3ー前世の告白
そして私はゆっくりと話し出した。
ロックバレットを放った直後に前世を思い出した事。その前世は、この世界ではない国に生まれて、その世界の環境に魂が合わなくて病弱で10代で一人きりで死んでしまった事。
モモは前世からズッと一緒にいて、私が前世を思い出した事でモモの能力が解放され本来のフェンリルの姿に戻った事。
私も、何らかの能力が解放されているだろう事。
「まぁ、ルルだし」
あら? ジュード兄様、そんな反応?
「そうだな、ルルだからな」
あらら? ラウ兄様まで?
「そうね、ルルは小さい時から変わった事を言う子だったわね」
あららら? お母様まで?
「ああ、なんであろうとルルは私の大切な可愛い娘だ!」
お父様! 考える事を放棄しているわ!
「ルルは覚えていないかも知れないけど、小さい頃から色々やらかしているんだよ」
ラウ兄様、やらかしているって何よ?
「そうそう。色々付き合わされたけど、普通じゃないよね」
ジュード兄様、普通じゃないって何なの!?
「まだ小さいから、何を言いたいのか理解できない事も沢山あったの。それでもなんとかルルが言う事を考察して言う通りにしてみて、領地の発展に繋がった事が幾つもあったのよ。あの知識はどこからくるのか不思議だったけど、きっと前世の記憶だったのね。お父様の仰った様に、前世の記憶があってもルルには変わりないわ。私達の大切な娘なのよ」
お母様が私の手を握りながら、優しい目で見つめています。
「思い出したと言っても……前世の家族やどんな生活をしていたのか、具体的な事は何も覚えてないんです。ただ、モモは私の心が壊れない様に、この世界の神様(自称)が遣わして下さったらしくて。そう言われてみれば、モモは私の唯一の友達であり家族で……死ぬ前に、モモと離れるのが嫌だと思った事を思い出したんです」
「フェンリルの中でも、シルバーフェンリルは神様の眷属だと言われているからね。だからあの小さいモモが、突然シルバーフェンリルになって驚いたよ」
ラウ兄様。シルバーフェンリルて神様の眷属なんだ。そうなの?
そう言えば、ショタ神様がそんな事を言ってたなぁ。
「わふっ『そうなの。でも私はルルとズッと一緒にいるの。神様が許してくれたのよ』」
うん。モモ、嬉しいわ。一緒にいてね。
「さぁ、まだルルは眼が覚めたばかりよ。もう少し休みなさい。ほら、貴方達も行きますよ。ルル、少し食べられそうかしら? 何か軽いものを用意してもらうわね」
「はい、お母様」
こうして、私が前世を思い出した話は案外あっさりと家族に受け入れてもらえた。
正直、ほっとした……
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ルルーシュアの部屋の外。
話を聞いた家族は……
「あなた、ルルーシュアの話ですが……」
「ああ、分かっている。家族以外には話してはいけない。お前達も分かるな」
「「はい」」
「それにしても……モモを遣わさないと心が壊れてしまうなんて……」
「ああ、いったいどんな生活をしていたんだ。家族は何をしていたんだ。いや、だから家族の事も覚えていないのか? 1人っきりで死んだなど……」
「父上、母上。俺達は忘れ様がない位、ルルを大切にしましょう」
「兄貴の言う通りです。ルルは俺達の可愛い大切な妹です」
「もちろんよ。絶対に一人になんてさせないわ」
「当たり前だ! ルルーシュアは私の可愛い娘だ!!」
父よ。やはり脳筋だ。
おはようございます!
MP使い過ぎで倒れていた、ルルーシュアです。
結局昨日は、あれからズッと寝てしまった様で、腹ペコで眼が覚めました。
お風呂も入りたい。てか、この世界てお風呂あったっけ?
前世を思い出してから今世の今までの記憶がまだ曖昧で。えっと朝はいつもどうしてたっけ?
「おはようございます、ルル様。お身体は大丈夫ですか?」
えっとこの子は……ブラウンの髪にブルーの瞳、背中まである長い髪を引っ詰めてスレンダーな……。
私の侍女で2歳年上のリアンカね。
私が生まれた時には、もう既に家族で仕えてくれていたから、お姉さんの様な感じよね。うん、覚えているわ。
「大丈夫よ、リアンカ。昨日食べてないからお腹が空いちゃって」
「じゃあ、さっさとお着替えしてお食事にしましょう。ルル様、モモちゃんズッと側についていましたよ。奥様から聞きました。本当にフェンリルだったんですね」
「くぅーん。『ルル起きないから心配したわ』」
「モモ、有難う。リアンカ、信じられないかも知れないけど、この子は本当にモモなの。昨日魔物と戦ってる最中に能力が解放されてフェンリルに戻ったの」
「そんな事があるんですね」
「あるのよ?」
「なんで「?」ですか? でもモモちゃんなら平気です。モモちゃんはお利口さんですから。さ、ルル様、お着替えしましょう。先にお風呂に入られますか?」
「お風呂入りたいわ!」
「じゃ、用意しますね」
良かった。お風呂あるんだ。
お母様がクリーンの魔法を掛けてくれていたみたいだけど、やっぱり身体洗いたいのよ。お湯にゆっくり浸かりたいのよ。
「モモも一緒に入る?」
「わふっ!『うん、入るわ!』」
私の部屋にはお風呂がついています。
うちは、家族の部屋其々にお風呂があります。勿論、客間にもありますよ。
お風呂が自由に使えるのは素敵! 前世でも、ゆっくりお風呂に入った事がない気がするわ。
「リアンカ、大丈夫よ。私モモと入るから」
「ルル様、何を仰ってるんですか? しっかり洗わせて頂きますよ」
わっさわっさ、リアンカに洗われてるモモです。
モモの前に私もガッツリ洗われました。かなり恥ずかしい。前世を思い出してから抵抗あるんだけど、リアンカは有無を言わせません。
モモも気の所為か一回り小さく見えちゃうわ。
「くうぅーん……」
「モモちゃん、綺麗にしましょうねー!」
リアンカったら容赦ないわ。バッシャバシャお湯をかけています。
「さ、OKです。モモちゃんもお湯に入る?」
「わふっ」
――バシャーン!
「モモー!」
飛び込んだらダメじゃない!
水飛沫が飛びまくってしまったわ。
モモは私以外と喋らないのかなぁ?
もしかして私だけが理解できるのかな?
『そんな事ないわよ。喋っていいなら喋るわよ』
そっか、そのうちお父様とお母様に相談しよう。
「ルル様、そろそろ上がって下さい」
「はーい」
「拭きますねー」
「リアンカ、自分でできるわ」
んー、そっかぁー。人に拭かれるのね……。
元庶民には慣れないわ。面倒ね。こーゆー時、ラノベとかだと魔法で便利なのにね。なんだっけなぁ、えっと……そうだ!
「ドライ……」
シュルン! と水気がなくなり髪までサラサラに乾きました。
「え!? ルル様! 今、何しました!?」
「えっと、魔法をね少々。テヘ!」
「えぇー! 教えて下さい! なんて便利なんですか!」
この日からティシュトリア家では、ドライの魔法が使われるようになりました。
あっという間に、領民達にも広がったそうですよ。エヘッ!
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