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5話 7年ぶりの再会

 ついに再会の日がやってきた。この日をどれほど待ちわびていたんだろう。…長かった。本当に長かった。


 これから俺は、最愛の人と再会する。7年ぶりの再会…。ずっと夢見てきた思い人との感動の再会である。


 …たぶん、向こうは俺のことを覚えてもいないと思うけど。


 準備は完璧に整っている。


 俺もアーロンも、あのレイチェル・オーモンドロイドとクリスティーン・ニコルズのパーティーメンバーとしてやっていけるだけの実力は身につけているつもりだ。そのためにここ数年、毎日死ぬ気で努力してきたんだから。


 二人が新しいパーティーメンバーを必要とするような環境も作っておいた。自分でも「ちょっとやりすぎでは…?」と思ったりもしたけど、仕方がない。俺は目的のためには手段を選ばないタイプなんだ。


 どんな風に環境整備したのかって…?えーっと、だから…簡単にいうと彼女とパーティーを組んでいた4人の冒険者のうち、3人に引退してもらった。


 あっ、でも別に脅したとかじゃないよ?レイチェルさんの仲間のことを徹底的に調べたら4人中3人が何らかの具体的な目的があって冒険者生活をしていることが判明したので、金と権力を使って彼らの「目的」を強引に叶えてあげただけ。


 だから彼らは自発的に引退したのである。…一応取引の条件として少なくとも3年間、冒険者活動を休止することは提示してたけどさ。全員喜んで受け入れてくれたから「自発的」と言ってもいいよな…?


 ちなみに一連の計画を実行してくれたのはもちろんアーロンだけど、彼がクリスティーン・ニコルズだけはパーティーに残すという判断をしたことにはいくつか理由があるらしい。


 パーティーのバランスとか、彼女だけは具体的な目的があって冒険者になったわけではないこととか、彼女とレイチェルさんの強い絆とかね。


 決め手は「別のメンバーの方とお会いする時に遠くから姿を見ただけですが、完全に一目惚れしてしまいましてね」ということだらしいけどね。


 それに対して「さすがアーロン。ポーカーフェイスのくせに欲望に忠実な男だな」と茶化してやったら、涼しい顔で「主に倣って生きておりますので」と反論された。


 …そうか?むしろ俺の方がアーロンに影響されて今の人格になったような気がするけど。


 二人が拠点にしているホテルの長期宿泊の予約もとっておいた。これで俺と彼女はいきなり「実質同棲」を始めるのである。


 若い男女が同じ屋根の下。何も起こらないはずがなく…。ふふ…うふふ…ふふふふふ。


 いやまあ…さすがに違うフロアの部屋を予約したけどね。そもそも彼女たち、最上階のフロアをずっと貸し切りにしているみたいだから違うフロアにせざるを得なかったし。


 俺は金銭的なことはよく分からないけど、アーロン曰く高級ホテルの最上階をずっと丸ごと貸し切りにするなんて下手な貴族でもできないことらしい。金銭面の理由で。


 あんなことができるのは、レイチェルさんとクリスさんが冒険者として超一流で、とてつもない高収入を得ているからだってアーロンが言ってた。


 …さすがだよ、レイチェルさん。有能、天才、女神。


 生まれてきてくれてありがとう。生きててえらい!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 レイチェルさんとの再会は予想よりも早いタイミングで実現した。俺たちがホテルに入った時にはなんと彼女たちが1階のラウンジで話し合いをしていたのである。


 これは予想外。チェックインしてから逆にあのラウンジで彼女たちが現れるのをずっと待つつもりだったのに。


 一目見て彼女だってことが分かった。彼女と会うのは7年ぶりで、実は会うこと自体まだ2回目。しかも前回会った時は少し言葉を交わしただけで、お互い名乗りさえしなかった。そして彼女は当時とは髪型も雰囲気も変わっていたけど…


 それでもすぐに分かった。見た瞬間確信した。何の迷いもなかった。今難しい顔をして小さなため息をついたあの美しい女性が俺の最愛の人、レイチェル・オーモンドロイドなんだ。間違いない。


 少し紫がかった青色の長い髪と同じ色の瞳。知的な印象を与える整った顔立ち。全身からあふれ出ている艶やかな大人の色気。


 しかもその色気がさ…なんていえばいいかな。「少し危険な感じ」がする魔性の色気なんだよね。顔立ちと雰囲気がやや冷たそうで近寄りがたい感じだからそんなオーラになっているのかもしれない。


 あんな「ちょっと危ない感じの色っぽいお姉さん」のオーラに15歳の健全な少年である俺が耐えられるわけがない。もう即落ちですよ、即落ち。


 …いやまあ、外見と関係なく再会する前から完全に落ちてますけどね。


 もう彼女を一目みた瞬間から世の中に存在するあらゆるプラス感情が自分の体の中で爆発しているような感じで、自分の気持ちをまともにコントロールできない。自分が今、デレっとした締まりのない顔をしているのが自分でも分かる。


 仕方ないんだ。7年間、ずっとこの瞬間を夢見て生きてきたんだから。


 俺とアーロンは一度アイコンタクトをしてお互いの意思を確認して、二人でラウンジに向かって歩き出した。そして彼女たちが座っている席の近くで、アーロンが自慢の美声で二人に声をかけた。


「突然失礼いたします。レイチェル・オーモンドロイド様とクリスティーン・ニコルズ様でいらっしゃいますか」

「「…?」」

『ブックマークや☆評価を確認した瞬間から世の中に存在するあらゆるプラス感情が自分の体の中で爆発しているような感じで、自分の気持ちをまともにコントロールできない。自分が今、デレっとした締まりのない顔をしているのが自分でも分かる』

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