500文字の一話 魔王の高笑いからの舎弟落ち
「ッッシ!!!!」
魔王は勇者が罠に掛かり、落ちていった様を見て盛大なガッツポーズをしていた。
自ら手を下す事なく勇者に勝利した魔王は、喜びのあまり我を忘れ、高笑いしだす。
「ニーッホッホ! また勇者に勝てた! これで59勝目よ! にーーーホッホっ」
その動向を可哀想なモノを見る呆れた目で、聖女が見つめていた。
「…………地が出てるわよ」
「!?……ンン゛ッ」
聖女の冷たい声が、我を忘れていた魔王の耳に届き正気を取り戻す。
一瞬固まった魔王だったが、さも何事もなかったかのように言葉を繕い、聖女に食って掛かった。
「聖女よ。おぬしの力では我には――」
「私が、アナタの力に気付いていないとでも?」
聖女は半ば脅すように睨みを聞かせ、魔王はその眼光にたじろぎ、冷や汗を流しながらなんとか言葉を振り絞る。
「ま、まぁ今宵の我は気分がよい。見逃してやらん事も――」
「このメイスで、その可憐な頭蓋骨を潰してあげましょうか?」
言葉と同時に聖女は左手に持つとても重そうなメイスを大理石の床に叩きつけた。
ヒビが入り部屋の端まで割れていく床を引きつった笑顔で見ていた魔王は、丁重に帰りの道を指し示す。
「お帰りはあちらにございます。気をつけてお帰りクダサイ。聖女サマ」
聖女が魔王を手下にとった瞬間であった。