500文字のプロローグ
「勇者よ。性懲りもなく、何度くれば気がすむのだ?」
「……何度でもだ、魔王。お、俺は……」
魔王城。
俺がたどり着いたこの城の最上階。ひかえめな装飾が施された扉をくぐった先の広間に佇んでいたのは宿敵、魔王。
俺は、女々しい顔をした魔王から、なかば溜息交じりの威圧を受けながらも、真っ直ぐ見て言葉を続ける。
「……お前を倒してその先へ進む。これが使命であり、も、目的。これが達成されるまで続けるんだ!」
俺の膝は、自身の言葉とは裏腹に震えだす。
「ふん。その目的が達せられるまでに貴様の命があることを願うのだな!」
剣を構え、震える膝に無理矢理いう事を聞かせ、疾走しようと一歩踏み出す。
「おっと。その一歩が命取りになるぞ? よいのか?」
「もうその手には乗らない。前回は、飛び込まずに失敗し――」
その言葉を言い切ることはなく、足元の大理石の床がバコンッと音を立て、暗闇に変化した。
「――ッ!?」
俺は、慌てて手足を動かすが空を切るだけ――脳が「落ちる」と理解していても宙に浮いた体はどうする事もできずに、そのまま落ちる。
「たアァーーぁーっ」
落ちる瞬間、十歩後ろから俺と魔王のやり取りを眺めていた聖女の呟きが、広間に冷たく響いた。
「バカじゃないの」