600文字の八話 門扉を抜けたら
賑わいと活気と要塞。サンバン要塞街。
今よりも国が分かれ、隣国との戦争が絶えなかった時代。
その時代に造られた防衛用の巨大な要塞が今では役目を終え、サンバンの街として人々が豊かに暮らしている。
要塞として機能していた反りのある壁は魔物を寄せ付けず人々は安心して生活が送れ、毎日が賑わいに溢れている。
「やっと……ぜぇぜぇ……サンバンについた……」
「勇者のお兄ちゃん。おつかれさま」
二人を乗せたボロボロの人力車のを引く俺に、気遣いの言葉をかけてくれるマホ。俺はマホに親指を立てニンマリ顔で返事をする。
「門を抜けたらそのまま、サンバン支部の教会に行ってくれるかしら、ちょうど協力してくれそうな人がいるの」
協力? 魔王討伐に関しての協力者を募るのだろうか。
そういえば、ハージ・マリノ村を出たときに俺の行動を補佐する仲間が必要とか言っていたが……
仲間がいるに越したことはない。ただ、魔王を討伐する旅に付き合ってくれる人なんて、そういるのだろうか。
「魔王を退治する旅の仲間をさがすの? 聖女のおねぇちゃん」
「旅の仲間ではないのよ。この使えないお兄ちゃんの……あ、そうだわ! マホは教会のお風呂で清めてもらったら、一緒にお洋服を買いに行きましょう!」
あからさまに話を逸らした聖女。そして聖女の言葉に嬉しそうな顔を見せるマホ。マホの笑顔をみると聖女に突っ込みも入れられない。
断言しよう。これは、俺にとって地雷になる。




