500文字の九話 御覚悟を
「情けなし。なんとも、情けなし!」
教会について聖堂に足を運ぶとそこには、坊主頭の白いひげを生やした年配の司祭がそこにはいた。
白目で、地に響く太い声。目につくのは司祭服がピチピチになるほどの分厚い筋肉、見上げるほどにデカい身長。
そして「情けなし」と言いながら白目から流れる大量の涙。
膝が震える。この司祭、危険なにおいしかしない……。
「お久しぶりです。プリース司祭」
「おぉ、聖女殿。出立の日、以来ですな」
俺が司祭のインパクトに驚いている間に聖女と司祭は挨拶を済ませ、聖女は今日ここへ来た用向きを話していた。
司祭はなんでも、俺たちがここへ来ることは分かっていたらしい。情報通なのだろうか。
聖女が話すにはこうだ。
「この勇者の事なんだけど。使えないの。ほんと、なんというか……なってない、そんな感じですので、プリース司祭。あなたの力を貸してくれないかしら」
そして、司祭が言うにはこうだ。
「えぇ。全てを存じ上げております。魔王との戦い。そして、59回の敗退っ! えぇ。全てを存じ上げておりますとも。全てを見通す神、ミトー神様の声によって! なんとも! なんとも情けなし!」
そして、司祭が俺の肩を掴んで言う事はこうだ。
「勇者殿。御覚悟をぉ!」
魔王なんか目じゃないくらい、怖ぇ。




