表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/40

27話 歪んだ魔力のお姉さん

オリヴィア視点です

 あたしには生まれつき他人と違うところがあった。それは魔力が「目に見える」というところだった。


 魔力はすべての生命に宿るもので、自分の体内に流れる魔力を認識できる人間だけが魔導士としての素質を持つとされている。


 あたしの場合、自分の魔力を認識できることに加え、魔力そのものが体の周りを流れるオーラのような形で「見えて」いる。自分の魔力も、他人の魔力も。


 そしてオーラの色によってその人がどの属性の魔法に適合しているかまで読み取ることができる。


 これは『見抜く眼』と呼ばれる能力で、うちの家には数代に一人この能力を持つ人間が生まれるとされている。


 そんなあたしの目に見える先輩(あっ、先輩というのはレイチェルさんのことね。あたしに親しみを持ってほしくてあえて「先輩」と呼んでるんだ)の魔力は、魔道学園で初めて出会った頃は普通だった。


 いや、珍しい闇属性の適合者で、魔力自体もかなり強かったから「普通」ではなかったけど、別に何もおかしなところはなかった。


 そして当時のあたしが特に先輩に興味を持つことはなく、先輩もそうだったから学園時代のあたしたちの関係は「お互いの名前と顔を知っている」程度の先輩後輩に過ぎなかった。


 だから先輩が学園を卒業してから、あたしが彼女と連絡をとったことは一度もない。


 そんな先輩は卒業後、冒険者として大成功したらしく、今や世界トップ5に入る魔導士と呼ばれるようになっていた。そして何があったのか知らないけど修行の旅に出ていたダミアン殿下の客人として王都に戻ってきた。


 ほぼ10年ぶりに王城のパーティーで再会した先輩の魔力は、前とは比べ物にならない程強くなっていて、同時に今まで一度も見たこともないような歪なものに変わっていた。


 具体的に表現すると二つの異なる性質の魔力が混ざり合い、ぶつかり合っているような感じ。普通はあり得ない状態だった。


 そんな状態だから、たぶんほんの少し魔力のコントロールに失敗しただけで暴走しそうなギリギリのバランスで成り立っているんじゃないかと思った。


 それを見たあたしは、彼女に強い興味を持った。そして興味を持ったら即行動せずにはいられない性格のあたしは、早速彼女に関する情報を収集し始めた。


 情報収集の結果、学園卒業後に一度は王国の騎士になった先輩が任務中に負った重傷が原因で騎士団を退団していることや、その任務には先輩の親友のティファニーさん…つまり今のヴァイオレット公爵が参加していたことが分かった。


 なぜか学生時代よりも大幅に強化され、歪んだ魔力。騎士団を退団しなければならないほどの重傷。その場にいたヴァイオレット家の人間…。


 …なるほどね。なんとなくだけど先輩の身に何が起きたのか分かった気がする。あたしの推測が正しいかどうかを確認するには…ティファニーさんに聞くのがベストだね。早速聞きにいこう!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 あたしの推測はほぼ100%正しかった。でもティファニーさんに教えてもらった先輩の現在の状態は、あたしが予想していたよりも悪いものだった。


 たぶん魔力だけじゃなくて、体もギリギリのバランスでなんとか成立しているんだと思う。


 あたしは先輩の治療のための協力を申し出た。


 …と言ってもそのために役に立ちそうな闇属性と聖属性の魔法はあたしには使えないので、あたしはうちの家に伝わる秘蔵の資料をティファニーさんに貸し出すという方法で、先輩の治療に協力することにした。


 150年以上前の資料だけど、その資料を作った人間は対極の属性であるはずの闇属性と聖属性を両方極めていた史上唯一の魔導士だと言われているし、晩年は治療・回復系の魔法の研究に没頭していたみたいだから何かしら役に立つ情報が書かれているはず。


 どうしてそこまでするのかって?そりゃもちろん「したいと思ったから」というのが唯一の理由なんだけど…


 「したいと思った」理由はたぶんあたしの先輩に対する下心なんだろうね。


 実はあたしの恋愛対象は女性なんだ。そして理想のタイプは「冷たくて近寄りがたい印象の、できれば年上の女性。自分の分野で十分な実績を残してきた実力者であることが望ましい」というもの。


 あまりにもドンピシャなんだよね、今の先輩。もう先輩の顔見てるだけで舌なめずりしそうになる。


 ちなみにあたしはそんな「カッコいい年上のお姉さん」を自分の従順なペットになるまで調教することが大好きなんです。…性癖歪みすぎててごめんなさい。


 そして先輩のことを調べているうちに分かったことなんだけど、どうやらダミアン殿下が長いこと先輩に片思いをしているらしい。


 先輩にはその気は全くないらしく、ダミアン殿下が一方的に先輩に付きまとっている感じのようだけど…そのダミアン殿下といえば、ローズデール家のシャロンちゃんの思い人。


 …これはいろんな人の想いが複雑に絡み合っていて大変興味深いね。そしてこんな面白そうな話に首を突っ込まないのはオリヴィア・ラインハルトではない。


 先輩を巻き込む形でダミアン殿下とシャロンちゃんをくっ付ければ、どさくさに紛れてあたしが先輩を落とせる可能性もあるしね。


 …ということで、あたしは先輩とダミアン殿下、そしてシャロンちゃんの三角関係を強引に動かしてみることにした。


 いや違う。これ正確には「三角」じゃなくて「五角」の関係だね。他にも二人、当事者がいるからね。


 自分も当事者だけど面白すぎるよ、こんなの。もう早速シャロンちゃんに連絡しなきゃ。思い立ったら即行動あるのみ!

ブックマークや☆評価をたくさんいただければ、オリレイのifルートが出現するかもしれません…?(2話連続2回目)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ