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艦砲射撃と怨霊魔法

永禄元年(1558年)6月 伊豆諸島の無人島


 俺率いる南蛮船四隻は、横浜港を出港すると針路を南へ転じ、一路伊豆諸島の無人島へと進む。

 今回の航海では、俺自ら座乗したいと皆に話を切り出したのだが、家臣たち全員が大反対したのにはまいったね。『城主自ら海に乗り出すなど、危険すぎます』という意見が大勢を占めたが、色々と試したいことがあるので俺も引くわけにはいかない。なので、嵐が近づいたらすぐ帰ることを条件として、なんとか許可を得ることに成功したよ。ちなみに、今回の航海に連れて行く士分の者は、孫蔵・弥左衛門・平八郎と正木時忠ね。そうそう、俺の怨霊気象衛星だけど、いつの間にか可視画像だけでなく赤外画像も見られるようになっていたんだよね。これで、夜でも天気予報できるようになったぜ。

 えー、話を戻すよ。今回の航海の目的は、新戦法の艦砲射撃を試すことと、俺の怨霊魔法の威力がどれくらい増しているのか調べることである。なので、南蛮船二隻を率いて横浜港を出港すると、早速怨霊魔法ウインドストームで風を起こして、船のスピードがどの程度上がるのか実験することにしたのであった。

(うーん、やはり怨霊神の協力がないと、海流を発生させるほどの大規模な気象操作はできないか。でも、船一隻ぐらいならなんとかなりそうだな)

 とりあえず、俺が全力で風を起こすと、船のスピードは時速25キロ程度まで上昇した。

 孫蔵や時忠は、『ほー、氏業様の神の力とは便利なものですな。これなら、二日もあれば伊豆鳥島に着いてしまいますぞ』とか、『風を自在に操れるなら、海戦では向かうところ敵なしですな』なんてことを言っている。

 俺はしばらく怨霊魔法の練習を続けていたが、なんとなくコツは掴めたので、今度は無人島に行って艦砲射撃を試すことにしたのだった。


 三日後、俺たちの乗る船はベヨネース列岩に到着した。

 そして、南蛮船四隻を縦一列(単縦陣)に並べた上で、敵船に見立てた岩礁を艦隊側面の大砲で砲撃させてみることにしたのであった。

「ところで、大砲ってどれくらいの距離まで近づけば、砲弾を当てることができるのかな?」

 と、俺は時忠に質問するが、

「陸上ならいざ知らず、波で揺れる船上からの砲撃で敵船を撃破する自信はございません」

 なんてことを言われてしまった。こいつはまずい。せっかく作った大砲なのに、海戦では役に立たぬではないか。これはあれだ、

「助けて、なりえもん!」

『えーい、馬鹿な呼び方をするでない』

 怨霊神業盛が現れたので、早速艦砲射撃の問題点について相談すると、

『そんなもの、念力で砲弾を操れば良かろう』

 と怨霊神が言うので、早速時忠に大砲を撃ってもらうことにした。

 ズドーン!!

(うわっ、うるさい。そして速い)

 砲弾は岩礁を越えて飛んでいく。

『ええい、身体強化をせんか。そして、砲弾には発射前から念力を纏わせておくのじゃ』

(えーと、こんな感じかな。砲弾の周囲に高圧の空気を纏わせて、俺の望む方向に動かすので良いかな)

「それじゃあ時忠、もう一度大砲をお願いします」

 ズドーン!!

(今度は、身体強化の影響で砲弾の動きが遅く見えるね。弾道は岩礁の上を行きそうだから、下向きに力を与えないとな。それっ、怨霊魔法サイコキネシス)

 砲弾は下向きに曲がり、岩礁の上端を掠った。

「よし、時忠もう一発頼むよ」

 ズドーン!!

(今度は岩礁の手前に落ちそうだから、上向きに力を与えないとな。とりゃー)

 ドカーン!!

 今度は、見事岩礁に命中した。周囲からは『おーっ!!』とか『さすが氏業様』といった声が上がる。

 だいたいコツは掴めたかな。怨霊神に礼を言うと、『つまらぬことに呼び出しおって』とプンスカ怒りながら消滅したのであった。

 ところで、俺はこうして風を起こしたり、高圧の空気で物体を思い通りに動かしたりしているけど、俺の怨霊魔法って風属性なのだろうか。前世で気象予報士の資格を持っていたから風属性になったんじゃないかな、なんてね(かなり適当)。まあ、気象予報士云々はともかくとして、それならあれができるかもしれない。自身の声を空気に乗せて、遠くの人に伝えるあれである。とりゃー、怨霊魔法テレパシー。

『もしもし、聞こえますかー。長野氏業です。この声は、孫蔵・弥左衛門・平八郎・時忠の4名の耳に直接伝えているよ』

「うわっ、なんだこれは」

「脳内に氏業様の声が聞こえる」

 4人が大騒ぎをするので、早速種明かしをすることにした。

「えー、皆さん驚かせて申し訳ない。私が大気を操れることを皆さんご存じでしょうが、今回私は声を風に乗せて孫蔵・弥左衛門・平八郎・時忠の耳元まで運んでみました。ちなみに、声とは空気の波(振動)なので、大気の扱いに長けた私にとって、互いの耳元に声を運ぶことなど造作もないことなのです」

 俺がそう言うと、孫蔵たちは『あまり驚かせないでください。氏業様は本当に人が悪い』と答えるが、時忠は『遠くの人と瞬時に意思疎通できるなど、イクサで用いれば戦い方が一変しますぞ。一度、どれくらい遠くの人と意思疎通できるのか実験しましょう。あと、氏業様の神の力はむやみに人に見せてはいけません。この力は常人にとっては脅威です。下手をすれば、危険視されて即暗殺ですぞ』と俺に釘を刺すのであった。

 とりあえず航海の目的も達成できたし、横浜にいる藤殿や家臣たちを心配させるのも悪いかなということで、速やかに伊豆鳥島に行ってアホウドリの羽毛や海産物を船に積み込むと、さっさと横浜港へ帰るのであった。十日間程度の航海だったけど、南の島の風景や星空を楽しんだり、焼き鳥や海産物に舌鼓を打ったりして、良い気分転換になったよ。

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