15ー蟹パ
はい、そして夕食です。もちろん、蟹パーティーよ!
サンドキングクラブはとんでもなく大きいので、お邸の前庭で使用人も領主隊や漁師の叔父さん達、ニコラも一緒に蟹パーティーです。いつの間にか、ルフタ親子もいるわ。
料理人の人達が頑張って作ってくれた、蟹料理が並びます。
そこら中に火が焚かれ、沢山のワイン樽が出され、蟹鍋、焼き蟹、フライ、天ぷら、などなど。沢山の蟹料理です。
「嬢ちゃん! キングクラブは美味いな! これから捨てずに食べるさ!」
「ルル嬢様! 美味いよ! あの水っぽいだけの野菜が、こんなに美味しくなるんだな!」
ふふふ、本当にみんな美味しそうに食べてるわ。
『ルル、皆んなで食べたら美味しいね』
『モモ、そうね。前世ではなかった事ね』
『ルル覚えてるの?』
『なんとなくね……いつも一人で冷めたご飯を食べてたな、て……』
『ルル、今は一人じゃないわ』
『そうね、一人じゃない』
「ルル嬢、美味しいな! 天ぷらまで食べれるなんて思わなかったよ!」
ふふ、レオン様、満面の笑顔がキラキラしているわ。
「前世を思い出すよ。蟹は日本人の心だ!」
何、言ってるのかしら。
「レオン様、もしかしてワインを呑んでいますか?」
「ああ、少しな。日本酒が欲しくなるな!」
「ふふ、蟹には日本酒なのね。キングクラブてミソがないのね。蟹て全部蟹味噌があると思っていたわ」
「そうなのか? でもルル嬢、よく蟹の目と目の間を狙ったら即死だと知っていたな」
「うん、なんかで……テレビかな? 見た覚えがあったのよ。雑学ね」
「あー、ルル嬢。侯爵夫人から少しルル嬢の前世の事を聞いた。ほとんど覚えてないって」
「そうなのよ」
「俺は普通の家庭に育って、普通の生活だった記憶があるが。ルル嬢はそうじゃないんだな」
「レオン様は自分が死んだ時の事も覚えてるの?」
「原因は覚えてるよ。意識が途切れるところまで覚えてるよ」
「そうなのね。私は原因も覚えてないわ。でも、別に不孝だった覚えもないし。モモも一緒だったし。だから、そんな顔しないで」
レオン様、眉が寄って悲しそうなお顔なのよ。
「すまない。今世は忘れ様のない位、楽しくしような! 俺もズッと側で守るよ。ルル嬢は強いから、俺は役に立たないかも知れないけど。でも、ルル嬢の家族と一緒に守っていきたいと思うよ」
「レオン様。有難うございます。宜しくお願いしますね」
「おう、任せとけ!」
「ふふふ……レベル上げ頑張ってね」
「あー! それ言ったらダメだろー!」
多分、私の方がレベル高いわよね?
「ぶっちゃけさ、ルル嬢はレベルどれ位なの?」
「今ですか? あー、キングクラブ討伐したからまた少し上がってるわ。今は78ね」
「マジかぁ……うん、頑張るわ!」
「明日からお兄様達と一緒に討伐に出てみたらどう?」
「おう! 一狩り行くぞー!」
あ、言っちゃったわね。一狩り。
「レオン殿下、ルル。二人仲良くなったわね」
「お母様」
「夫人。改めて、私もルル嬢の側で守っていきたいと思います。許して頂けますか?」
「あらあらまあまあ、殿下。じゃあ、本格的に婚約のお披露目を考えないといけないわね。殿下のお父上もご安心なさるわ」
「はは、なんせ私は冒険者志望でしたからね。でも、ルル嬢とご縁を頂けた事に感謝します。縁を繋げてくれて、色んな話を聞かせてくれた宰相殿にも感謝しなければなりませんね」
「殿下、それは私共も同じですわよ。殿下とのご縁のおかげで、あのバカ王家からルルを守れたのですからね」
お母様、またバカ王家て言った。
「ルルー! キングクラブ美味いぞー!!」
お父様の登場です。片手にワイン、片手に大きな蟹の足を持っています。
「あなた、本格的に殿下との婚約のお披露目をしましょうね」
「そうなのか!? ルル! まだお父様の側にいていいんだぞー!!」
「あなた、しつこいですわ」
「そんな事を言うけどだな、無事に学園を卒業してやっと王都から帰ってきたと思ったら、もう婚約ってな。寂しいだろ!!」
「公爵、私は婿入りするのですし、婚姻してもルル嬢は変わらず公爵の娘ではないですか」
「ふん! 娘を持つ親の気持ちは分からんだろうよ!」
あらら、お父様、スネちゃった。
「お父様、ルルは側にいますわ」
ニコッ。出血大サービスよ。
「ルルーー!!」
ブフッ!! お父様に抱きつかれました! 苦しいです! しかもお酒臭い!
「ハハハ、良い家族だよ」
「レオン様有難うございます。私もそう思います」
蟹パーティーは大成功でした。
この日以来、キングクラブは領民達に食べられる様になりました。