女とおねぇしかいなくなったこの世界
長編小説でお休みしていた分の
千文字だけ短編のうちの一つをお見せします。
キーワードは「おねぇ」です
誠廉女学院、高等部一年生の《早乙女ゆかり》は、幼い頃に男子から受けた酷いいじめにより、男性恐怖症となった。
日常生活で男性と接することを避け続ける一方、『こんな事では社会に適合できない』と将来に不安を抱いていた。
そんなある日、ゆかりは学校で近所で評判の巫女さんの噂を耳にする。
巫女さんの名は《弁天崎夏目》。聖蓮女学院から徒歩五分の神社に住んでいる。巫女でありながら教員免許を持っていて、理事長と昔からの知り合いで生活指導を任されている。単なる愚痴、私生活での悩み事、さらには恋愛相談まで、女子達の相談を親身になって聞いて答えてくれる気さくな女性だ。
神社を訪ねたゆかりは自分の男性恐怖症についての悩みを打ち明ける。すると巫女さんは思い出したかのように語り出し、
「それだったら《願掛けの儀》に参加してみない?」
「願掛けの儀……?」
年に一度のお祭りの日に行われる《願掛けの儀》。祈りをささげた札に願いを書いて神社に奉納すると願いが叶うというもの。
「願いを書いただけで、叶うんですか?」
「願いを文字に起こすことで自らに誓いを立てるのよ。それだけで少しでも自分の心は変わってくるものよ」
ゆかりは半信半疑だったが行動を起こすことにした。
『世の中の男達が恐くなくなりますように』と札に書いて奉納する。
すると次の日、ゆかりの日常に大きな異変が発生した。
――なんと世界中の男性が全員オネエになっていた。
ランドセルを背負った小学生も。学ラン姿の男子校生徒も。スーツ姿のサラリーマンも。そして自分と夏目以外の女は、さもそれが当たり前かのように自然に接している。
これまでの男性より接しやすくなったが、父親や弟までオネエになってしまい『確かに願いは叶ったけど……こんなの違――――う!』と頭を抱える。
願いを取り消すためには来年の願掛けの儀まで待たなければならず、一年間そのままの環境で過ごす羽目になる。
その間にゆかりは自分のあるべき姿を取り戻していく……女とオネエが織りなす非日常青春グラフィティ。






