武田政権樹立を阻止せよ
未来で俺の頭の中に流れ込んできた記憶によると、この後
①上杉政虎の中国地方遠征中に長野業政落雷死
②長野氏業が箕輪城主となり、上州に戻る
③将軍足利義輝が暗殺され、京は無政府状態になる
④信玄が政虎に反旗を翻して上州侵攻
⑤尾張の信長と三河の家康と本願寺が同時に反乱を起こして、政虎は関東に戻れなくなる
⑥箕輪城の戦いで長野氏業を討ち取った信玄は、そのまま関東を平定し、横浜城の南蛮船と大砲を接収する
⑦信玄は、政虎と同様に東海道を西に進んで上洛する
⑧政虎は、京を追い出されて越後に逃げ帰る
⑨民の期待に応えられなかった政虎から神の力は失われ、このあと政虎が京を回復することはなかった
という順番で事件が発生するらしい。
足利義輝は政虎に将軍位を譲ると宣言しているから、足利将軍家の関係者にとって、義輝はかなり都合の悪い将軍であったのは間違いない。なにしろ、足利将軍家がなくなれば、関係者は全員無職だからね。もしかしたら、義輝暗殺に母親の慶寿院(近衛前久叔母)が関わっていたかもしれない、というのは疑いすぎかな。でも、将軍の母として権勢を振るうつもりが、実の息子に梯子を外されたわけだからね。もっとも、慶寿院は義輝を幽閉して弟の義昭に将軍位を譲らせるよう画策しただけで、それをうまく利用した信玄が義輝を暗殺して、京を無政府状態にしたというのが真相かな。
いずれにせよ、この一連の陰謀を一つずつ防がねばならない訳だ。
まずは、①父業政の落雷死を防ぐことだが、これは箕輪城に避雷針を立てることで、簡単に対処できると思う。早速、職人に避雷針を作らせて、箕輪城の建物に取り付けることとしよう。これで、父の落雷死は防げるはずだが、これって小幡信貞が暗躍していたとか、そういうことなのかな。いずれにせよ、父が健在なら、信玄も上州侵攻を躊躇うであろう。同時に、②や④も防げるわけだね。
③将軍足利義輝の暗殺に対しては、京に城を築くしかないかな。とりあえず、二条城でも作っておくか。将軍の周囲に多数の忍びを配置しておけば、さらに安全が確保されるであろう。あとは、近衛家を監視する手段があると良いのだけれど、何かないかな。
⑤信長・家康・本願寺の反乱については、信長は摂津国、家康は和泉国への領地替えを命じて、それぞれ中国攻めと四国攻めをやらせれば良いと思う。今の上杉家なら、多分できるはずだ。あとは、本願寺と交渉して、家康に竹千代と瀬名姫を返してやるとするか。未来の記憶によると、家康は本願寺を通じて信玄に操られていたみたいだからね。
本願寺についてはどうしよう、というか本願寺だけじゃなくて寺社勢力対策について、まとめて考えた方が良いのかな。
この件については、やはり政教分離を徹底させるしかないかな。信仰の自由は認めるが、政治への口出しは許さん、て感じね。これに従うなら寺社領を認めるし、檀家制度も作って、収入源を確保してやるのも良いかな。
俺としては、いずれ国民皆保険と義務教育を導入することも考えているから、その際医師・教師に僧侶・神官をあてがうと発表するのはどうだろうか。まともな僧侶・神官であれば、やりがいのある仕事と収入源を与えられれば、諸手を挙げて俺の案に賛同するはずだ。
ここまで誠意を尽くして、尚ガタガタ言うような勢力があれば、もう焼き討ち・根切りをするしかないし、民もそれに納得するんじゃないかな。
こんな感じで⑤に対処するとして、⑥信玄が横浜城の南蛮船・大砲を接収する件については、横浜城の防御力を高めるのが良いかな。具体的には、大岡川(野毛側)と堀川(山手側)を水堀にして、その内側に竹筋コンクリート製の城壁を作るわけだ。ついでに、野毛と山手の砦を大きくして、鉄砲と大砲を多数配置すれば、鉄壁の防御力が得られるではないか。しかも、⑥は俺が箕輪城の戦いで戦死したから可能となったわけで、箕輪城に父業政が健在なら、そもそも横浜城まで攻め込めないのではないか。
そして、⑥が阻止されれば、⑦⑧⑨も無くなるわけだね。
これなら、何とかなるんじゃないか?
ついでに、こちらからも武田信玄に工作を仕掛けるとしよう。
ここは、信玄の嫡男義信の出番かな。幸いなことに、第四次川中島の戦いが発生していないから、義信のミスもなくなったしな。義信を取り立てることで、武田幕府二代将軍勝頼誕生の芽を摘むとしよう。
とりあえず、義信に丹波あたりを切り取りさせて、山陰攻めの大将にするのも良いかな。
義信に力をつけさせ、いざとなれば義信を旗頭に信玄を攻めれば良いし、義信が西国にいるだけでも、武田家の力は二分されるだろうからね。
信玄の一連の陰謀に対しては、こんな感じで対処すれば良いかな。
あとは、上杉政権の政治方針についてもまとめておかないとな。
とりあえず、徳川幕府と明治維新の良いとこ取りでいいんじゃないかな。
思いつくままに羅列すると、こんな感じか。
①海外貿易の推進
②楽市楽座令の発布(座や株仲間の廃止)
③申告制度を導入して法人税を徴収(利益の20%)
④街道と港湾施設の整備
⑤鉱山開発(金・銀・銅・鉄・石炭など)
⑥輸出産業(陶磁器・漆器・繊維産業など)の育成
⑦蒸気機関の実用化
まだ、管理通貨制度を導入できるほど国に信用はないから、金本位制度を取らざるを得ないかな。だとすれば、海外への金銀流出も防がないといかんな。あと、この時代は基本的に金不足だから、貨幣の流通量も増やさないと・・・。佐竹義昭や宇都宮広綱に足尾銅山(栃木県日光市)と赤沢銅山(茨城県日立市)を開発させて、銅銭の流通量を増やすとしよう。そうして作られた銅銭の何割かを佐竹・宇都宮に渡すことにすれば、連中も儲かるし、信玄と戦うことになっても上杉家を裏切らないんじゃないかな。
他にも色々考えられることはあると思うが、また何か思いついたら、その都度政虎に報告するとしよう。
ちなみに、この件について後日政虎に報告したのだが、ほぼ原案通りに受け入れられることとなった。家康は、妻子が手元に帰ってきたのを大層喜んでいたが、当然のことながら信長・家康の妻子は政虎のいる京へ止め置かれることになるのだった。一方、領地替えについても信長・家康の両名は応じたのだが、内心どう思っていたのだろうか。将来、これが吉と出るか凶と出るか、俺には分らないのであった。




