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17/40

17話 久しぶりの再会でした

 目が覚めた時、私の体は液体に浸かっていた。意識は朦朧としていて、自分が見ているものが現実なのか夢なのか、それとも死後世界なのかも分からないような感じだった。


 体の感覚がほとんどない。目が覚めた瞬間からまわりが見えてはいるわけだから、視覚だけは機能しているようだけど、それ以外は何も分からなかった。においも、音も、味も、痛みも分からない…何も感じられない。


 私は唯一機能している視覚を頼りに、改めて自分の状況を確認した。


 おそらく私はガラス製の巨大な水槽に入れられていて、全身が蛍光色の液体に浸かった状態だった。そして体の至る所にチューブを通されていて、そのチューブから謎の液体を体内に流し込まれているようだった。


 …それだけでも十分異様な光景だったが、そんなことはどうでも良いって思ってしまうほど衝撃的だったのは、視界に入ってきた自分自身の体の状態だった。


 左腕と腰から下のほとんどのパーツが、人間のものではなくなっていた。一応シルエットだけは人に腕と下半身に近い感じではあったが、そこにあったのは禍々しく渦巻く真っ黒の影のような異形の姿。


 その姿を確認した瞬間、あまりの衝撃に私は悲鳴をあげた。いやあげようとした。でも全身が液体に浸かっていたので、当然ながら声を出すことはできなかった。


 …というか、どうして全身が液体に浸かっているのに普通に息ができているんだろう。やっぱりこれ、夢?それとも死後世界?


 でもその瞬間少し感覚が戻ったのか、自分が浸かっている蛍光色の液体にとてつもなく濃い魔力が込められていることを感じ取ることができた。あ、これたぶん培養液だ。…なるほど。


 私が意識を取り戻して少し動いたことに気づいたのか、水槽の近くに座っていた魔導士がこちらに視線を向けてきて、次の瞬間、私と彼女の目があった。


 そこにいたのは、私の親友で同僚でもある公爵令嬢ティファニー・ヴァイオレットだった。


 一瞬驚いたような顔をしたティファニーは、急いで水槽の近くに設置された魔法陣に向かって何かの呪文を唱えた。そして彼女の魔法に呼応し魔法陣が光を増した瞬間、私は再び意識を失った。

 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 次に意識を取り戻したのは、ベッドの上だった。私が今訪問しているヴァイオレット家の屋敷の一室のね。


 左腕と下半身は負傷前と変わらない人間の姿に戻っていた。でもその左腕と下半身の感覚は全くなかった。

 

 そしてしばらくして私がいた部屋にやってきたティファニーは、私の身に何が起きたのかを詳しく説明してくれた。


 あの教団本部での戦闘で、私は身体の半分程度を失うほどの重傷を負い瀕死の状態に陥ったらしい。


 ティファニーは私の命を助けるために人魔合成という方法を選択するしかなかったようで、その後ホムンクルスとの再度の合成によって、なんとか私の見た目だけは完全に元の姿に戻すことができたとのことだった。


 実は人魔合成はもちろん、魔獣の召喚自体も禁忌の黒魔法なんだけど…。どうやらヴァイオレット家の人間だけは黒魔法の習得と使用を魔道王国から非公式に認められているようだった。


 ティファニーがそう断言したわけではないけど、そんなニュアンスのことを言っていたから。


 説明の途中からティファニーが涙を流し始め、何度も私の負傷は自分のせいだと言っては謝罪し、最後は号泣しながら私に土下座をしてきたのを今でも覚えている。


 当時の私はまだ現実を受け入れることができておらず、完全に上の空状態で彼女の言葉を聞き流していた。


 でも、最後はちゃんと「ティファニーのせいじゃないよ。命を助けてくれてありがとう」という言葉を彼女にかけることができた。


 あの時、混乱と絶望の中でもその言葉が言えたのは、私が今までの人生でやってきたすべての行動の中でもっとも誇りに思えるものだと考えている。


 …私の言葉を聞いたティファニーはさらに号泣してたけど。


 ちなみにティファニーは私の体を純粋な人間に戻す方法を全力で探すと言ってくれていて、今日話してみた感じではどうやらまだそれを諦めていないようだった。


 でも正直、私はその方法が見つかる可能性は極めて低いと考えている。


 一応私も彼女と同じ闇属性の魔導士で、禁忌の黒魔法についても「知識としては」ある程度理解しているからね。


 もし私の体を純粋な人間に戻す方法があるとしたら、それはきっと魔獣とホムンクルスのミックスになっている部分を、「どこからか入手した生きた人間のパーツ」と入れ替えるという方法だけ。


 …もちろんそんなことできるはずがないし、やるべきでもない。


 はぁ…もっと楽しい思い出もたくさんあるはずなのに、やはりティファニーの顔を見ると真っ先に思い出すのはあの時のことになっちゃうんだよね…。

 

 でも時が経つのは早いものだね…。ティファニーと初めて出会った時は二人とも10代半ばの少女だったのに、気がつけばもうアラサーになっている。


 そしてティファニーはすでに4歳の子供がいる人妻で、今の肩書は「ヴァイオレット公爵」だったりする。

 

 旦那さんはとても優しそうな印象の学者さんで、ちょっと失礼な表現かもしれないけど「女公爵の夫君」というイメージにぴったりな方だった。


 そしてお嬢さんはめちゃくちゃ可愛かった。ティファニーと全く同じ神秘的な紫の瞳をしていて「三大公爵家の血統はすごいな」って思っちゃった。


 …彼女の結婚の時も出産の時も手紙とご祝儀を出しただけで、一度も彼女に会いに来なかった自分は、実はものすごく薄情な人間なんじゃないかと思ってしまう時がある。


 正直、当時はまだ負傷のトラウマを克服できてなくて、王都はもちろん魔道王国自体に近づきたくないと思っていたという理由はあるけど…。でもやっぱり親友失格だよね。


 あっ、でも私、彼女に嫉妬して「あなただけ幸せになるなんて許さない」とか言って闇堕ちするようなタイプではないからね。


 その展開を期待している人がいたらごめんね。ティファニーが幸せそうで本当によかったって心から思ってるんだ。


 もちろん、羨ましいと思う気持ちが全くないと言ったらそれは嘘になるけどね…。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「そういえばダミアン殿下、いい男に育ったでしょ?レイチェルのおかげだね。殿下の人生はレイチェルが変えたようなものだもんね。」


 優雅な動作で紅茶を一口飲んでから、目の前の美しい女公爵が私に謎の言葉をかけてきた。


 ヴァイオレット家の特徴である神秘的な紫の瞳と、少し鋭い印象の整った顔立ち。お洒落なデザインのメガネがよく似合っていて、とても知的な雰囲気を演出している。


 …でも彼女、何を言ってるんだ?私がダミアンの人生を変えた?


「私が殿下の人生を変えた?…どういうこと?」

「…あれ?もしかして覚えてないの?」

「覚えてないって何を?」

「あー…。本人がまだ言ってないなら本人から聞いた方がいいかな。ごめん。忘れて」


 いやそんな意味深なこと言われたらめちゃくちゃ気になるじゃん。教えてよ。


 私は「教えて」と粘ってみたけど…。ティファニーは近いうちにダミアン本人が話すはずだから、彼が自分から話すのを待って欲しいという立場を崩さなかった。


 仕方ない。ダミアン本人が話してくれるのを待つしかないか。


 というか私、知らないうちに彼に何かしたんだ…?

今日も後書きのネタが浮かんできません…。

恐れ入りますが、今日もストレートにおねだりをさせてください。

どうかブックマークや☆評価よろしくお願いいたします(魂のこもった土下座)

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