600文字の六話 裸の勇者様
「服くらい着なさいよ。見ていて寒々しいわ」
ハージ・マリノ村の防具屋の前で、俺は聖女に装着していた防具を無理やり剥がされ売られてしまった。
現在はパンツ一丁、帯剣一刀の有様で見て寒いのではなく、実際に寒い。
俺の双眸のダンディライアンともいうべき黄色い瞳がさらされ、金髪の髪がなびいている。
「せ、聖女様……? 俺の防具、伝説の防具だったんですが……」
肩を震わせ両手で自身を抱えながら異を訴えるが、聖女の言葉はいつも何故か筋が通って聞こえ、ぐうの音も出ない。
「何の伝説かも分からない防具なんて、伝説の防具な分けないじゃないのよ。どんな伝説なのよ?」
「そ、それは……」
聖女に言われた言葉を復唱してみると「あれ? なんの伝説なんだろう?」と納得しかけてしまった。
「い、いや、でも国王様からもらった防具ですよ……?」
「っはん。あんな肥やし豚」
国王もひどい言われようだ。あれでも一国の王様なのだが……
「コレでも着てなさいな」
そう言われ受け取ったのが、ただの麻布の服。
「知っているかしら? 勇者はね、最初は防具なんてつけてないのよ?」
「いったい何の話ですか?」
俺は、麻布の服を手に持ったまま呆然とした。
ただ、先ほど防具を売って出来たであろう大金の入った袋が、聖女の腰にぶら下がっているのをハッキリと目にしたが何も言わないでおいた。
盾が……飛んでくるから。