600文字の十四話 天使
そこには、純情可憐な少女……いや、天使がいた。
真っ白な肌、赤と薄ピンクの目、ボサボサだった真っ白な髪は綺麗に梳かされ、紺碧の大きいリボンをカチューシャのようにしていた。
白と天色を基調とした教会の修道服を身にまとい、長い袖をまくった裏地の紺碧がアクセントでおしゃれだ。
「か……っ」
かわいい。
俺が教会の修道士から施設の案内を受けて中庭で棒の素振りをしている間に、聖女はマホを自室のお風呂で一緒に入浴した後、マホを天使に変えて戻ってきた。
そして――。
「さぁ、マホ。町へお洋服を買い物に行きましょう」
「うん!」
聖女とマホが手を繋ぎ、マホの右手にはポッピーでキュートでダークマターなクマのぬいぐるみが抱えられている。
なんて愛らしさだ……ってそうじゃなくて。
「あの、俺も付いて行けば良いので……?」
「女性同士の買い物に男がついてくるなんて野暮っていうものよ。ほんと勇者は顔だけで分かってないわね。そこで素振りでもしてなさい」
「あ、ハイ」
「勇者のあんちゃん弱いんだから、聖女のねーちゃんみたいに強くなって出直しな」
マホが突き出したクマのぬいぐるみのステッキが、首を振りながら応援してくる。パンチの効いた低い声で……。
「あ、はい」
生返事しか出来なかった。
マホってどっちで話しているときが素の性格なんだろう……ステッキの方だったら、心が折れるかも知れない。




