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116ー初魔道具

 水がどんどん入れられます。それに比例して温室内の魔素も濃くなって行く様です。


「ディアナ、将来的には木も植えたいわね」

「はい! ルル様、そうしたいです」

「森から持ってきたいわね」

「ルル様、子供の頃と変わってませんね」

「何かしら?」

「だってルル様。柚子の木やすだちの木を探して、森から引きずりながら持ってきたじゃないですか」


 あー、あれは擬きなんだけどね。私がそう呼んでたらその名前になったのよ。


「ディアナ、今度一緒に湖に行きましょうね」

「ルル様、本当ですか!? 是非行きたいです!」

「フフフ、ユリウスの言う通りね」

「兄様が何ですか?」

「湖に行こうと言ったらディアナが喜ぶと言っていたのよ」

「いつも兄様ばかりで狡いです」

「ルル、ディアナ。こんなもんでどうだ?」

「ピー!」


 レオン様です。もう水を入れ終わったのかしら?


「おー! もう完成ですか!」

「マーリソン様、池に水を入れ終わったみたいなのでルル様に出してもらって薬草を植えようかと」

「あー、それはまだですね」

「マーリソン様、どうしてかしら?」

「ルルーシュア様、土です」


 土? ああ、そっか。


「ディアナ、土にも湖の水を浸透させなきゃ」

「おー、ルルーシュア様! 素晴らしい!」


 何がよ。マーリソン様が教えてくれたんじゃない。


「いいえ、ルルーシュア様。私は「土」と一言言っただけです」

「分かるわよ。普通」

「そうですか? ルルーシュア様だからこそです!」


 はいはい。


「レオン様、池を中心に土に水を撒いて下さい」

「土にか? おう、分かった」


 レオン様が池に近い所から順に水を撒いて行きます。あ、そうだ。天井についてるパイプから水を出せば良いんじゃない? 


「レオン様、天井のパイプからはまだ出せないんですか?」

「ん? 知らないぞ」


 なんだ。親方かな?


「親方!」

「おう、ルル嬢なんだ?」

「あの天井についてるパイプからはまだ水を出せないの?」

「出せるぞ。池の水と、地下水と選べる様にしてあるぞ」


 なんて便利な!


「レオン様! 出せるそうですよ! 手で撒かなくても」

「そうか! じゃあ皆出ないと濡れるぞ」

「ピー」


 あ、そうね。


「じゃあみんな、外に出ましょう」


 と、皆揃って温室から出たところに……


「ルル様、レオン殿下!」

「あら、ガイウスじゃない。どうしたの?」

「シャーロットが修道院を抜け出したそうです!」


 何ですってー!!


「ルル」

「レオン様」

「やはり王家のスキル封じじゃあ力不足だったんだ」

「皆様、執務室にお集まりです!」

「分かった。モモ」

「行くわ」

「ルビも行くの」

「ピ!」

「私も参ります!」

「マーリソン殿。ルル、行こう!」


※ここから『』は念話ではなく、通信先の言葉です。


「お父様」

「ああルル、レオン、マーリソン殿来たか。これから王都の父上と繋ぐ」

「はい」


 前回、魅了の解呪で王都にあるお祖父様のお邸に滞在した時に、ユリウスとマーリソン様が離れていても映像と音声を送れる魔道具を開発して設置してくれました。領地に帰ってきてからは、お父様の執務室にも設置しました。この魔道具で、王都のお祖父様とリアルでお話し出来ます。


『ピーピュピュッピュッ、ピーピピー♪』

 

 ピアの調子っ外れのヘンテコな歌が流れました。やっぱこれはダメじゃない? 叔母様の希望で、このお知らせ音になったんだけど。


「緊張感が無くなるな」


 レオン様、同感だわ。伯母様かなり趣味が悪いわ。


『皆、揃っているな?』


 魔道具にお祖父様の姿が映し出されました。お父様の執務室には、お父様、お母様、ラウ兄様、ジュード兄様、レオン様、私、ユリウスにマーリソン様がいます。ユリウスが魔道具の横に立ち本体に指先で触れて魔力を流しています。


「父上、詳細を教えて下さい」

『アーデス、私も先程ディーユ殿下に呼ばれて話を聞いたばかりだ。北の修道院からの早馬で知らせがあったらしい』

「と、言う事は既に何日も経っていると言う事ですか」

『そうなるな』

「父上、シャーロットはどうやって出奔したのですか?」

『魅了だ。少し前にスキル封じが破壊されていたらしい』


 やはり王家のスキル封じは甘かったんだ! 2回目言いました。


『修道院の修道女1人と警備の者2人も一緒に出奔している。手引きをしたのが、一緒に出奔した警備の者とサクソン・モルドレッドだ』

「…………」

「皆様、お気遣いなき様。私は覚悟致しております」


 マーリソン様……。

 お祖父様はシャーロット達が出奔する数日前からの分かっている事を話された。

 シャーロットが出奔するほんの数日前に食料を補充する定期便が来た。その中に見慣れぬ者がいた。そしてどうやらその見慣れぬ者がサクソン・モルドレッドだった。

 警備の者が誘導しシャーロットと会っていたらしい。その時にはもう既に警備の者が魅了されていたのであろう。

 そして数日後、シャーロットは同室だった修道女1人と警備の者2人を連れて深夜に出奔した。修道院近くには宿場も街もない。閉ざされた北の果てにある修道院だからこそ、シャーロットは送られた。あと1ヶ月もすれば雪に閉ざされていただろう。

 1番近くの街でさえ、馬車なら3日は掛かる。シャーロット達は、サクソンが手配しただろう幌馬車を使った事だけ分かっていると。何故なら、幌馬車の音に別の警備の者や数人の修道女が気付いたから。


「父上、それで王家はどうするんですか?」

『以前、お前達が作った魅了をレジストするブレスレットがある。あれを全員に付けさせ、お前達が置いていった魅了の解呪薬を持たせた特別隊がディーユ殿下の差配で組まれ、既に北に向かって出発している。しかし、報告が入るのはまだまだ先になるだろう。陛下はまた邪魔をしそうになったそうだが、魔法契約によって手出しが出来なかったらしい。あの馬鹿王が! とにかく何もしたくないらしい。何もせず、ただただ大人しくして自分の代をやり過ごすつもりらしい。もう無駄だがな。なら早々に譲位してもらう方が良い』

「ディーユ殿下が早急に対応して下さってよかった。それで私共には何をしろと?」

『それだ。修道院の下女がシャーロットの話を聞いていたんだ。自分がこんな事になったのは、レオン殿下を奪ったルルーシュアのせいだと』


 えっ? 私!? 私は奪ってないわよ!


『殿下、シャーロットと面識はお有りだったのですか?』

「とんでもない! あのパーティーで初めて会いました」


 えー、でも隠しキャラ目当てよね。


「ルル、それは言えないだろ」

「レオン様、もうそれは無理じゃないかしら?」

「マジか……?」

「はい、お母様の目が怖いです」

『とにかく、そっちに向かった可能性がある。北の修道院からだと1ヶ月以上掛かる距離だが充分に気をつけて欲しい』


 お祖父様とのお話が終わりました。


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