、レオン様はお母様のお父上に教わったの?」
「いや、俺は公爵夫人の兄上だ」
「お兄様がいらっしゃるのも知らなかった」
「マジ強いぞ。鬼強いぞ。俺は全然無理だ」
「何が?」
「手を抜いてもらっても、全く勝てる気がしない。公爵夫人の家族に勝てるやつなんて、帝国にいるのかな?」
「そんなに!?」
「ああ、そんなにだ。信じられないだろ?マジなんだよ。大マジだ」
マジですか……! お母様、強い筈だわ。
邸に入ったとたん、彼の方が走って来られました。
「ルルーシュアさまー! お探ししましたー!!」
はい、このテンションは彼です。走るの速いわね。
「マーリソン様、どうしたの?」
「ユリウス殿と相談致しまして、ピアちゃんも紋章入りの首輪をする方が良いかと」
「ああ、そうね」
モモとルビは、ティシュトリア家の紋章を入れた首輪をしています。ユリウスが、結界と盗難防止の魔法を付与してくれてます。それに、前回王都へ行った時に作った魔道具も付けてます。
「じゃあ、モモちゃん、ユリウスの研究室に行くわ」
「わふ」
「俺も行くぞ」
「ピピュー!」
「ピアはユリウス初めてね。私の魔法の師匠よ」
「ピー」
「ジュード兄様、ユリウスの研究室に行ってきます」
「そうか。ルル、ついでに収納して貰っている魔物をルフタの解体所まで持って行ってくれるか?」
「はい、ジュード兄様。分かりましたわ」
ジュード兄様と別れて、ユリウスの研究室に向かいます。
「ルル様……こちらが例の?」
ユリウスの研究室に来ています。ユリウス、ピアを見てます。ユリウスの冷静な対応が嬉しいわ。
「そうよ、ドラゴンのピアよ。宜しくね」
「ピー!」
ピアは片手を上げてます。
「はい、宜しく。お利口さんですね。ご挨拶してくれているんですか? まだ小さいのにちゃんと内容が理解できるんですね。ピアちゃんは……湖龍ですか?」
「ユリウスよく分かるわね」
なんで分かるの? ユリウス何でも知ってるのね。




