114ー帰途
「レオン様、じゃあここにお魚はいないの? いたら凄い美味しいとか?」
「わふ…… 」
あら、モモちゃん。その目はなぁに?
「ルル、魚がいたとしてもこんなに高濃度の魔素水に住んでる魚は食べられないわ」
「モモちゃんそうなの?」
「リッシュ湖のあの魔素濃度は、もう殆ど奇跡ね」
「モモ、そうなのか? リッシュ湖はいつからあるのか文献にも出てないんだ。きっと太古の昔からあるんだろうな」
「この湖の水が、いくら地層をフィルターにして流れ出ていたとしてもリッシュ湖の水は信じられない程の絶妙なバランスだと思うわ」
うん、お魚も信じられない美味しさだわ。
「わふ…… 」
「リッシュ湖から農水路を引こうと言い出したのはルルだ」
「ラウ兄様、全然覚えてません」
ルビがフワフワ飛んでます。
「やだ! ルビちゃんビショビショじゃない!」
ルビがビショビショに濡れたまま戻ってきます。
「ルルー! お水美味しいのー!」
「また飲んでたの?」
「ルビちゃん、ドライ」
シュルン……とルビが乾きます。
「ルル、ありがとなの」
ルビがスリスリしてきます。ルビは可愛いなー。
「ピーー!」
――ボフッ!
「やだ! ピア、ビショビショのまま抱きつかないで!」
「ピピー!」
ピアまでスリスリしてきます。
「ルビまでまた濡れたのー」
「ブハハッ! ルルもビショビショだな!」
「もう、ドライ」
シュルンッと乾きました。片手にルビ、もう片方の手にピア。
「二人の子持ちになった気分だわ」
「はえーだろ! 婚姻もしてないだろ! ブハハハッ!」
「レオン様、お水持って帰るんでしょ?」
「ああ、今度は前より大量に持って帰るわ」
「私も持って帰ります。ディアナの温室の池もあるし」
「そっか、じゃあかなりの量が必要だな」
「ええ、でもまた来るでしょう? 今度はディアナも連れて来たいわ」
「ルル様、それはディアナが喜びますよ」
「ユリウスも此処は初めてね」
「ええ。神秘的で圧倒されますね。それに本当に魔素が濃い」
「そうなんです! ユリウス殿! ですから此処で魔法を使う時は要注意です!」
「マーリソン様、どうして?」
「ルルーシュア様、魔法とは魔素の力も借りて発動しているのですよ。こんなに高濃度の魔素の中で発動すると、いつもより規模が大きくなります!」
「へえー」
「……………… 」
「あれ? ルルーシュア様、驚きませんね?」
「マーリソン様、だって前来た時もさっきも魔法を使ってるけど、普通だったわよ」
「そうでしたね。何故でしょう?」
「マーリソン殿、ルル様ですから」
「ユリウス殿、分かり兼ねますが?」
「ルル様は無意識に加減なさっていたんでしょう。感覚で使われていますから」
ユリウス、もしかしてディスってる?
「いえいえ、ルル様。褒めてますよ」
「褒められてる気がしないわ…… 」
「ブハハハハッ!」
レオン様、笑いすぎ。
「兄貴、平和だな」
「ああ、ジュード。良かったよ、本当に」
「ああ。ルルが無事に戻ってきて良かった。兄貴、どうする? 帰るにも途中で暗くならないか?」
「ああ、夜の森は危険だからな。今日はここで野営するか」
「決まりだな! おいッ! ノトス! ミスリル採取するぞ!」
「ジュード様、まだ取るんですか?」
ノトスが駆けてきます。
「おうよッ! 全隊員の剣をミスリルにするんだ!」
「ハハハ! ジュード頑張れ」
「兄貴、見てみろよ。周りの岩盤全部ミスリルが入ってるんだぜ! 取るしかないだろ!」
「そうなのか? この岩盤全部か?」
「ラウ兄様、向こう岸には魔鉱石もありますよ」
「そうなのか!」
「今日は兄様、順番に向こうに行きますか?」
「「ルル! 行く!」
モモに乗って、ラウ兄様とジュード兄様一人ずつ向こう岸に渡りました。それからはもう、大騒ぎでした。
「おーいッ! なんで俺は置いてきぼりなんだよッ!」
と、レオン様が叫んでたので、また連れに戻り。魔鉱石を持ち帰ろうと、男3人で大はしゃぎでした。ホント、3兄弟みたいだわ。
「ラウ様! ジュード様! ルル様! レオン殿下! 夕食にしますよ! いつまで遊んでいるんですか!」
リルに叱られ……シュンッと戻りました。そうなのよ。態々モモに一人ずつ乗らなくてもルビちゃんの瞬間移動があったのよ。戻りは一瞬でした。
翌日、帰りの森の中を疾走してます。
「本当に全然魔物が出ないんだな」
「ラウ、遠巻きに見ているんだぞ。でも出てこない」
「兄貴、上位種も出なくなったな」
「ああ、ドラゴンがいなくなって戻ったんだな」
「ルル! レオン! ラウ! ジュード!」
はい、この大きな声はお父様です。ガシッと抱き締められました!
「お前達、無事で良かった!」
バシバシ背中を叩かれてます。お父様、痛いわ!
「皆、無事で帰ってきてくれて良かったわ」
お母様、泣かないで下さい。
「お父様、お母様。ご心配をお掛けしました」
「さあ、話を聞かせてくれ」
「リアンカ!」
「はいッ! ルル様! よくご無事で! うぅ……」
やだリアンカまで泣かないで。
「リアンカ、ごめんなさい。心配掛けたわね」
「ルル様、いえ! 信じてましたから!」
「リアンカ、お茶とイワカムの美味しいお菓子が食べたいわ」
「はい! 直ぐにご用意しますね」
皆で談話室に移動します。ラウ兄様が全て報告されました。リアンカが出してくれたお茶と、お茶菓子を食べながらです。イワカム特製の……なんと、今日は苺のミルフィーユです。激ウマ!
「そうか…… いや、ホッとした」
「あなた、本当に。万が一、ドラゴンと戦う様な事にでもなっていたらと」
「ああ。しかしピア良かったな。母上が気にして下さっていたのだな」
「ピ」
「その黄龍はこの領地を気にかけて下さると言う事か」
「父上、そうらしいです」
「ラウ、有難い事だな」
「わふ、ルルとレオン様は加護を貰ったでしょ?」
「ルル、そうなのか?」
「はいお父様。モモ、そうだったわね」
ステータス……え、モモさん。ビックリだわ。
「ルル、これ…… 」
「ええ、レオン様。驚きました」
「ルル、レオンどうした?」
「お父様、そのオヴィオさんに加護を頂いたのですが……」
「ああ、オヴィオさんとは黄龍だな。で、どうした?」
「公爵、その加護と言うのが、【龍皇の加護】みたいなのです」
「ルルもか!?」
「はい、お父様。そうみたいです」
確かに偉そうだったけど、確かに黄金ぽい黄色だったけども。オヴィオさんて、龍皇なの!?
「ルルーシュア様! なんと素晴らしい!」
ああ、いたわね。マーリソン様。