119ーレオンの気持ち
「ルル、少しいいか?」
お父様の執務室を出て部屋に向かって歩いていると、レオン様に呼び止められました。
「レオン様、どうしました?」
「ピ」
ピアがレオン様の肩に乗ろうとして、ルビとモモに止められています。
「さっきルルが言ってた事だけど…… 」
何かしら? どの事かしら?
「俺が来るまで婚約者がいると知らなかったってやつ」
ああ、あれね。
「はい。そうですよ」
「それで……いいのか?」
何がかしら?
「何がですか?」
「いや、さぁ。突然、婚約者が出てきて婚姻だとか言われても、どうなのかな? と。俺はルルが婚約者だ、て小さい頃から思っていたからいいけどさ。早く会いたくて来たんだしな。ルルはそうじゃないんだから、抵抗あるだろ?」
「勿論、ありますよ。て、言うか、ありましたよ。以前、お話しましたけど私の記憶が戻ったのが最近なんです。あの時は今よりずっと記憶があやふやで覚えてない事も多くて。そんな時にレオン様がいらしたんです。お父様とお母様は平然としてらしたから、もしかしたら私は聞いていたけど忘れていたのかも知れないわ。まあ、突然いらして驚きましたけど」
「そうだよな」
「それだけです」
「えっ? いやルルそれだけって」
他に何があるのかしら?
「いや、だからな。俺が婚約者で抵抗ないのか?」
何を今更? 何が聞きたいの?
「ありませんよ」
「突然、出てきた婚約者なのに?」
「はい」
「はぁー、分かんねー!」
何かしら? 何かおかしいかしら?
「レオン様、確かにレオン様は突然現れた婚約者ですが、それは数ヶ月も前の事です。それから私はレオン様と沢山お話をしました。毎日何処に行くのも一緒でした。前世の記憶を持つ私達にしか分からない事もありました。レオン様のお人柄も知りました。それで、今抵抗があると思いますか?」
これで分かるかしら?
「……ルル!」
こら、抱きしめるのはやめて。慣れてないからやめて。
レオン様は意外と大きいから、私がすっぽり腕の中に入っちゃうのよ。その全部包まれる感じに慣れなくて、心臓が煩いわ。
「俺はルルの事、大切に思ってる。ルルを婚約者に選んでくれた宰相に感謝している位だ。婚姻するのはルル以外考えられない。俺はルルの事が大好きだ。ルルは俺が好きか?」
マジ……やめて。恥ずか死ぬ!
「う…… 」
「う?」
抱きしめた腕を緩めてレオン様が覗き込んで来ます。
「ルル……真っ赤だな」
「やめて……ホント慣れてないから」
両手で顔を隠します。
「ハハハ、ルル可愛いな。俺の事は嫌いじゃないよな?」
「当たり前じゃないですか!」
バッと顔を上げると直ぐ近くにレオン様の顔がありました。
「ま、今日はそれで許してやるか」
チュッとオデコに柔らかいものが触りました。
「ハハハ、本当真っ赤だな」
やだ! 本当リア充恐るべし!
「婚姻したらどーすんだ?」
「わふっ!」
「ああ、モモごめん。でもさ、婚約者としても距離を詰めときたいんだよ」
「わふ」
「ルルは可愛いからな。また第1王子に狙われでもしたら、ゼッテーに潰す!」
「まぁ、レオン。お口が悪いですわ。そろそろ離れなさい」
げ、お母様じゃん。いつから居たの!?
「義母上、すみません」
レオン様はやっと離してくれました。
「でも、もしまた第1王子殿下が何か言ってきたら、私が先に徹底的に潰してやりますから安心して下さいな」
「あ、ありがとうございます?」
お母様、怖い! レオン様疑問形になってるわよ。
あれから、ユリウスとルビがずっとあーだこーだと話してます。それを少し離れた所からモモと一緒に眺めています。
ルビて、基本一言ずつしか話さないからユリウスは理解してるのかしら? 不思議だわ。
ルビちゃんいつの間にか成長してたのね。瞬間移動まで出来るようになって。カーバンクルだもんね。ルビも私よりずっとずっと長く生きるんだろうなぁ。
「わふっ?」
「モモちゃん、なんでもないわよ」
「わふぅ」
「ま、強いて言うなら、いつの間にか娘が成長していたんだなぁ、て感じかしら?」
「わふっ?」
「ルビちゃんよ。いつの間にか成長してたんだなぁ、て思ったのよ」
「わふっ」
「ルル、モモ、何してるんだ?」
あら、レオン様がいらしたわ。肩にピアが乗ってる皇子様。
「レオン様、モモとお喋りしてたのよ」
「温室、見に行かないか?」
「ピ?」
「完成したの?」
「ああ、ディアナが薬草を植えたいらしい。
「ピー」
「モモちゃん行く?」
「わふぅ」
「行かないって。事が終わってから植える方がいいんじゃないかしら?」
「ルル、今ので分かるのか?」
「分かるわよ。モモだもん。そーだ、レオン様にお願いがあったのよ」
「ん? 何だ? ルルのお願いなら何でもきくぞ」
言ったわね。言ったわよ。言質とったわよ。
「レオン様、念話を覚えて下さい」
「いいか、ルル……人には出来る事と出来ない事があるんだぞ。知ってるか?」
何でもきくって言ったじゃない。
「私は出来ますよ」
と、言う事で念話の練習中です。
「んんーー……聞くのは聞ける。モモに限るが」
なんだそれは? レオン様、あれからモモと私を相手に念話の練習をしています。
練習ってねぇ。そもそもスキルなのに練習して出来るものなの?
「そもそもレオン様は念話スキルを持ってるの?」
「知らねー」
なんでよっ! 鑑定してやるッ! 鑑定……! あるじゃない!
「レオン様、念話スキルあるじゃない! レベルめっちゃ低いけど」
「ルル、鑑定したな?」
「他は見てないわよ」
「いや、いいけどさ」
「ルル、何を今更言ってるの? 念話スキルが無ければ聞く事も出来ないわよ。初めてお話した時に私の声が聞こえてたでしょう?」
「そうだっけ?」
「ルルはどうして念話を覚えてほしいの?」
「だって便利じゃない? カッコいいじゃない?」
「ルルのカッコいいの基準が分からん」