33ーシュークリーム
「んー、婚約破棄の理由てなんだろ?」
レオン様とモモやルビと一緒にお邸の裏庭を散歩中です。モモとルビはお邸から出られないので、せめて裏庭の散歩位はと出てきました。私達について歩くモモの周りを、フワフワとルビが飛んで? 浮いて? います。
「ねえ、レオン様。乙ゲーでは婚約破棄の理由は何だったのですか?」
「あぁ、ド定番だよ。ルルが学園で男爵令嬢を虐めたとか、暴力を振るったとかだな」
「それは……今はもう使えないわよね」
「どうしてだ?」
「だって学園は卒業したもの」
「学園でなくても、お茶会とかあるだろ? 実際、この前のお茶会では一緒だったんだろ?」
「あれは態々呼んで頂いたのよ」
「男爵令嬢をか?」
「そうよ、確認する為にね。彼女、色んなところで男性とトラブル起こしてるらしくて誰もお茶会に呼ばなくなったそうよ」
「ひでーな。前世で言うとビッチてやつか」
「第2王子も魅了がなければ、関わってないかもね。いや、どうだろう?」
「えぇー、この国の第2王子てそんなバカなのか? 帝国だったら即廃嫡だぞ」
「そうなの?」
「あぁ、皇族たるもの国民の手本になれ! だからな。俺も第3皇子なのに、小さい頃からビシバシ教育されたしな」
「手本ね……教育ね……」
「なんだよ、その目は」
「なんでもありませーん」
「ルルは何してても、可愛いな!」
……お兄様達のシスコンが移ったかしら? いや、お父様かしら?
「本当だよ。着飾ったルルをエスコートするのが楽しみだ」
「そう言えば、レオン様は何着るんですか?」
「俺か? 俺は一応、帝国皇子の正装をするぞ」
「まぁ、楽しみー!」
「……」
何、その目は? 疑ってるわね。本当なんだけどな。偶にはかっこいい皇子様のレオン様見たいわよ。偶には。
「ルルさまー! レオン殿下! エレイン様がお越しですー!」
どうしたのかしら? リアンカが叫びながら走っているわ!
急いでお邸に戻ります。モモとルビはリアンカに任せました。
「ルル様! 突然申し訳ありません。やられましたわ!!」
「エレイン様、どうしたの!?」
「今日、ジュノーと街に出ていたのですが……」
なんでも、エレイン様とジュノー様は今日、王都で評判のお店に行ったらしい。そのお店は伯父様の商会が経営しているお店なんだけど。こちらへ来て直ぐに、伯父様から言われてシュークリームをお店の料理人に伝授したのよ。それを店に出した途端、大好評だったらしくて毎日行列が出来ているらしいわ。シュークリムル、元いシュークリーム。
「購入してお店を出た所で、例の男爵令嬢がぶつかってきたのです。私達の周りには侍女達もおりましたのに、何処からかぶつかってきましたの。それでジュノーが持っていたシュークリームを落としてしまって、その時に令嬢のお洋服についてしまって! 令嬢からぶつかってきたのに、周りで見ていた人達も、ジュノーがわざとぶつかったと言い出して騒ぎになってしまいましたの!」
「なんですって!? ブレスは着けてたのですよね?」
「勿論です!」
「ルル、令嬢達がレジストできても、周りの都民は無抵抗だ」
「あ……色はどうなってますか? ブレスレットの色です」
エレイン様とジュノー様のブレスレットを確認すると真っ黒でした。
「やられたな」
「ジュノーが、第2王子と仲の良い男爵令嬢を嫉妬してわざとやったんだって! 大声で騒いで泣き出してしまって。もう、ジュノーが何も言えなくて、泣いてしまって……侍女達まで、ジュノーが気をつけないからだとか言い出してしまって……」
ジュノー様の侍女にまでまだ魔道具は渡してないもの、魅了に掛かってしまったのね。
「レオン様、伯父様の商会に行きましょう!」
「おぅ!」
「エレイン様は帰っていて下さいな。気をつけて下さいね! リアンカ、エレイン様達に馬車をお願い!」
「はいっ! ルル様! ルル様も馬車を用意しますので、お待ち下さい! 走って行かないで下さい!」
やだ、リアンカ。もう走る気でいたじゃない。
伯父様の商会までダッシュですよ! 馬車だけど。
「伯父様!」
「ルルか。あぁ店の者から聞いた。ジュノー嬢の事だな? 店の前で騒ぎになっていたらしい」
「はい、現場を見ていた人達を探せませんか?」
「そう言うと思って、確認してある。その時に見ていた店の者も分かっているよ。で、どうするんだ? 魅了をかけられてるんだな」
「叔父様、そうです。エレイン達のブレスの石も、色が変わっていました。伯父様、いつでも証言が取れるように準備しておいて下さい! それだけ確認したかったので、戻ります!」
「あぁ、ルルも気をつけるんだよ! ルル! 次からはルル自身が動くんじゃなくて、うちの侍従に任せなさい! レオン殿下、頼みます!」
「任せて下さい!」
「はぁ……走って行ったよ。ルルはもう……令嬢なのに。アーデスに似たのかな?」
また速攻で馬車へと戻ります。
「ルル、どうするんだ?」
「まず、ディアナに会わないと。それから本格的にレコーダーの作成ね」
「それしかないか」
とにかく、ディアナの元へ急ぎます。
「ディアナ!」
「まぁ、ルル様。どうされました?」
「魅了の解呪薬はできた?」
「それが煮詰まってしまって。あと一歩だと思うのですが。実際に魅了を使える人間がいないので、効果を確かめようにも……」
あー、そっかぁ。私は鑑定できるけど。だったら……
「だったらどう解呪するつもりだったの?」
「万能薬擬きですよ」
「「万能薬!?」」
「万能薬なんて見た事ないわよ?」
「ええ。めったに使いませんからね。魅了も一種のステータス異常ですから。麻痺や痺れは無視して魅了に特化した物を作れないかと」
「出来ているモノを見せてちょうだい。鑑定してみるわ」
「わふぅ……ルル、どうしたの?」
「モモ、魅了を解く解呪薬を作りたいの」
「そんなの簡単じゃない」
「「「えっ!!」」」
「ルル、私これでも神の眷属よ」
そうだった。前世から一緒だからつい忘れてしまうけど、モモは博識だったんだ。
「ルル様、モモちゃん、コレ作ってみた解呪薬なんだけど」
「鑑定……」
「これはダメだな。解呪までいかないな」
「レオン様、そうね」
「ルル、こっちは私に任せてちょうだい。半分、錬金術みたいなもんだからコツを掴むまで手間が掛かるけど、今日中には完成させるわ」
「モモじゃあ、お願いね」
さ、次はユリウスとマーリソン様ね。
「マーリソン様、ユリウス、音声と映像を保存できる魔道具を作るわよ!」
「「うぐっ……はいぃ?」」
あ……二人でシュークリーム食べてたわね。




