600文字の十四話 勇者の修行とマホのワカオラ!
勇者の修行が始まった。
それは、教会による、勇者強化のための、教会の作法に乗っ取った修行方法。
教会は決して甘くない。
朝起きてから朝食までの二時間は運動上のトラックを延々と走らされ、朝食後は筋力増強トレーニング、体幹トレーニングなどの徹底的な基礎トレーニングが続く。
それも、かなりハードな……。
「勇者殿、まずは基礎です! 体力の強化が大事ですぞ!」
「見てる分にはマシじゃない。あと何日持つかしら」
「勇者のお兄ちゃんがんばって!」
檄を飛ばすプリース司祭の隣では、聖女が両手の甲に壺を乗せて、絶妙なバランスを保ちながら体操をしている。
体幹トレーニングの一種だろうか、腕を広げたままの状態で前に後ろに、時にはジャンプしたり、回ったりと、激しく動いているのに壺が落ちない……。
……なにあれ、ちょっとすごい。
昼食も食べられないと思う量を出される。
午前中の基礎トレーニングだけで腕と足がぷるぷるしていて、フォークすら持つのがツライ。
全て食べきった後は、棒術の稽古を行う。
「勇者殿、行きますぞー! そぃ! とぃ! チェァ!」
「ちょ、こ、ヘボッフぅッ――」
プリース司祭の三撃目の攻撃が頬にダイレクトに入って、俺の美顔が歪み、きりもみしながら吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
あ、やば――……意識が遠のく中、マホの声が聞こえた。
「チニーチニーチニー……マラマ! お兄ちゃんをワカオラ!」
マホが天使のようだ――。




