22ー到着
朝起きたら、もうケイはいませんでした。でも、しっかり朝ごはんは食べて行ったみたいです。ユリウスがケイにもマジックバッグと諸々のアイテムを渡してくれていました。ケイはマジックバッグに食べ物をガッツリ入れて行ったそうです。気に入ってくれたのね。
さて私達は、無事に王都のお祖父様のお邸に到着しました。
前王弟殿下のお邸なので、王都の貴族街の中でも一番お城に近いエリアにあります。お邸の前庭は、数台の馬車が余裕で停められる広さになっていて立派な庭園もあります。裏側には厩や、兵舎に使用人棟もあり、小さいですが畑もあります。
正面玄関を入ると広いエントランスホールがあって、何人もの使用人が出迎え私達の荷物もテキパキと運び込まれています。
「皆、長旅ご苦労だった。さ、サロンへ。美味しいお茶を入れさせよう」
このお方、私のお祖父様で前王弟殿下。モーガン・ オーベロン殿下です。お父様と同じ銀糸色の髪に瑠璃色の瞳。今は引退なさって、家督もお父様の兄上であるモルゴース・ オーベロン公爵に譲られています。
お祖父様や伯父様も以前は王城で役職を任されていたそうですが、お二人共商才がお有りだった様で早々にご辞退されました。主に、うちの領地で生産した農作物から魔道具まで幅広く扱う商会を立ち上げられた他、スイーツのお店等手広く事業をされています。
この国では、代々王の兄弟の子供の誰かが王国の辺境を守る領主になる事と決まっています。辺境はそれだけ大事な所なんですね。
そして、お父様の兄弟は伯父様と二人。どちらかが、辺境の地であるティシュトリア領を継がなければならなかった。お父様は元々政治に関わるよりも、身体を動かす方が性に合っていたらしく、前ティシュトリア公爵に後継がいなかった事もあって養子に入りティシュトリア領を継ぐ事になったそうです。
「父上、兄上、ご無沙汰しております」
「アーデスよく来た。此度は面倒に巻き込む事になってしまったな」
「アーデス堅苦しい挨拶はいいよ。いつもティシュトリア領のもので儲けさせてもらってるよ」
「父上も兄上も息災そうでなによりです」
お父様のお兄様、モルゴース・ オーベロン公爵。ブロンドの髪に青緑の瞳。若かったら王子様て感じです。お父様と違ってなんかキラキラしてるのよ。今でもイケオジです。
「お義父様、お義兄様ご無沙汰しております。此度はお世話になります」
「お祖父様、伯父様、お久しぶりです」
「二人共よく着た。ルルーシュア学園卒業以来だな」
「はい、暫くお世話になります」
「お祖父様、伯父上、ご無沙汰しております」
「ご無沙汰しております」
「おお、ラウアースにジュードか。何年ぶりだ?」
「ルルの入学式以来ですね」
そうだった。学園の入学式に両親と二人のお兄様、そしてお祖父様お祖母様伯父様まで、家族総出で来て下さってちょっと恥ずかしかったのを思い出したわ。
「そんなになるか。いや、それよりその……ルル、それは……?」
「お祖父様、フェンリルのモモとカーバンクルのルビです」
「モモです。私がまだ小さい頃にお会いした事がありますね」
「ルビなの」
「「おおー!」」
「ルル、話せるのか!?」
「伯父様、そうなんです。モモもルビも話せますよ。ルルは以前トイプードルだった頃にお会いしてますわ」
「何!? あの小さいトイプードルか!? ルルの側を離れずチョロチョロしていた、あの!?」
「はい。お祖父様、あの小さい」
フワモコの……
「アーデスよ、長生きしてみるもんだな! フェンリルだけでなく、カーバンクルにまで会う事が出来るとは。しかもあの小さかったモモがフェンリルか! 私の腹の上で昼寝をしていた、あのちっこいモモか!」
え!? モモちゃんそんな事していたの?
「わふ……」
「はは、父上。ルルですから」
「それもそうだな。ハハハ!」
あら、聞きづてならないわ。
お祖父様はお父様がそのまま年をとった感じの方です。豪快なイメージがありますが、お城でお仕事をされていた頃は王をも黙らす強者だったそうです。
伯父様は、お父様を一回り細くした感じです。柔らかい雰囲気の方ですが、有無を言わさない曲者です。目が怖いのよ、目が。
「お初にお目にかかります。帝国第3皇子レオン・ド・ペンドラゴンです。此度はお世話になります」
「ルルーシュアの婚約者殿か。一人で帝国から来られたとか。肝が据わったお方だ。よく来られた。ルルが世話になりますな」
「さあ、皆さん。座って下さいな。お茶をどうぞ」
「お祖母様、お久しぶりです」
お祖母様、ネヴィラ・ オーベロン。金髪にブルーの瞳の王道貴族の御令嬢て感じの方です。
「ルルが領地に帰っちゃったから、全然会えなくなって寂しいわ」
「お義母様、暫くお世話になりますので、ルルと社交会に出ましょう」
「まあ、それは張り切らなくちゃね」
えぇー……
「ククク……嫌そうだな?」
「レオン様」
「ルルーシュア嬢をエスコートさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「まあ、勿論よ。ルル素敵ね」
あぁ……嫌だ嫌だ。
「テレス、ルルーシュア早速だけどね、3日後に開かれるお茶会に例の男爵令嬢も来るそうなのよ」
「まあ、それは必ず出席しないといけませんわね」
「そうでしょう? 私のお友達が主催のお茶会なのよ。それで無理を言って男爵令嬢も招待してもらったのよ」
「流石、お義母様、お顔が広いですわね」
「さ、私達は別室で打ち合わせをしましょう」
「ええ、ええ。そうですわね」
ええー、いきなり? 私も紅茶頂いてユックリしたいわぁ。
嘘だ……お母様もお祖母様も大嘘つきだ! 打ち合わせじゃないじゃん。ドレス選びたいだけじゃん。
私は取っ替え引っ替えドレスを試着させられてます。
「ああ、時間がないからオーダーできないのが残念だわ」
「お義母様、仕方ありませんわ。でもこの品質なら問題ありませんわ」
「そうね、でも可能な限り手を入れてもらいましょう」
「そうですわね。お義母様、ルルはやはりこちらの色の方がお顔も映えるかしら?」
「そうね、でもこちらのデザインも捨てがたいわ。全体に刺繍も入れてもらいましょうね」
「まあ! 素敵ですわね。迷いますわねぇ」
ウフフ……オホホ……。
あー、はい。もうお好きにどーぞ……。




