3話 仲間になりたそうにこちらを見ています
「あたしはもちろんOKだよ。こっちからお願いしたいくらい」
「よっしゃ!!」
「ありがとうございます」
派手にガッツポーズを決めるワイルド系の美少年と、静かに微笑みながらクリスに礼を言うインテリ系のイケメン。…今日もお二人とも大変麗しいですね。素晴らしいと思います。
二人の美形くんに出会って約1週間後、私たちは再びラウンジの奥の4人席で話し合いをしていた。
1週間前の彼らの「相談」とは、私たちとパーティーを組みたいというものだった。
彼らは最近二人で冒険者として活動を始めたが、2、3回クエストをこなしてみて、二人とも接近戦タイプでパーティーとしてのバランスが悪いことに気づいたらしい。
だから中・遠距離の戦闘を得意とする冒険者とパーティーを組むことを検討するようになったと。
そんな中、たまたま立ち寄ったダートフォードの冒険者ギルドで、「ダートフォードNo.1の有名パーティーからまた一人メンバーが抜けて、今日でソーサラーの私とスナイパーのクリスだけが残る形になってしまった」という噂を聞きつけた。
そこで、二人は「今ならあのレイチェル・オーモンドロイドやクリスティーン・ニコルズと一緒に仕事ができるかもしれない。これは千載一遇のチャンスだ!」と考え、そのまま私たちが滞在しているとされるホテルにやってきて、それっぽい二人組に問答無用で声をかけてきたらしい。
いや、なんで私たちがレイチェルとクリスだってことがすぐにわかったの?やっぱクリスの髪の色が相当珍しいから?それともホテルの従業員にでも聞いた?
…てかそれ以前に、私たちが滞在しているホテルってそう簡単に特定できるものなの?別に隠しているつもりはないけど、自分たちの住処が公開情報になっているなら正直あまり良い気はしないなぁ…。
「レイチェルさんはどうですか?」
メイソンさんが自信と期待に満ちた目で私を見ながら意見を求めてきた。いつの間にか「オーモンドロイドさん」が「レイチェルさん」になってる…。陽気な美少年のコミュニケーション能力ってすごいね。
…悪い気はしない自分が情けない。
……そんなことより、彼らとパーティーを組むかどうかだよね!…それなんだけど、正直、普通に考えるとあり得ない話なんだよね。
こう見えて私とクリスは全大陸に名を轟かせている超有名冒険者。自分で言うのもあれだけど、キャリアも実力も文句なしで世界トップレベルだった。
それに比べ、メイソンさんとジョンストンさんは駆け出し。つい先日冒険者登録をしたばかりのド新人冒険者である。
別に「同等の実績を持つ相手としか仕事しないわ」とか「身の程を知りなさい」といった高飛車なことが言いたいわけではない。
でも私はやはり高収入の仕事、つまりは高難易度の案件だけをどんどん受注して効率よく稼いで、普段はホテルでまったり過ごしたい。
だから初心者の方とパーティーを組むのはできれば避けたい。初心者をいきなり高難易度案件の現場に連れていくわけにはいかないからね。
もちろん、そのことは初日に二人にも伝えたのだけど…。
ジョンストンさんにとって私の反応は完璧に想定内だったらしく、彼は私たちに対して「自分たちの腕を見てから判断してもらえないか」と提案してきた。
しかも彼の提案は二回に分けて「試験を受ける」という、まるで最初から準備していたかのような具体的なものだった。
まずはメイソンさんとジョンストンさんが手合わせをしてみせることが一次試験。そして一次試験で合格判定が出たら、次は一度だけ一緒にクエストを受けてみることが二次試験。
で、昨日無事に二次試験まで終了したわけなんだけど…。
結論からいうと「実力を見てから判断しろ」と豪語するだけあって、二人の実力は相当なものだった。
メイソンさんはバスタードソードを武器とする剣士で、まさに今私たちが必要としている接近戦のスペシャリスト。
闘争本能をむき出しにして戦う狂戦士タイプなのに動きの一つひとつがしっかり制御されていて、手合わせを少し見ただけでもその強さが伝わってきた。
ジョンストンさんは剣士であると同時に聖属性魔法の使い手だった。魔法と剣術を両方使えるという点では私と同じで、剣術自体もどことなく私の戦い方と似ている気がしたが、その腕は私なんかより遥かに上。
魔法の適合性は聖属性のみとのことで、その聖属性魔法はアンデッド以外の敵に対する攻撃手段にはならないので、彼は実質「回復もできる接近戦要員」と考えた方が良いだろうな。
…そう考えると、彼らは単に腕が立つだけではなく、引退した3人の穴を完璧に埋めることができる特徴も持っており、間違いなく私たちとの相性は非常に良さそうだった。
合理的で客観的な性格のクリスが文句なしで合格判定を出したのはある意味当然かもしれない。当然かもしれないんだけど…。
「ごめんなさい。私はやっぱりYesとはいえないかな…」
そう。私はやっぱり彼らとパーティーを組むことには賛成できなかった。
『闘争本能をむき出しにして戦う狂戦士タイプなのに動きの一つひとつがしっかり制御されていて、手合わせを少し見ただけでもブックマークや☆評価を求める気持ちの強さが伝わってきた』