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120ールート

「ルル様、分かりましたよ」

「疲れたのー」

「ユリウス、ルビ。お疲れさま」

「ルビちゃんと擦り合わせた結果、大体のルートが判明しました」

「ユリウス、よくルビと……」

「ルビ、頑張ったの」

「ルビ、偉いわ。有難う」


 ルビがスリスリしてきました。可愛いなー。


「ピー」


 ピアがルビの真似をしてレオン様にスリスリしてます。


「いや、ピアがスリスリすると痛いからな」

「ピッ!」


 プププ。


 お父様の執務室です。報告にきています。当然、家族全員揃ってます。ルビちゃんはお疲れで私の膝の上にいます。リアンカがお茶を出してくれます。


「リアンカ、甘いものはないかしら?」

「ルル様、イワカムに貰ってきますね」


 リアンカが厨房へ行ってくれます。 


「ユリウス、説明してくれ」

「はい、アーデス様。ルビちゃんが邪神の気配が分かると言う事なので、話を擦り合わせた結果大体のルートが割り出せました」


 一体どうやったのかしら?


「北からのルートを私がルビちゃんに説明して、ルビちゃんに気配を探ってもらったんです」


 まあ、根気のいる事。


「そうでもなかったですよ。ルビちゃんはかなりしっかり邪神の気配を読み取れる様ですから」

「ルビは何故分かるの?」

「邪神はルビ達にとって天敵なのー」

「そうなの? カーバンクルにとって、て事?」

「ルル、そうなの。だから分かるのー」

「じゃあ、モモちゃんは?」

「私は神の眷属だから逆ね。私が邪神の天敵なのよ。残念ながら、私からはもっと近くならないと分からないわ」

「なんともな……想像もできないな」

「父上、そうですね」

「父上、兄貴。そんな凄い仲間がうちにはいるって事だ」

「ジュードの言う通りね」

「お母様、じゃあもっと強力な……」

「ルル、オヴィオさんは止めておけ」


 ええー、ラウ兄様。私まだ何も言ってないわー。


 北からのルートは3通り。

 まず一つ目。真っ直ぐ南下して王都を経由するルート。これが一番近いルートね。

 二つ目。一度西側に出て王都を逸れて街を幾つか経由するルート。穏やかにのんびり南下できるルートね。

 そして最後の三つ目。北東に連なる山脈側の麓を通るルート。山を超えたら帝国の国境ね。これが一番街に寄らないルート。でもその分、一番険しくて厳しいルートになる。何故なら北東の山脈側に少し外れただけで魔物が出る事と、物資を補給する為の大きな街がないからです。

 山脈沿に山との境に沿って樹林があります。そこにだけ群生する樹木から、薬になる樹皮と薬草を採取して生業にしている小さな町が疎らにあるだけです。

 そして何より魔物です。ティシュトリア領の西側の森と同様に、北の山脈は魔物が出ます。ただ、ティシュトリアと違って魔物は山から降りて来ないので魔物対策はされていません。どうやら、その薬になる樹皮を持つ樹木が魔物にとっては近寄りたくない物の様です。

 それに今の時期は寒い! 北の山脈の頂にはいつも白く雪が積もってます。溶ける事のない雪です。

 その山脈を越えるとレオン様のお国帝国への近道ですが、誰も越えようとはしません。頂に万年雪がある位天候が厳しく、傾斜もきつく標高も高い。しかも雪山独特の魔物が出るからです。

 そう、命懸けです。ですので帝国へは王国内であれば、ティシュトリア領経由が普通です。

 まさか、北の山脈側のルートはないでしょう。


「ルル様、夕食前なので軽くしておいて欲しいとイワカムが。クッキーです」

「リアンカ、有難う」


 イワカムのクッキーも絶品ね。王都のクッキーみたいにパッサパサじゃないしね。メイドが皆に配ってくれます。

 そしてユリウスが発言します。


「どうやら、北の山脈側の麓を南下している様です」


 ……馬鹿なの? 死ぬ気なの?


「ルル様、シャーロット達の動きをルビちゃんに聞いていると、山脈を越えたい様ですよ」

「自殺行為だな」

「兄貴、そうだよな。しかしそれは帝国へ渡りたいと言う事か? なんの為に? 国外逃亡か?」

「ラウ様、ジュード様。私の推測ですが、もしかしてシャーロットはレオン殿下がティシュトリアにおられる事を知らないのではないでしょうか?」

「んぐッ? なんだって? 俺か?」


 レオン様、クッキーを食べるのに夢中になってたでしょう。王都のクッキーは全然食べないくせに。


「はい、レオン殿下。第2王子であるバッカス殿下の攻略がダメになってしまったので、後はレオン殿下しかないと執着しているのではないかと。レオン殿下がシャーロットの前に姿を見せたのは、あの婚約破棄騒ぎのあったパーティーのみです。我々は誰も態々レオン殿下がティシュトリアに滞在しているとは言っておりません。そして偶々ですが、王都まで解呪して廻った際も殿下の事を話しておりませんし、紹介もしておりません。街の者達もティシュトリアの従者の一人か? 位に思っていた様ですしね」

「「「…………!」」」

「えッ!? そんな感じなのかッ!?」

「はい、レオン殿下。そんな感じです」

「しかしだな、ユリウス。あのサクソン・モルドレッドが北東の山脈の厳しさを知らない訳がないだろう?」

「アーデス様、私もその先入観を持っておりました。しかし、考えてみて下さい。魅了されているのです。恐らくかなり深く。いくらサクソン殿に知識があり常識のあるお方だったとしても、今は魅了に操られているのです。そして操っているのがあのシャーロットです。お解りでしょうか?」

「あー、成る程な」

「父上、これは笑えますね」

「兄貴、宝の持ち腐れ? てこの事か?」


 いや、ジュード兄様その表現はどうだろう?


「しかし、ユリウス。よく気がついたな」

「はい、ルビちゃんの話を聞けたお陰ですね。途中何度か山に入ろうとした形跡もあった様でしたので」

「ルビ頑張ったのー」

「ルビ偉いわ」


 もうルビちゃんナデナデしちゃうわ。


「ルルー。クッキー美味しいのー」


 両手で持ってサクサク食べるの可愛いわ。でも、可愛いお手々もお口のまわりもクッキーの屑だらけよ。


「レオン様、もしもシャーロット達が山脈を超えて帝国側へ辿り着いたとします。そしたら帝国はどう動きますか?」

「ルル、当然即刻兵が出る。帝国は山脈側に入国する為の機関は置いていない。不法入国者と言う事になる。不法入国者は全て捕らえられる。どんな身分の者であっても例外なくだ」

「でも、兵も魅了されてしまったら?」

「ルル、それはないわ」

「お母様、どうしてですか?」

「国境沿いを守備している兵達は勿論、帝国では全ての兵が状態異常無効の魔道具を装備しているわ。昔の件を踏まえてよ」

「王国とは違うんだよ。帝国はそんなに甘くない」

「お母様、レオン様」


 なんか二人共カッコいい……!


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