2ーショタ神さま
※注:文中の『』は念話です。
『ルル! ルル!!』
「あれ? モモ? ここは……?」
私は気を失ったようです。高位魔法を使い過ぎたのね。
で、今は一面のお花畑にいる。
あれ? 私、また死んだの? え? もう死んだの? また10代で死んだの!?
『いや、死んでないんだよ〜。君、MPの使い過ぎで気を失ってしまったから、意識だけこっちに引っ張ってきたんだ。本当に無茶をするね〜。
初めましてだね、ルルーシュア。
僕はこの世界の神なんだ、創造神だよ〜』
目の前に、真っ白な服を着てパツキンでさらさらロン毛のイケショタが淡く光りながら地面からフワリフワリと浮いている。ん? 浮いてる? おかしいぞ?
「………」
『いや、なんか反応してよ〜! キャー、神さまー! ステキー! て、ないの〜?』
私はその自称神を指差してモモに言ったわ。
「……ねえモモ。イタイ子がいるわ」
『ルル、イタイ子じゃなくてね、本当にこの世界の神様なの。普段はもう少しちゃんとしているのよ。私を、前世のルルの元へ送り出した人なの』
「え? そうなの? モモはトイプードルでしょ?」
今はなんか大っきいけど。うん、大っきいと言うかデカイわね。私を乗せて走れるんだものね。
『さっきルルーシュアが、前世を思い出すまでは可愛いトイプードルの姿だったけどね〜。モモの本当の姿はシルバーフェンリルさ〜! 僕の眷属だよ。神の眷属! 前世で、モモを君の元に送ったのは、そうしないと君の心が耐えられなくて壊れてしまいそうだったからなんだよ。ボクは慈悲深いからね〜! だって神だから! 実はね、君は前世本当は地球に産まれる筈じゃなかった魂なんだよ。僕のこの世界に産まれる筈だった可愛い魂が、何故かはぐれて地球に産まれちゃったんだ。時々あるんだよね〜、本当困っちゃうよ〜。だから君、地球環境に対応できなくて、生まれつき身体が弱かったでしょう? それに全ての縁が薄かった。肉親の縁も何もかもだよ。ボッチ中のボッチ! フルボッチだよ! だから親の愛情も人の情すら知らずに、10代で力尽きて孤独死してしまったぁぁ〜! 友達も彼氏もいなかったもんね。なんて可哀想なんだ〜! だから今世はね、しっかり愛情を経験してきなさ〜い! 前世の分もたっぷりとね〜! 前世、地球で君が頑張った分は、今世で能力やスキルに変換してあるから後で確認してみるといいよ。僕の加護も付けておいたからね〜! 今世こそ、自分の人生をいっぱい楽しんで、家族の愛情をたくさん受けて、自由に生きるんだ〜! それだけ伝えたかったから呼んだんだ。じゃ、そろそろ時間だね〜。今の家族が心配しているよ。ルルーシュア、今世は幸せにおなりよ』
真っ白な服の神様(自称)がプラプラと手を振っているわ。
そして私の意識はまた薄れていった。
「ルル……ルル……あぁ、ルル……」
「あ……お母様……」
私がゆっくりと眼を開けると、目の前でお母様が眼の周りを真っ赤に腫らしながらボロボロ涙を流して泣いていたの。
「ルル! あんな無茶をして!! あなたにもしもの事があったら、お母様は生きていけないわ!!」
「お母様……ごめんなさい……」
そう言って泣きながら、私を抱きしめてきたのは……
私のお母様、テレス・ティシュトリア。
サラサラな紫の髪に翡翠色の瞳。アラフィフなのにそんな事を感じさせないスレンダーな美人さんです。
「「「ルル!!」」」
お母様の後ろにお父様とお兄様達がいました。
「お父様、ラウ兄様、ジュード兄様。心配かけてごめんなさい」
両親に兄二人、これが今世での私の家族です。
この辺境の地を治める領主で公爵でもあるお父様。
お父様と大恋愛して隣国から嫁いできたお母様に、二人のイケメンお兄様。
そして、前世から一緒にいてくれるモモ。
今世、私はとても愛されてます。
突然、前世を思い出して神様(自称)とも会ったりしたけど、前世の両親とか兄弟とか思い出せない。
あの神様(自称)が言ってた様に、本当に縁が薄かったんだろうな。だって悲しくないし、どうやって死んだのかも思い出せないし心残りもなんにもないわ。アッサリしたもんよ。
神様に言われたからじゃないけど、今の家族に愛されているから今世を楽しんで生きようと思います!
でもね、たしかラノベの定番だと前世を思い出すのは婚約者に婚約破棄された時とかじゃないの?
魔物の大群と戦っている最中に思い出すなんて聞いた事ないわよ。現実て恐ろしいのね。一歩間違えたら私また死んでたじゃない!
本当、ショタ神様(自称)もう少しタイミングを考えてほしかったわ!
「で、色々聞きたい事があるんだが?」
と、私に言ってるのはお父様。
私、ルルーシュア。
辺境領主公爵家の末っ子です。
ミスリルリザードをお兄様達と倒した直後に、MPの使い過ぎで気を失いました。
その時に神様(自称)と対面して、眼が覚めたらお母様が号泣してました。
お父様、お兄様二人も部屋に来ていて、そして今……お父様の言葉に戻ります。
「えっとぉ……」
何から話したらいいのかしら。
本当の事を話して、気持ち悪がられない?
変な子確定になるよね、普通。
頭の中お花畑ちゃんみたいな。え、何このイタイ子みたいな。どうしよう……
また前世みたいに、独りぼっちになるのは怖い。
ベッドで身体を起こして、私が混乱しているとお父様が優しく髪を撫でて言ってくれたの。
「ルル、私達はルルーシュアが大切だから聞きたいんだ。守る為に知っておきたいんだ。どれだけ心配した事か。ルルーシュアが、眼を覚さなかったら私達は悔やんでも悔やみきれない。分かるかい?」
「はい……お父様」
お父様の、いつにない真剣な眼差し。
「まず、モモなんだが……」
「そうだ! モモは? モモは無事ですか!?」
「わふぅ『ルル、ここにいるわよ。ずっと側にいるわよ』」
モッフモフで大きなフェンリルの姿をしたモモが、私のベッドのすぐ側に伏せていました。
良かった、側にいてくれた。手を伸ばしてモモを撫でます。
「ルルーシュア、このシルバーフェンリルがモモなのかい?」
お父様が聞いてきました。
当然だわ。だってモモは、小さな可愛いフワモコのシルバーのトイプードルだったのだから。
私の側を絶対に離れず、魔物と闘っている時も私の側にいてくれた。
「はい、お父様。私も信じられなかったのですが、このシルバーフェンリルがモモです。能力が解放されて本来のフェンリルの姿に戻ったそうです」
「くぅーん……『ルル、私はどんな事があってもずっとルルと一緒よ。何があっても大丈夫よ』」
うっ……モモが励ましてくれてるわ。うん、黙っていても仕方がないわよね。このままなかった事にも出来ない。
それに神様(自称)も言ってた。自由に生きなさい、て。なら、私の心は決まったわ!
「お父様、お母様、お兄様。今からお話しする事は信じられないかも知れませんが、事実です。私を信じて聞いて下さいますか?」